南伸坊さんと糸井重里が
あちこちを小旅行しながら、
めくるめく雑談をくりひろげる、
そこそこ人気のシリーズ、黄昏。
思えばずいぶん久しぶりの新作です。
奈良に居を移したゲージツ家、
「クマ」こと篠原勝之さんと話します。
それぞれが二十代のころから
とっくに雑談し合ってる3人、
はたしてどこまで行くのやら。
どうぞ、のんびりおつき合いください。
必然、「老いと死」についても語ります。

>糸井重里

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糸井重里(いといしげさと)

コピーライター
株式会社ほぼ日会長

雑談オールラウンダー。
ダジャレもシモもどんどん行く。
タコの話なども得意。

>南伸坊

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南伸坊(みなみしんぼう)

イラストレーター
エッセイスト

蓄積した雑学から雑談を展開。
さまざまなモノマネ経験あり。
タコの話なども得意。

>篠原勝之

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篠原勝之(しのはらかつゆき)

ゲージツ家
作家

鉄や土の作品をつくる一方、
文筆家としても活躍し、
泉鏡花文学賞を受賞する。
過去のエピソード豊富。

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第3回 鹿かと思ったら


糸井
奈良に来たことは、ありますね?

あります。
糸井
奈良公園も。
あります。
糸井
ぼくもあります。
あ、鹿がいるね。

昔、奈良に来たときにね、
県庁の屋上にのぼって景色を見渡したんです。
糸井
うん。
その屋上でね、ベンチで
「鹿が寝てるのかな?」と思ったら、
それはおばさんだった。
糸井
‥‥えっ?

いや、ただの事実なの、県庁の屋上で、
すごく鹿に似たおばさんが寝てた。
糸井
えっ、鹿に? 
似てたの。
糸井
つまり、ツノ? ツノが?
いや、ツノは生えてない(笑)。
ただ、存在が、こう、鹿。
糸井
それはちょっと‥‥認められない。
そうか。でもほんとなんだ。
まるで、鹿みたいなの。
糸井
鹿かな、と思ったら‥‥。
おばさんだった。
糸井
どうだろう、それは。

奈良の人は
かなり鹿に似ている。
でもまあ、東京だったら
そう思わなかったかも。
糸井
そういう問題かな。
たぶん、東京では鹿に似てる人は少ない。
糸井
つまり、奈良は、鹿が多いから。
昔、鹿だった鹿の人がかなり混ざってる。
糸井
あっ、人力車だ。

奈良公園を人力車で案内するんだね。
そういう仕事だ。
糸井
奈良公園は広いからね。
太もも、太くなっちゃうよ。
なっちゃうね。
糸井
細い太ももも、
「太もも」って言っていいんだよね?
いや、「細もも」ですね。
糸井
「細もも」、いいね。
「細もも」は、なんか、はかないね。
糸井
着物の裾から、細ももがはだけてる。
いやらしい方に行った。
糸井
あそこに鹿が休んでるけど‥‥
おばさん?
あれは、鹿です。

一同
(笑)
糸井
同じ鹿でもさ、
観光客が持っている鹿せんべいを
ぐいぐいもらいにいく鹿と、
ちょっと離れて見てる鹿がいるよね。
そうだね。
オレはぺこぺこおじぎしたりしない。
糸井
ぼくが鹿せんべいを持ってたら、
離れたところにいる鹿にあげたくなるね。
それを計算している鹿かもしれない。
糸井
うん。動物は賢いからね。
インドの壺から出てくるコブラとかもさ、
笛を吹いても出ないようにしてる
コブラがいると思うよ。
あはははは、いいね、あえてね?
糸井
あえて(笑)。
「あれ? そっちのコブラは出ないの?」って、
観光客が注目するからね。
したたかなコブラだな。

(タクシーで、クマさんちに向かってます)

2026-02-27-FRI

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  • 写真・山口靖雄(MountainDonuts

    これまでの「黄昏」シリーズ

    黄昏

    黄昏放談

    黄昏 日光・東北編

    黄昏 あちこち編

    黄昏 スカート編

    黄昏 ブータン編