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『ファイアーエムブレム』を噛み砕け!

 
シリーズ最新作である
『ファイアーエムブレム 烈火の剣』
プロデューサーの山上仁志さんは、
「このゲームのおもしろさを
 いかに多くの人に伝えるか」
ということを開発のテーマにしました。



今回は、インタビューアーとふたりして、
『ファイアーエムブレム』のおもしろさを
さらに噛み砕くことに挑戦します。
なんせ、インタビューアーも
このシリーズが大好きなもので。

というわけで、シリーズを知らない人にこそ
読んでいただきたい記事です。
それでははじめましょう。

山上仁志
(やまがみ・ひとし)
任天堂 開発第一部係長

── 手にしてくれた人に、
ゲームのおもしろさをきちんと説明して、
最後まで導いてあげる。
それは本当にすばらしいことだと思うんですけど、
手にする以前、「なんだかよくわからないなあ」
っていう人もきっといますよね?
山上 はい、そうですね。
── 「シュミレーションRPG」って言った時点で
なんだかピンとこない人。
『ファイアーエムブレム』というシリーズの
行き先を考えるうえで、僕はそういった人も
無視できないと思うんですけれど。
たとえば山上さんは、
「『ファイアーエムブレム』って
 どんなゲームなの?」って聞かれたときに
どうお答えになります?
山上 まず、映画でも本でもいいんですけど、
物語の先を知っていく楽しみというのが
あると思うんですよ。
それがあるからこそ、みんな本や映画で、
物語を楽しんでると思うんですけども、
ゲームにもそういうものが
あるんだよということを
伝えてあげたいと思います。
── うんうん。
山上 で、ゲームが映画や本と違うのは
自分が操作した結果によってその物語が
微妙に変化するんです。
努力の結果よい話になったり、
力及ばずに悪い結果が出たりするのが
映画や本と違うところなんです、
っていうような話をしたいと思います。
そういうふうに
『ファイアーエムブレム』を説明すると
少しは興味を持ってもらうことができるかな。
── で、「なるほど」と。「ちょっと興味を持った」と。
「で、どんなゲームなの?」って言われたら?
山上 難しいですね(笑)。
── 僕、いま、ゲーム初心者役ですからね(笑)。
「どんなゲームなの?」
山上 ええと、このゲームは、
主人公の女の子が成長していく過程を
ゲームにしたものなんです。
技を覚え、仲間を増やし、敵を倒しながら、
主人公の女の子は成長していきます。
── 初心者役として質問を続けますね。
「『マリオ』みたいに、
 飛んだり跳ねたりするゲームなの?」
山上 飛んだり跳ねたりは、しません。
── 「じゃあ、『ドラクエ』みたいなやつ?」
山上 う〜ん、そうですねえ……。
── 意地悪な質問ですいません(笑)。
山上 いえいえ(笑)。
ええと、『ファイアーエムブレム』は、
『ドラクエ』のように、あちこち行って、
いろんな人に話しかけたりするんじゃなくて、
基本的に一本道なんです。
要するに、面を攻略すれば話は進んでいくんです。


── ああ、なるほど。
じゃあ「面を攻略する、ってなに?」
山上 簡単にいうと、敵を倒すことです。
敵を倒しさえすれば、お話が進みます。
── 「どうやって敵を倒すの?」
山上 基本的には、マスで区切られたなかを、
自分の駒を動かしていきます。
チェスであるとか将棋であるとかを、
思い起こしてもらえればいいと思います。
── なるほど。
山上 ただ、将棋やチェスっていうのは、
駒のひとつひとつに、動き方の決まりがあって、
強いか弱いかの判断が、
いわば向き合った一瞬に判断されますよね。
駒と駒が重なった瞬間に、勝負がつく。
それがどんどんつながっていってゲームになる。
── そうですね。
山上 『ファイアーエムブレム』のシステムも
それに近いんですけど、将棋やチェスのように、
出会った一瞬で決着がつくのではない。
ひとつひとつの駒は、武器や防具を持っていて、
その駒がどう攻撃するかによって
微妙にその勝敗が変化する。
そういうふうにお伝えしたいです。


── なるほどなるほど。
山上 さらにそこに確率の要素も入っていて、
駒の力が相手に数値的に劣っていても、
必ずしも相手に負けるとは限らない。
── 運の要素がある。
山上 ええ。ほかにも、さまざまな要素がからんでいて、
より有機的な、将棋、チェスを楽しむことができる。
そういうふうに説明するのが
いいのかもしれないですね。
── そう噛み砕いていくしかないでしょうね。
しかもその駒ひとつひとつが、
戦いに勝つことによって成長していく。
成長していくから、駒のひとつひとつが愛しくなる。
山上 そうですね。
── 『マリオ』みたいに
飛んだり跳ねたりするわけじゃない。
『ドラクエ』みたいに
世界のあちこちを歩き回るわけじゃない。
どちらかというと、将棋やチェスみたいなんだけど、
駒のひとつひとつにドラマがあって、
その後ろにはさらに大きな物語が流れている。
山上 はい。自然とひとつひとつの駒に愛着がわいて、
自然と先の話が気になるようになるんですよね。
よく、『ファイアーエムブレム』は、
キャラクターを死なせてはいけないから難しい、
なんてことを言われますけど、
べつにそんなことはないんですよね。
死なせてしまっても、ゲームは進められる。
── そういう決まりはないんだけど、
自然と、「死なせたくない!」って
思っちゃうんですよね。
山上 愛着が湧きますからね。
やっていただければ、自然とそうなると思いますし、
そうなったときは、十分、このゲームを
楽しんでいただけているということだと思います。
だから私が言いたいのはまさにそういうことで、
「死なせちゃだめなんて、難しそう」
とか、いろいろ考えるのではなく、
とにかくプレイしていただきたい。
とくに『烈火の剣』では、そこから、
ゲームのおもしろさに導く工夫はしましたから、
自然とキャラクターに愛着が湧いて、
自然とお話の続きが気になるようになると思います。
そういうふうに感じていただけたら
あなたは立派なこのゲームのファンですよ、と、
そういうふうに思います。
── 本当にそうですね。

(続きます!)
2003-05-06-TUE