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糸井 |
イヤがらせをされても
平気ぶってるというか、
悪口を読んじゃった後、
「……平気だい!」
といってるときには
もう負けてるんだよね。
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タモリ |
「なーにを」
っつった時には負けてる。
だから読まない。見ない。
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糸井 |
勝とうとする人もいますよね。
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中沢 |
ダメダメ。
勝とうとすると、
さっきのウナギと一緒になる。
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タモリ |
さばかれて、焼かれちゃう。
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中沢 |
(笑)
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糸井 |
タモリさんの
「絶対見ない」という方針は、
すごいはやくから決めてるんでしょうね。
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タモリ |
いっさい見ません。
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中沢 |
俺なんか、バカだから、読んじゃったなぁ。
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糸井 |
中沢くんは強いんだよ。
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中沢 |
いや、しょげたよ、やっぱり。
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糸井 |
しょげた?
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中沢 |
ひどいこと書かれるわけじゃない?
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糸井 |
これに対しては
こう反論できるとか考えませんか?
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中沢 |
それやったら負けだと思う。
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糸井 |
そうだね。
反論を用意してる時間には、
「インドネシアのことを研究しよう!」
と思うときの力強さはないわけだよね。
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中沢 |
ダメダメ。
しゅんとなってくるのね。
「インドネシアじゃなくて
沖縄ぐらいにしとこうか」とか(笑)。
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タモリ |
(笑)だんだん、そうなる!
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中沢 |
雄大なものがなくなってきますよ。
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糸井 |
なくなるなくなる。
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タモリ |
それが極地にくると、
「あぁ、俺は、
いつもこうやって
失敗してきたんだなぁ」
とか、なりかねないもん。
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中沢 |
(笑)あはははは。
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タモリ |
過去を否定していくよね。
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中沢 |
「そういえばあのとき」ね(笑)。
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タモリ |
「あいつと
ケンカしたときもそうだった」
ものすごく落ちこむよね。
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糸井 |
「もともと俺は
これくらいの背丈じゃないか」
みたいな気分にさせられるし……。
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タモリ |
やっぱり、
その状態は能力は絶対出ないよ。
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糸井 |
出ないですよね?
能力が出てる人って、
やっぱりじょうずに
ほめられてる人だよ。
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中沢 |
うん。
それと、読まない人ね。
ぼくもある時期からは
そういうのを一切、
気にしないことにした。
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糸井 |
痛い目に遭わないと
「読まない」に気づけないんですよね。
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中沢 |
だから、さばかれちゃっていたら
おしまいだったけど……。
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糸井 |
そうか、中沢くん、苦労したんだもんね。
いちばんたいへんだった時はどうだった?
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中沢 |
そのころは元気がなかったです。
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糸井 |
「ぼくは何でもないです」
という顏をするだけで疲れるよね。
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中沢 |
疲れる。
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糸井 |
どのぐらいつづいた?
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中沢 |
二年ぐらい。
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糸井 |
そうか……
そのときは仕事は何をしていたの?
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中沢 |
講義した。
講義して、ためて、
それが本になったわけですね。
あれ、忍耐でしたよ。
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タモリ |
ふつう、へこむよ。
何の能力も出なくなるよね。
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糸井 |
学校があったのは
ありがたかったね。
それと中沢くんは
大衆の支持があったでしょ。
だから簡単につぶせないし。
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中沢 |
それがおおきかった。
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糸井 |
そうか。
『カイエ・ソバージュ』という傑作は、
そういう、静かにしているときに
準備していたものなんだ。
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中沢 |
うん。
たまっていたものが、出てるんです。
それで、だいたい、
ブラックマジックも終わるじゃない?
そうすると、
パワー全開になりますよね。
「脱した!」と──。
(明日に、つづきます)
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