ネスのソフビ(※)を作るプロジェクトが
スタートしたのは2020年1月のこと。
それから月日が経ち、2024年、
私たちが目指した「ネスのおもちゃの決定版」は、
M1号さん、チャイルド工芸さん、オビツ製作所さんの
3社の協力を得て、ついに完成しました。

その制作の過程、つまりメイキングの一部始終は、
しっかりと記録しておきたい。

そんな強い思いから、
これまでのすべての打ち合わせで
ボイスレコーダーを回していました。
そのため、手元にはたくさんの音声データが残っています。

これは、ネスのソフビの完成後に
あらためて録ったインタビュー記事ではありません。
4年半にわたる制作の記録の中から
とくに重要な箇所だけを抜き出した
制作日記のようなものです。

題して「ネスのソフビができるまで。」。
制作に携わった3社との主要なやり取りの様子を、
当時の空気感とともにお届けしていきます。

※ソフビ:PVC(ポリ塩化ビニル、通称ソフトビニール)を
金型に流し込んで成型する人形の通称。

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第4回 お客さんは「昔の子ども」。(2020年2月22日 M1号にて)

ソフビで作る「ネスのおもちゃの決定版」の完成を目指し、
チャイルド工芸の勢村さんが作ってくれた
「大まかな原型」を、
M1号の西村さん夫妻が監修してくださいました。
おふたりが持つ、ソフビ作りへのこだわりとは‥‥?
お相手は、前回に続き
M1号の代表を務める西村祐次さんと、
西村さんの奥様であり、
スタッフのひとりでもある未知さんです。


左:西村祐次さん 右:未知さん 左:西村祐次さん 右:未知さん

──
ソフビを作るにあたって、
とくに大事なことってなんですか?
西村
持ったときに手に馴染むかどうか、ですね。
今回のネスもそうですけど、
とくにスタンダードサイズ(20cm〜22cmくらい)の
ソフビを作るときは、
持ったときに気持ちがよくて、
落ち着くというのが大事なんです。
感覚的なものなんですけどね。
──
手に馴染むかどうか。
西村
それが持ち主の、気に入る度合いに
大きく関わってきますからね。
あといちばん大事なのはね、やっぱり
「自分が欲しいものを作る」ということですよ。
自分が欲しいものは、
みんなも欲しいだろうっていう考えかたをするべきで、
いつだって欲しいものしか作りませんし、
欲しいからこそ作る。
できあがったものは、
その後一生自分のところにあるわけだから、
妥協もしません。
それがもし自分が欲しいものになっていなかったら、
ずっと気持ち悪いままですからね。
未知
だけど、それをするのがものすごく大変なの(笑)。
原型を作り直すどころか、
金型まで作り直したこともありましたからね。
西村
あったね(笑)
未知
ほんのちょーーーっとのことなんですよ?
なのに、急に「作り直す!」って言い出すんですよ。
西村
2回作り直したものもあったね(笑)。
未知
「こんなに細かいところ、
誰にもわからないよ〜」って言っても、
もう聞かないんです。

──
原型の時点では気付かないくらい細かいところだけど
気付いたからには直したくなってしまう、
ということですか?
西村
そうですね。その2回直したときは、
成型してみたら思っていたよりもぼっこ(膨らみ)が
ちょっと大きかったんですよ。
最終的に1000個くらいは作ることになるソフビだし、
気づいたらもう放っておけないじゃないですか。
それで原型を直して、金型も作り直したんです。
──
本当に妥協はしない、と。
西村
うん。それで出来上がったのを見て
「いいじゃん〜!」って思ったんだけど、
こんどは小さくなったぼっこに
ペーパー(紙やすり)をかけきれていなかったことに
気付いたんです。
光の加減で影がつくと、どうしても汚く見えちゃって‥‥。
それで「ダメだ」となって、
もう1回原型からやり直したんです。
未知
そのぶん、お金もかかりますからね。
スタッフを呼んで「みんなチェックしてー!」って。
「もう作り直せないよー!」って(笑)。
西村
でもそのときの失敗は頭に残りますから。
つぎのものを作るときに活かされるんですよ。

──
彩色についてですが、今回、西村さんには
彩色サンプル(量産前の彩色の見本)も
作っていただきたいんです。
西村
わかりました。
でもネスは‥‥言ってみれば
ウルトラマンみたいなヒーロー役ですからね。
赤い帽子に、青と黄色のTシャツと、
もう色が決まっているじゃないですか。
だから今回は肌色の材料(ソフトビニール)で成型して、
そこに決まった色を忠実にスプレーで吹きましょう。
たとえばですけど‥‥
(『MOTHER2』の当時の攻略本を見て)
このゲップーをソフビで作ったとしたら、
ウルトラマンとかの怪獣と同じ考えかたで、
いろんなスプレーワークができるんですよ。
ゲップーは全体が緑色だから、
まず緑色の材料で成型しますよね。
で、頭から背中にかけて青をプシューッと吹いて、
仕上げに銀をちょっとだけ吹いて、
おしゃれな感じにするとかね。
──
実際の色のイメージは残しつつ、ソフビならではの
味わいのあるカラーリングを足せる、ということですね。
西村
そう。これはビジネス的な話だけど、
ソフビっていうのはふつういろんな色で何度か出すことで、
やっと原型代や金型代などの必要経費が回収できるんですよ。
でも、ネスはヒーローだから、決まった色でいくしかないよね。
でも大丈夫。ウルトラマンもそうだけど、
ヒーローは一番多くの人に欲しがられるから(笑)。
あとはやるとしたら、成型色を肌色じゃなく、
蓄光の素材にするとかね。そのうち、作ってもいいんじゃない?

△後日、西村さんにこちらで指定した色見本をお渡ししました。 △後日、西村さんにこちらで指定した色見本をお渡ししました。

──
このネスのソフビを手にする人に向けて、
ひと言お願いします。
西村
ネスというキャラクターが
好きで買う人もいるでしょうし、
もしかしたらソフビを買うのが
初めての人もいるかもしれませんよね。
このネスに限らず、うちのお客さんは
「昔の子ども」、つまり大人なんです。
ソフビで有名なブルマァクという会社の
昔のキャッチフレーズが、 
「お子さまの夢を育てるブルマァク」でしたけど、
うちは「昔の子どもに夢を与えるM1号」。
だから、かつて子どもだった大人たちの
手に届けばといいなと思います。

(つづきます)

2024-09-23-MON

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  • ソフビ(フルアクション)MOTHER2 ネス
    29,700円(税込)

     

     

     

     

     

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