はじめての中沢新一。
アースダイバーから、芸術人類学へ。

とんでもなく大きい視野のイベントができました!
友人たちが関係者席に座りたがってタイヘンです。
タモリさんと、糸井重里の依頼で、
中央大学教授の中沢新一さんが、登場するんです。

30年間の研究を、徹底的に濃縮し、
糸井重里に邪魔されながら、
タモリさんに突っこまれながら、
旧石器時代から現在につながる人間たちを、
そして未来に向けての人間たちの希望を……
たぶん、目の前に、想像させてくれるはずです。

「対称性、という道具を持って世界を見るうちに、
 自分の思考の中でなにか決定的なことが起きた」

縄文地図を手に東京を歩く『アースダイバー』や
全5巻の大傑作『カイエ・ソバージュ』の内容を、
いい会場、きれいな座席、長丁場で、語りつくす!

イベントがどんなにおもしろくなるか、
想像できそうな、打ちあわせの会話を、
「ほぼ日」では、連載してゆきますね。

中沢 風水って、日本では
関西でしかなりたたないもので、
東京では基本的にはだめですよね。
あんなに地形がアップダウンして……
平地にならさないと風水なんて不可能だから。
タモリ そうだと思うんです。
糸井 昔、「香港で風水の旅」みたいな
へんな仕事をしたことがある。
ヘリコプターでまわったりしたんだけど、
ライバル会社につきささるようなかたちで
建物をたてていて……。
刃をむけているぐらいのところもあるのね。
「こうすると、ライバル会社は弱る」
と説明するんだけど、
もう風水とかいうよりはイヤがらせ!(笑)
中沢 そうだね。
ブラックマジック。
タモリ 汐留のとがったビルはどっちむいてるのかな。
糸井 そうそう。
日本のあちこちのビルも、
けっこうとがっているし、
みんな、イヤがらせをやっているんだね。

総合格闘技の専門のやつに
きいたんですけど、
上下で組みあっているとき、
上にいるやつが
勢いをつけないまま
ポカポカ叩いてるじゃないですか。
あれは、ほとんど効かないんだって。

もちろん力は強いから
もちろん顏が腫れたりするんだけど、
ノックアウトパンチにはならないんだって。
ああいう攻撃は、
基本的にはイヤがらせなんだという。

だからああいう試合がなぜ凄惨かというと、
イヤがらせの連続だから、なんですね。
ただ、イヤがらせをずっと受けてると、
イヤであるというだけで動いちゃうの。
そこでほんとの隙が出て
勝負が決まることもあるらしい……。
タモリ ウナギ釣りの名人から
そいつから講義を受けたんです。
「あんたがたは、
 ウナギの習性を知らない」と。
「素人は勢いがないウナギを狙う。
 ダメだ。
 勢いが、
 上から2番目か3番目を狙うべき」
それで、
角にコーンってこうやって、
角にまず当てるんですって。コーン。
糸井 打撲を与える。
タモリ うん、コーンって。
で、ウナギの様子を見るんです、こう。
で、コーン。
で、今度、
ちょっとこう角で引きあげてやる。
またコーンとやって、
ちょっと引きあげて。
で、コーン、
で、ちょっと引き上げて……。
で、そうすると、
ウナギは、そいつが言うには、
もうウナギがもうイライラして、
もう、ストレスの極限までいって、
次にポッてやったときに、
「登ってやれ!」と思うらしい(笑)。
糸井 もう釣り糸と関係なく(笑)。
タモリ (笑)そう。
「こんなに
 イライラするんだったら、
 もう登ってやれ!」
そうすると、
自分で登ってくれるって。
糸井 ちょっと、そんな気もする。
タモリ うん。
ほんとに釣れるんです、そいつ。
糸井 やっぱりイヤがらせ理論ですね。
中沢 イヤがらせねぇ……。
糸井 イヤがらせについて、
この数年、ずっと考えているんです。

だいたい、自分のやってきたことは、
イヤがらせに耐えきれなかったりとか……。
中沢 イヤがらせ、遭うもんねぇ。
糸井 軽薄な人たちは、
だいたいイヤがらせで疲れてくる。
……イヤがらせは、
やっている側はあんまり
本気じゃなかったりするんですよ。

さっきの格闘技のパンチと同じで、
致命傷にはならない。
だけど、イヤがらせをずっとやられていると、
隙ができたり……ウナギみたいになるんです。
タモリ 「もう登っちゃえ!」
糸井 ワイドショーとかは
みんなそれですよね。
イヤがらせに耐えかねて
自分から記者会見を開いたりする……。
タモリ 自分で乗って、さばかれる。
糸井 だからもしかしたら、
致命傷を与えようという戦い方は、
高度ではないのかもしれませんね。
ちくちく、イヤがらせをつづけるほうが……。
中沢 女性的攻撃ですよね。
糸井 ネットをやっていると
おおぜいメールをくれるなかに
三人ぐらいは
イヤなことばかり書いてくる人がいて。
中沢 (笑)コツンコツンコツンコツンと。
糸井 こちらもだんだん利口になるから
「こいつの言うことはきく必要がない」
と思うけど、その人間が考えることも、
ぜんぶがハズレというわけでもなくて。

ほんとにイヤがらせだけのメールでも、
ほんのすこしは当たっているわけです。
それを読むと、やっぱり気分悪いよね。
中沢 イヤだね。
糸井 気分が悪いとどうなるかというと、
積極的な人生を送れなくなるのよ。
どんどん消極的に毎日過ごしると、
結局……力は、出ないんですよね。
中沢 そうそう。
タモリ 出ない出ない。
中沢 結局、それが、
ブラックマジックなんだよね。
糸井 そうか!
中沢 アフリカでもそうですよ。
糸井 (笑)あれはイヤがらせなんだ。
中沢 そうですよ。
「あいつが自分を狙いつづけている」
と思うだけでしょげてくるんですね。
そのうち、病気になるっていうのに
追いこんでくのがブラックマジック。
タモリ 俺、人の評価とか読まないもん。
糸井 ただしいですよね。
中沢 読んだらダメよね。


(次回に、つづきます)

2005-09-23-FRI

(C)Hobo Nikkan Itoi Shinbun