今年『ナイン』は大当たりする!
去年は知らなかったくせに、応援します。


べ3
大阪公演まであと4週間!

シェフ
きょうのお話は、
演出家のルヴォーさんが合流しての
初回の稽古の様子です!
演出家が演出をする現場っていうと、
灰皿が飛んだりさ、
コップが割れたりさ、
怒号と涙の渦の中、
そりゃあもうたいへんなことに
なってるんじゃないかと
思っちゃうんだけど。

べ3
ルヴォーさんは、ぜんぜん、
違うらしいんだよねえ!

シェフ
さあどう違うのか、
お読みくださーい!!

               
第三回 『ナイン』の稽古が始まった!
               

この人が、演出家のデヴィッド・ルヴォーです。


さあ、大阪公演初日まで4週間。
稽古場に演出家デヴィッド・ルヴォーが合流し、
いよいよ本格的な稽古の始まりです。

ブロードウェイのオリジナル演出家本人が、
日本版の稽古に何週間もかけること自体、
じつは、ほとんど例のない貴重なことです。
(デヴィッドはもともとtptの芸術監督なので、
 ぼくたちはついついこのことを忘れがちなんですが。)
しかも、オリジナルヴァージョンにこだわらず、
俳優の個性をどんどん取り入れて、
新しくつくり直していくなんて‥‥

さっそく稽古初日。
レポーターたちが、妻ルイザにマイクを突きつけ、
夫グイドの女性関係を追及する場面──。

稽古を止めて、デヴィッドが言います。
「レポーターたちって、
 そんなに行儀よく仕事をしてないと思うんだ」
そして、いたずらっぽく、
レポーター役のひとり、宮さんに近づいて。
「ミヤ、きょうはガム噛んでないの?」
そうそう、たしかに彼女は、
ウォーミングアップ中もガムを噛んでいます。
「噛んでていいよ、いつもどおりに」
デヴィッドにそう言われ、口にガムを放り込む宮さん。
稽古再開。すると──、
たしかに意地悪そうで生き生きとした、
放送局の芸能レポーターが!

稽古場のいたるところで湧きでてくる、
ウフフという柔らかな笑い声。
デヴィッドが魔法をかけ始めたように見えます。

去年の秋もそうでした。
稽古開始から2日目のこと、
リナ役を演じる高塚さんを見たデヴィッドは、
彼女の重要な小道具であるピストルを、
「ピンク色」にしようと言い出しました。
「リナの持ち物は絶対ピンクだと思う」って。

なにを隠そう高塚さんのテーマカラーは、
本人の「大好きな色!」という声を待つまでもなく、
お姿を拝見すれば一目瞭然“ピンク”です。
そうして日本版『ナイン』限定の、
リナの「ピンクのピストル」が生まれました。

リナ=高塚さんのピストルです。
あのときは、デヴィッドの茶目っ気かとも思えました。
けれど、ちゃんと演出上の狙いだったことが、
本番になってわかったのです。遅ればせながら。
モノトーンを基調とした衣装やセットのなかで、
ピンク色はじつに効果的に使われていくのです。
そしてもちろん、高塚さんに抜群に似合って。

画期的なことが次々と、じつにさりげなく、
あたりまえのように起きていきます。
デヴィッドの、いえ、この稽古場の、
なにより素敵なところです。

こういう稽古ができる理由は、
演出家や俳優たちの力量以外にも、
tptが大切にしてきた、ある前提があるからです。
(この話はまたあらためてしますね。)

『ナイン』はデヴィッド・ルヴォーが
いろんな国の役者たちと組んで
つくってきた作品です。

デヴィッド・ルヴォーはtptの芸術監督です。
門井プロデューサーと一緒にtptを立ち上げて11年。
数々の現代劇を演出し、日本のスタッフに影響を与え、
とくに女優の魅力を最大限に引き出してきました。
デヴィッドは、「女性」をテーマにした作品に、
真骨頂をみせてくれました。

tptで演出しはじめて間もないうちに、
もしかするとそれよりもっと前から、
デヴィッドは『ナイン』を手がけることを、
決めていたようです。
1996年、ロンドンで、
デヴィッドの『ナイン』は初演となります。
それが今もなお色あせずにいるのは、すごいことです。

ああ、色あせないというのは、
少し違うかもしれません。

『ナイン THE MUSICAL』の魅力は、
演じる女性の文化や個性によって、
作品が変わっていくことにあるんだと思います。

ロンドン、ブエノスアイレス、ブロードウェイ、東京と、
世界を旅してきた『ナイン THE MUSICAL』。
それぞれの都市に生きる女性たちが、
自分の文化に自信をもって演じることで、
客席にいる女性たちへ“勇気”を届けてきました。

いろんな国の女優をみてきた感想を、
デヴィッドにたずねるとこんな言葉が返ってきました。

「『ナイン』をつくるときいつも感じるのは、
 ダイヤモンドをゆっくり回転させて、
 カット面に反射するいろんなきらめきを
 ながめているような気持ちなんだ」
って。

2003年、ブロードウェイ版『ナイン THE MUSICAL』は、
カルラ役のジェーン・クラコフスキーが、
ブロードウェイのアカデミー賞と言われるトニー賞の、
助演女優賞を受賞しました。
彼女はTVドラマ『アリーmyラブ』に出ていた人です。
ぼくは授賞式のスピーチをビデオで観ました。
彼女は胸を張ってこう言ったのです。

「みんな、デヴィッド・ルヴォーと仕事をしてみて。
 絶対にトクするから!」


女優にそこまで言わせてしまう演出家って‥‥
でも、たしかにそうなんです。きっと。

このミュージカルは、デヴィッドに演出されるのを、
いつも待っている宝石のような、そんな作品です。

マリア=宮さんが体に巻き付けているのは電話のコードです。
とあるシーンで重要な役割をはたすセクシーな電話です。

(あすに、つづきます!)


シェフ
なんていうの、
個性をひき出す演出っていうの?
ぼくも引き出されたくなった!

べ3
‥‥(困ったなあ)、
ええと、今回登場した
「宮さん」と「高塚さん」の説明を。

シェフ
そうでしたそうでした。
宮さんというのは
宮菜穂子さん。
大学ではイスパニア語を学んだ才媛で
『レ・ミゼラブル』にも出たかた。

今回からの新キャストなんですけど、
去年の舞台を見て
「いままで性の意識を捨てて
 生きてきたけど、『ナイン』を観て
 女性として生きていきたいと思った」

という名言をうんだ人です!

べ3
歌はもちろん、
バレエからジャズダンスまで
身体表現がすごいらしいよー。

シェフ
高塚さんというのは
高塚いおりさん。

べ3

高塚さんもミュージカルには
いっぱい出演なさってますよね。
『屋根の上のヴァイオリン弾き』
『42nd Street』
『シラノ・ザ・ミュージカル』
『キスミーケイト』などなど。


シェフ
超実力派!!
ぼくたち、稽古を観させてもらったときは
まだ出演者のみなさんのこと、
よく知らないままで。

べ3

でも、ものすごく力のあるひとたちを
集めたんだなあ、ってことだけは
すごく、わかったよねー。


シェフ
いまこうしてプロフィールを読むと
すごいんだなあとあらためて
超びびっちゃうよね。

べ3

びびらなくてもいいじゃないですか。


シェフ
いや、ほら、将来、もしかしたら
共演するかもしれないじゃない。
人生何が起こるかわからないじゃない。

べ3

‥‥‥‥(ますます困ったなあ)。
ところで、 『ナイン THE MUSICAL』の
ストーリーなんかは
紹介しなくていいんですかねー。


シェフ
あ、なやみどころだよね!
まだここでは
映画「8 1/2」をモチーフにした
作品だとしか言ってないからね。
ぼくは映画も先に原作読んじゃっても
平気なんだけど、
ストーリーは知らずにいたほうが
楽しめるっていう人も多いかもしれないね。

べ3

tptのホームページ
こんなのを見つけましたよ。


シェフ

「ここから先は自己責任で
 お願いします」ってことだね。
でもまあ、これはあくまでも
ガイダンスなので、
読んでもさしつかえないと、
ぼくは思います!


べ3

「8 1/2」についてはどうですか。


シェフ
もう大好き。いま調べたけど
日本版のDVDは出てないんですねえ。
見ると、いい予習になりそうなんだけど。
マストロヤンニの役名もグイドで
今回の別所さん演じる主役と
同じだしねー。
そういうこともキウチさんに
ぜひ解説していただこう。

べ3

ということで業務連絡業務連絡。
キウチさんこんどそのテーマで
原稿で書いてくださーい!
よろしくおねがいしまーす!


シェフ
そうそう、土曜に
「知り合いの兄貴分のような人が
 指揮を振る」

というメールをくださった
「たろー」さんから、
指揮者のかたの
名前を教えていただきました。
=
指揮者は時任康文
(ときとうやすふみ)氏です。
オーケストラはどこなのか
存じ上げませんが、
ナインのための特設オケ? かな?
(たろー)

べ3

時任康文さんは、オペラの指揮者としても
活躍なさっているかたらしいですよ!


シェフ
オーケストラの稽古と
ミュージカルの舞台との
合同の練習とかってどういうふうに
するんだろう?!

べ3

そういうこともキウチさんに
レポートしてもらいましょう!


シェフ
ところで。

べ3

はい?


シェフ
ジェーン・クラコフスキーって
ハリソン・フォードとつきあってる人?

べ3

それはアリー役の
キャリスタ・フロックハートです。
クラコフスキーは、アリーの秘書役。
でねでね‥‥って、
話がややこしくなるから、
もうやめましょう!


シェフ
んだな。
皆さまからのメール待ってまーす!

 


2005-04-18-MON
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