はじめての中沢新一。
アースダイバーから、芸術人類学へ。

とんでもなく大きい視野のイベントができました!
友人たちが関係者席に座りたがってタイヘンです。
タモリさんと、糸井重里の依頼で、
中央大学教授の中沢新一さんが、登場するんです。

30年間の研究を、徹底的に濃縮し、
糸井重里に邪魔されながら、
タモリさんに突っこまれながら、
旧石器時代から現在につながる人間たちを、
そして未来に向けての人間たちの希望を……
たぶん、目の前に、想像させてくれるはずです。

「対称性、という道具を持って世界を見るうちに、
 自分の思考の中でなにか決定的なことが起きた」

縄文地図を手に東京を歩く『アースダイバー』や
全5巻の大傑作『カイエ・ソバージュ』の内容を、
いい会場、きれいな座席、長丁場で、語りつくす!

イベントがどんなにおもしろくなるか、
想像できそうな、打ちあわせの会話を、
「ほぼ日」では、連載してゆきますね。

第12回 縄文地図からわかること
中沢 前橋に講演にいったんです。
前橋ということで、
お客さんを、つかまなきゃいけないから、
ま、糸井さんの話をするじゃないですか。
糸井 やだなぁ(笑)。
中沢 そのあとやっぱり
縄文の話になるね。
前橋の古墳と
多摩丘陵の古墳と、
ほとんど同時代なんですよ。
流行が
前橋と多摩でいったりきたりする。
糸井 そうとうな距離だよね?
中沢 うん。
前橋、多摩丘陵、町田、
それから八ケ岳というのが、
ひとつ津久井通というのでつながってる。
糸井 移動、たいらなところをとおらないんだ?
中沢 とおらないね。
縄文のところはみんな丘陵地です。
タモリ (縄文の時期の地図を見る)
これ以上、
海が入りこんだ地形図は
ないんですか?
中沢 ええ。
やっぱりこれが
いちばん入りこんだ時期です。
糸井 タモリさん、
東京をさんざん歩いてるから、
縄文地図を見ると、やっぱり、
「そうだろうな」
という感じで見えるんでしょ?
タモリ うん。
「あぁ、あそこだ、やっぱり」って。
中沢 町を歩いてると、
「なんで
 こういう坂になっちゃうの?」
とか考えるじゃないですか。
のぼったりおりたり
めんどくさいような場所は
昔の地図を見るとわかるんですよね。
神社の配置は、陸に沿っていますし。
タモリ 東京は何回か
陸になったり海になったり
してるらしいんです。
中沢 そうなんです。
氷河期にはひいちゃうんです。
だからこの地図が、いちばん、
海が入りこんだ時期ですよね。

いちばん入りこんだ時期が
縄文中期で、
町田、八ケ岳、前橋あたりで
縄文文化の全盛期だったんです。
糸井 へぇー。
中沢 紀元前六〇〇〇年ですね。
タモリ (地図を見て)
ここには特に
ものすごい谷が入りこんでる。
こういう地形、
あんまりないですもんねぇ。
中沢 ええ。規模のちいさい……。
糸井 (笑)なんか、
専門家どうしの話がはじまったよ!
タモリさんも
中沢くんも、まるで常識のように
「こういう地形はあんまりないね」
って……。
タモリ 河口でこういう地形が
ないこともないんですけど、
東京の場合は
標高がけっこう高いんです。
それが、特徴なんですよね。
中沢 そうそう。
もともとは高地なんです。
たとえば
山の上ホテルのあたりは、
今より
数十メートル高いんです。
駿河台を切り崩して、
銀座に埋めちゃったんです。

駿河台の土で
日比谷や虎ノ門あたりを
埋めたわけなんですよね。
糸井 その情報源も区史?
中沢 江戸時代の人が、
もっこで土を運んでるところを見て、
随筆に書いてんです。それを読んだ。
タモリ 品川に八ツ山ってあるでしょう?
あれ、もともとはほんとに
山だったみたいです。
ぜんぶ、埋めたてに使ったって。
地名だけが残っているから、
いまは、
どこが山なんだろうっていう
ところなんだけど。
糸井 俺、それ『タモリ倶楽部』で
見たような気がするなあ(笑)。
中沢 『タモリ倶楽部』って
そういうのやってるんですか?
糸井 ときどき、すごいことやってる(笑)。
中沢 (笑)すごい。


(明日に、つづきます)

2005-10-05-WED

(C)Hobo Nikkan Itoi Shinbun