杉野 |
そして2つ目は、
やっぱり、充電池の採用です。 |
ほぼ日 |
電気機器にも言えることなんですが、
乾電池の寿命と交換って
実は気になるところですよね。 |
杉野 |
ですね。そこで今回は
リチウムイオン充電池を付けました。
ゲームボーイはこれまでずっと
「乾電池」でしたので
その使い勝手に変化をもたらす
「充電池」にすることは英断でした。
今は携帯電話の普及で、
充電することじたい、
みなさんが慣れてきたという
現状もありますし、大丈夫、と。
でも、心配もありましたよ、
充電池だけしか使えないのですから‥‥ |
ほぼ日 |
ああ、併用じゃないですものね。 |
杉野 |
充電池は製品サイズをより
小さくするのに重要なポイントで
大きなメリットがあります。
より軽く、コンパクトなデザインに
できることに貢献してくれますから。 |
ほぼ日 |
たしかに、見た時はへぇーッて
声でちゃいましたよね。
見た目もそうですが、小さくて軽い。
ここにある製品の資料写真は
大きく感じるんですが、
実際は本当にコンパクトなんですね。
これって伝えるのは、
実物さわってもらうしかないですね。
それが一番わかりやすく伝わる‥‥ |
杉野 |
ありがとうございます。
全国のお店でゲームボーイアドバンスSPの
モックアップを置いてもらって、
実物感を感じてもらえたらいいんですけど。 |
ほぼ日 |
携帯電話にありますよね、
実際には使えないけど本物と同じ形で重さのやつ。
あれですね。それはいい。 |
杉野 |
少しはなしが逸れましたが、
充電池が2つ目の大きなポイントですね。
そして3つ目は‥‥
あの、手前みそですが、デザインはどうですか? |
ほぼ日 |
いや、大ポイントですよ! |
杉野 |
おしゃれなデザイン。コンパクト・サイズ。
それと、もうひとつがやっぱり、
今までのソフトがほとんど使えるってこと。
ただ、一部使えないものがあります。
それは「コロコロカービィ」といったような、
動きセンサーがついているカートリッジ。
ソフトを入れる向きが逆なんですよ。
となると、画面と逆に傾けなくては
いけないから操作がたいへんになるんです。
使えないことはないですけど、
ものすっごく難しくなります。
ただ、今後発売するソフトにかんしては
現行機でも今度のSPでも、
遊べるように工夫される予定になっています。
たとえば昨年3月発売の
「コロコロパズル
ハッピーパネッチュ!!」は、
特定のコマンドを入力することで、
ゲームボーイアドバンスと同様の
操作方法で遊べるんですよ。 |
ほぼ日 |
なるほど。もう少しデザインの
コンセプトを詳しく聞かせてください。 |
杉野 |
今回のデザインのコンセプトは、
「勇気」です。
最初に他のメンバーにも言ったんです。
「勇気」で行こうと。 |
ほぼ日 |
(笑)杉野さんがいちばん最初に言ったんですね、
チームのメンバーに対して、「勇気やで」、と。 |
伊吹 |
僕は何もしない「勇気」を教わりましたよ。
デザインって、いろいろと、
色や装飾をつけたくなるんですが、
そこはぐっとこらえて。 |
杉野 |
シンプルなものにしようとすると、
当然、まあ、自分たちデザイナーとして
曲面を使いたいとか、
ワザを使いたくなるんです。
それを押さえようというのと、
シンプルであればあるほど、
いろんな人たちが、
もっとこうしたほうがいいんじゃないの?
ああしたほうがいいんじゃないの? って
よかれと思って言ってくれるんですが
そこを、がんばってふんばろうと。 |
ほぼ日 |
何もしてないんじゃなのって
言われてしまうんですよね(笑)。 |
杉野 |
そうそうそうそう。
なんや、ただの四角や、ってね。 |
ほぼ日 |
それは「勇気」ですよ、ホントに。 |
杉野 |
しかも、もう最初ね、
ただのモックアップって
アクリルを削り出しただけで、
塗装も何もしてないわけですよ。
まー、ただの石鹸みたいなかたまりが
ポコッと置いてあって。
なんなん、それ? みたいなね。
それでいいの? と。 |
ほぼ日 |
言われたんですか? |
杉野 |
言われましたよ、いっぱい言われましたよ。
僕の携帯電話こんなんやけど、
こんなほうがかっこええんや、とかね。 |
ほぼ日 |
言うのは簡単なんですよ(笑)。 |
杉野 |
それを、「ハイッ、そうですね」
とか言いながらね、
我慢、我慢、我慢、我慢と。
だから「勇気」って(笑)。 |
ほぼ日 |
どの時点で、みんな納得したんですか?
つまり、最初っからデザインコンセプトは
変わってないわけですよね。 |
杉野 |
かなり最後です。 |
ほぼ日 |
チームの中では見えていたんでしょうね。
でも、周囲の人には、見えてなかった。 |
杉野 |
自分たちとしてもやっぱり、
ここは、こうしたほうがいいかな?
とかって、揺れますよ。
そういう葛藤もありました。
そういうときに、
チームで仕事をするって
すごく強いなと思いましたよ。
お互いが我慢を勇気を助け合える。
チームプレイの素晴らしさですね。
ひとりだったら、ここまでこれたかどうか‥‥。 |
|
|
ほぼ日 |
チームは、年齢的には、どうなってるんですか? |
伊吹 |
杉野が30代中盤で、
あとはみんな20代です。 |
ほぼ日 |
(笑)じゃあ若手と、 |
杉野 |
オッサンのチームです(笑)。 |
ほぼ日 |
ギャップみたいのとか、ないんですか? |
伊吹 |
なかったですよ。 |
ほぼ日 |
最初にコンセプトが
しっかりしているからでしょうね。 |
伊吹 |
コンセプト曲げずにやりたいっていうのは、
合言葉みたいに言っていました。
ちょっと曲線を入れようか?
とかっていう話が出ないわけではないんです。
でも誰かひとりが言うと、
他のメンバーが、「いや、コンセプトを通そう。
勇気を出そう」って言う。 |
杉野 |
やっぱりやめとこうねって。 |
ほぼ日 |
チームでなければ、
ここまで勇気のあるものには
ならなかったですよね。 |
ほぼ日 |
シンプルなデザインと
色との関係についてもお聞きしたいのですが、
今回カラーバリエーションは3色ですね。 |
杉野 |
あーっ「色」のことですね。
ゲームボーイアドバンスSPは
プラチナシルバー、
ブラックオニキス、
アズライトブルーの3色で発売します。
色の名前がいいでしょう。
これまでの任天堂ぽっくない。
あくまでも個人的な考えですが、
将来的にはいろんな色を出して行きたいなぁ、
との思いはありますね。
パーソナルな商品ですからね。
やっぱり色によって
違って見えるじゃないですか。
かわいく見えたり、
大人っぽく見えたり、
男っぽく見えるような
色でニュアンスを感じるには、
デザインもシンプルな形のほうがいいんですよね。
形に、個性が強すぎると、
色が形状に負けてしまいますから。 |
ほぼ日 |
色によってイメージを変えるためには
シンプルなほうがいい。 |
杉野 |
白いキャンバスっていうかね、
染まりやすい形。
それを、求めてましたね。 |
ほぼ日 |
最初のカラーは、
男性っぽい印象を受けましたが
女性の反応はいかがでしたか? |
杉野 |
社内でアンケートを取ったんですけども、
女の子たちって、赤とかよりもシルバーとか
ブラックのほうが人気が高かったですよ。 |
ほぼ日 |
あっ、そうなんですか! |
杉野 |
小学生の女の子に限定して
ラインナップを、となると、
これはピンクだったのかも知れませんよね(笑)。
でも、最初に、クールなイメージを
出したかったんですよ。
いちばん最初に誰にでも持ってもらえるように、
色で世代とか性別を決めつけたりしない。
幅広い年令層のお客さまに向けて選びました。
任天堂は子供から大人まで
幅広いお客さまに向けて製品を創ることを
大切に考えていますからね。 |
ほぼ日 |
そうですね。
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杉野 |
お子さんから大人の方まで
幅広い年齢層に向けて
男性、女性に共通する嗜好で選ぶと
シルバーとかブラックは、
ひじょうに人気が高いですね。 |
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ほぼ日 |
今後、最初には選ばなかった
「赤」のような色を、
戦略的にあるターゲットに向けて、
将来出すかもしれないですよね。
3色というのは、
最初から決まっていたんですか? |
伊吹 |
一時期、2色で行こうと
いうことになりかけたんですが、
僕は反対したんですよ。
もっと色があったほうがいいって。
けれど、理屈で説得するよりも、
実際に塗ったものを見た方が
説得力ってあるじゃないですか?
僕、塗装ができるんで、
いろいろな色で塗ったSPを
部長の目につくように
目立つところに置いたんですよ(笑)。
そしたらこれは何だって興味を持ってもらって、
それが会社の上層部にまで伝わって、
こんだけ色があるんだったら、
色展開を検討しようと。
それで3色での発売に繋がって行きました。
そこで生まれたのが
アズライトブルーですね(喜!)。
現物のアピールが功を奏しました。 |
ほぼ日 |
なるほど、それは作戦ですね!
将来、より広がりのある
カラー・バリエーションが
出てくるとうれしいですね。 |
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