
おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
加賀美健(かがみ・けん)
現代美術作家。時事問題やカルチャー現象をジョーク的に変換し作品化する。同時に、おかしなものばかり買う人。近著『最近、買ったもの』は22世紀に残したい奇書である。
- ──
- そういえば、加賀美さんには、
ピカソの図録からページを切り取って、
人物の目のところに
ブロンズでできた画鋲を刺した作品が
あったと思うんですけど。
- 加賀美
- 選挙ポスターとか駅貼りのポスターで、
人の目の部分に画鋲が差してあったり
するじゃないですか。 - 誰かがふざけてやったいたずらだけど、
あれを見たときに、
あ、ピカソに画鋲を刺してみようって。
- ──
- そういう発想だったんだ(笑)。
- 加賀美
- ただ、アートの文脈でやるわけだから、
そこらへんで売ってる
ただの画鋲じゃなく、
わざわざブロンズでつくったんです。
- ──
- ですよね。立派な画鋲が刺さってました。
- で、発想のもとになったという
目に画鋲が刺さった選挙ポスターって、
VOW投稿人が見たら、
投稿する可能性もあると思うんです。
その意味でも、
アートとVOWの境界線は紙一重、
それをおもしろがる人によるなあ、と。
- 加賀美
- そうですね。ただ、ひとつ言えるのは、
アートの文脈でやろうが、
VOWに投稿しようが、
歩きスマホしてたら見つけられない、
ってことでしょうね。
- ──
- ああ、たしかに。
- やっぱり、目玉を動かして
まわりをキョロキョロながめていると
いいことあるんですねえ。
- 加賀美
- ちなみにですけど、
蛭子能収さんとか和田ラヂヲさんって、
VOWとも関わりがありますよね。
- ──
- 蛭子さんは『不条理でポン』という作品を
連載してましたよね。 - 和田ラヂヲ先生も、
たしか4コマを描いてくれたことが
あったかと思います。
- 加賀美
- アートとVOWみたいなことで言うと、
蛭子さんと和田さんって、
「アートの枠」に入ると思うんです。
- ──
- あ、おふたりの作品が、ですか?
- 加賀美
- うん。すごくアートっぽい気がする。
漫画の内容も、絵のタッチも。 - ドローイングの作品として、
買いたいと思う人も多んじゃないかな。
海外の人とか、とくに。
- ──
- たくさんの漫画家さんのなかから、
いま、どうして
その二人の名前を挙げたんですか。
- 加賀美
- 昔から絵の感じがカッコいいなあって、
ずっと思ってたんですよ。 - 蛭子さんは下ネタもグロい系もあって、
和田さんには、
そういう作品はないと思うんで、
作品の中身自体はちがうと思いますが、
どっちも、
どこかアートな雰囲気を感じてました。
- ──
- 鋭い。
- 自分のルーツは蛭子さんにありますと、
ラヂヲ先生、おっしゃることがあって。
でも作品の雰囲気がちがうので、
あんまり指摘されたことがないらしく。
- 加賀美
- そうなんですか。
- ──
- だからたまに自分から言うんですって。
- ラヂヲ先生ご自身、
昔から蛭子さんの漫画のことが好きで、
自分のルーツのひとつとして、
ずーっとリスペクトしてきたそうです。
- 加賀美
- そうだったんだ。
いやあ、あのふたりの漫画には、
美術、現代アートのにおいがしますよ。 - 海外でもウケると思う。カッコいい。
- ──
- これは、機会があったら
いつか聞いてみたかったんですけど、
加賀美さんの言う「カッコいい」って、
どういう感覚なんですか? - よく言うじゃないですか。
巨大なものやおもしろいものを見ても
「カッコいい」って。
- 加賀美
- これ以上素敵なものはないなって感じ。
- 「ヤバい」も口癖なんだけど、
それが「いいねいいね」って感じなら、
「カッコいい」は
「まいった!」みたいな。
- ──
- それって、若いとき、スタイリストの
馬場圭介さんのアシスタントを
何年もやってたことと関係ありますか。 - ファッションやスタイリストの世界も、
「カッコいい」って、
ひとつの大きな基準じゃないですか。
- 加賀美
- たぶん一般的な「カッコいい」よりも、
ぼくの場合は、
いろんな気持ちが入ってると思う。 - おもしろいとか、すごいとか、
デカいとか、見たことがないなあとか。
- ──
- なるほど。和田ラヂヲ先生の絵を見て、
「カッコいい」という表現をする人に、
これまで会ったことなかったので。 - 今日もVOWを眺めながら、
何度もカッコいいって言ってましたし。
- 加賀美
- ぼくにとっての「カッコいい!」って、
最大級の誉め言葉なんですよ。
- ──
- ぼくはいま、三代目の総本部長として
毎日VOWの投稿を見てるんですが、
投稿人のみなさんも
加賀美さんが言うような
「カッコいい」みたいな気持ちで、
投稿してるのかなってふと思いました。
- 加賀美
- へええ、そうですか。
- ──
- わかりにくいかもしれないんですが、
きっと、
大きく言って「褒めてる」んだと思う。 - かつて2代目総本部長の古矢徹さんも
おっしゃっていたんですが、
街のヘンなモノや
新聞や雑誌の誤植に対しては
「ありがたい気持ちがあるんだ」って。
- 加賀美
- ははは、カッコいいな。
- ──
- もちろん「おもしろい」が最初だけど、
「よく、こんなふうに間違ったなあ」
とか、
「こんな間違い、よく見つけたなあ」
とか、
「よくここまで放置してくれたなあ」
みたいな、
まるでお宝を見つけたような気持ちが
なかったら、
みなさん、わざわざ写真を撮って、
コメントを書いて、
投稿しようとは思わないと思うんです。
- 加賀美
- たしかに。いまだに
郵便で送ってくる人もいるんですか。
- ──
- さすがにいまはメールが主流ですけど、
総本部長職を引き継いだときに
未開封の投稿の入った
デッカい段ボールが3箱も届きました。 - つまり、郵送で送ってくる人は
まだいらっしゃって、
そういう人たちは、
写真を撮ってコメントを書いてプラス、
切手をナメて貼って
郵便ポストに投函しにいってくれてる。
- 加賀美
- すごいですよね。この時代に。
- ──
- そこまでしてVOWに投稿してくださる、
その気持ちって、
加賀美さんの「カッコいい」と同じく、
大きな意味で
「まいった!」じゃなかろうかと。
- 加賀美
- たしかに、VOWを読んでいるときは、
Xのアンチコメントみたいな
冷ややかな目線は感じないですもんね。 - いいでしょ? おもしろいでしょ?
みたいな、
おすすめするような気持ちを感じますよね。
- ──
- そうですね。愛でているっていうかね。
今日、加賀美さんとお話していて、
大切なことに気づくことができました。 - VOWって「カッコいい」のかも‥‥と。
- 加賀美
- ははは、それならよかったです。
【レスラー時代のドクター】昔のマンガを読んでたら失敗しない人が出てたので送ります。(東京都/耳の日) 隠しきれないものですね。目元の涼しげな感じとか。
(終わります)
2025-03-16-SUN