はじめての中沢新一。
アースダイバーから、芸術人類学へ。

とんでもなく大きい視野のイベントができました!
友人たちが関係者席に座りたがってタイヘンです。
タモリさんと、糸井重里の依頼で、
中央大学教授の中沢新一さんが、登場するんです。

30年間の研究を、徹底的に濃縮し、
糸井重里に邪魔されながら、
タモリさんに突っこまれながら、
旧石器時代から現在につながる人間たちを、
そして未来に向けての人間たちの希望を……
たぶん、目の前に、想像させてくれるはずです。

「対称性、という道具を持って世界を見るうちに、
 自分の思考の中でなにか決定的なことが起きた」

縄文地図を手に東京を歩く『アースダイバー』や
全5巻の大傑作『カイエ・ソバージュ』の内容を、
いい会場、きれいな座席、長丁場で、語りつくす!

イベントがどんなにおもしろくなるか、
想像できそうな、打ちあわせの会話を、
「ほぼ日」では、連載してゆきますね。

糸井 中沢くんが言うには、
仏教は宗教ではないんだよね?
中沢 宗教のようで宗教ではない。

仏教って、
仏様ご本人が言ってるんだけど、
「自分の教えが最初ではない」
というものなんです。
七代前からあるもので、
一代がだいたい千年ぐらいだから、
五〜六〇〇〇年ぐらい前からあるという。

別に自分が
発見したものでも
発明したものでもなく、
最初からあるし、
昔の人は知っていた、
とご本人がいうというところは、
宗教ではありません。

おおきい哲学体系が
六つぐらいあったんですが、
仏様はぜんぶ勉強してるんですよね。
ヨガの行者にも
けっこういろんな人についてみて。
でも、どれもダメだったという……。

弟子も、他のところの学者が
ブッダのところにきてるんですよね。
糸井 つまり、
釈迦という人の位置づけは、
ある時代の
加速器のようなものなの?
中沢 アジア系の考えかたと、
インド系の考えかたのちがいが
やっぱりあると思うんです。
ブッダのご先祖さまはヒマラヤにいた。
ブッダだけが
ガンジス川をこえてインドにいく。
そこで、ああいうことが起きたんです。

いろんな哲学がぶつかって、
本来の思想の表現に辿りつくわけですよね。
ご先祖さまはインドにいかなかったから、
哲学と合わない民俗宗教のままだった……。
糸井 こすりあわさなかったわけだ。
今も、宗教は
こすりあわせてはいけない時代に
入っちゃったよね?
中沢 そこそこ。
それがいちばん
問題を作っちゃったんです。
糸井 そうだよね。
中沢 本来、宗教はぜんぶ
おたがいこすりあわせも可能だし、
翻訳もできなきゃいけないわけで。

イスラム教の考えかたも
即座に
キリスト教に翻訳できなければ
いけないはずなのに、
いま、その翻訳を
ぜんぶたちきっているわけです。
あれがいけないの。
糸井 研究ってさ、
外国をあてにできなくなった時代が
どこかからきたから、
おもしろくなってきたよね。
中沢 神話なんかたいへんですよ。
量が多いし。
糸井 共有できる情報が増えたから、
それこそアイデアは重要になるし。
中沢 今は、
アイデアだけですよね。
インターネットを見れば、
ふつうの情報は
出まわっているわけだし、
そんなものに頼るわけにはいかないのよ。
糸井 学術論文もネットで読めるんでしょう?
中沢 そうそう。
だから、
ぼくらの同年代は
だいたいダメだね。
糸井 知の貿易商みたいな役目は終わったんだと。
中沢 商売あがったりでしょう。
だから、
アイデアで勝負するしかない。
糸井 これからの学者なら、
なんでもない人にも
ドーンとこさせるようなものを
書かないとね。
中沢 昔は思想の雑誌も
インパクトがあったけど……。
糸井 いま、
思想の雑誌って
グチみたいになってきたもんね。
中沢 そう。みんなグチだね。
糸井 なんで昔は
ああいうものがおもしろく見えたんだろう?
中沢 おもしろく見えた時期は、
「ちょっとグチはやめようぜ」
というのがあったでしょ。
糸井 それは、きっと、食えていたからですよ。
食えなくなると、俺のせいじゃないと思うから
グチになるんです。
だから、学者の利益率が落ちてるんだと思う。

その意味では、
学校でやっていることが本になって
しかもすごくおもしろかったという、
中沢くんのやりかたは、最高の形態ですよね。
中沢 講義なんて、そうでもしないと、
時間のムダだもんね。
糸井 「学生相手にはこんなもんでいい」
と思ってやってると
そこの時間がぜんぶムダになるもんなぁ。

中沢くんが
『カイエ・ソバージュ』
という大冒険に賭けて、
そうじゃないことをやっているのは
ショックだったなぁ。
学者にも道があった、と思ったから。
中沢 うん。
この道を、
いまけっこうマネしてる人いるよね。
ただ、芸がない場合が多いけど。
糸井 詩がない。
中沢 そう。
のっぺりしたことを言っても、ダメなのよ。
糸井 それではカタログだもん。
中沢 やっぱり意外なことをやんないと。
糸井 ねぇ!
そうだよなぁ、ほんとに。


(明日に、つづきます)

2005-09-22-THU

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