糸井 | 『ピクミン3』って、 小さい子どもに遊ばせてみると どういう反応をするんですかね。 |
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宮本 | ああ、小学生までしか試してないですね。 |
糸井 | そのへん知りたいねぇ。 |
宮本 | たぶん、子どもにもわかる おもしろさだと思うんですけどね。 |
糸井 | ちっちゃい子にもわかる快感って、あるよね。 カブトムシ戦わせたりするのとか、 近いかもしれない。 |
宮本 | そうですね。 段取り能力が鍛えられたりするかもしれない。 |
岩田 | 段取りがうまくなるのは、ありそうな気がしますね。 それは、子どもでも、大人でも。 こっちでこれをやりつつ、こっちでこれをやって、 これをこっちに運んでるあいだに こっちでこれをやってっていうのって、 たとえば料理つくるのとかと同じ構造じゃないですか。 |
糸井 | そうだよね。 |
岩田 | だから、『ピクミン3』がうまくなると、 段取りがうまくなるというか、 いわゆるワーキングメモリーが 鍛えられるというのはあるんじゃないでしょうか。 |
宮本 | あとは「方針を変える」っていうことの影響が シミュレーションできるゲームなんですよね。 そういうことって、生活のなかでは なかなかできないことだから、 「思い切って変えてみよう」って チャレンジするのは、けっこういい経験ですよ。 |
糸井 | なるほどね。 やっぱり、ふつうのゲームじゃないなぁ。 |
宮本 | 変なゲームなんですよ。 ほんとに自分が出るし、効率っていうものがわかるし。 あと、ピクミンを失ったりすると、 「ぜんぶ、自分が悪いんだ」って つくづく思うんですよ。 |
糸井 | あー(笑)。 |
岩田 | ふつうは100ものキャラクターが動いていて、 自分がそのなかで直接操作できるのは 主人公キャラクターだけだとしたら、 文句のひとつも言いたくなるはずなんですよ。 だけど、これは、失敗してしまった瞬間に、 「あー、ごめんなさい、ごめんなさい」って。 |
糸井 | 「ごめんなさい」って言っちゃうよね。 |
岩田 | 「自分がやってしまった」っていうことが はっきりと突きつけられるんですよね。 |
宮本 | そうなんですよ。 |
糸井 | そういうことも含めて、 つねに「退屈しないでやれる」っていうのが 『ピクミン』の特長だとぼくは思うんですけど、 考えてみたらそれって、 ぜんぶ、敵のおかげなんですよね。 |
宮本 | うん。 |
岩田 | そうですね。 |
糸井 | ゲームって、まぁ、だいたいそうだけど、 「敵の物語」だよね。 |
宮本 | (笑) |
岩田 | そう思います。 だから、『スーパーマリオブラザーズ』は マリオに踏まれるきのこやカメの物語。 |
糸井 | そうそうそう。 ボスはボスらしい敵としてそこにいて、 ボスとしてのアイディアが盛り込んである。 そこに「ぼく」が対面していくわけですよね。 だから、なんだろう、ストレスっていうか、 おもしろいこともストレスなんだよね。 |
岩田 | はい。 |
糸井 | 「ストレスの物語」なんですよね。 |
宮本 | 『ピクミン3』は敵もそうですし、 置いてあるお宝やフルーツも 考えようによってはストレスですよね。 |
糸井 | それを探して運ぶっていうストレス。 |
宮本 | やっぱりストレスですよね。 |
岩田 | それから解放されたときのよろこびと。 |
糸井 | このあいださ、小川で、釣りをしたんだよ。 鹿児島県にあるきれいな小川で。 「ここはいくらでも釣れますよ」って言うから、 仕掛けを借りてハヤを釣ったんだけど、 とにかく、もう、釣れるんですよ。 針を投げ入れると、すぐ釣れる。 その意味ではノーストレスなんですけど、 しばらく釣ってたら、なんかもう、ほんとに、 仕事みたいになってきちゃって。 |
一同 | (笑) |
岩田 | 釣れてもうれしくないですか(笑)? |
糸井 | 「うれしい」っていうことばを 疑いだしてしまうくらい釣れちゃうんですよ。 だって、サビキに餌を入れて、 針をたくさんつけて入れたら いっぺんに2匹とか3匹とか釣れる。 これ、餌を入れなくても 釣れるんじゃないかなと思って、 サビキに餌を入れずに空針で入れてみたら、 それでも釣れるんだよ。 |
一同 | (笑) |
糸井 | で、やっぱりその釣りは ゲーム性がないっていうことで、 オレはやめちゃったんです。 |
岩田 | 敵のいないゲームが、 おもしろくなかったんですね。 ストレスのない状態が たのしいかというとそうじゃない。 |
糸井 | そうそうそう。 だからやっぱり 「アイディアは敵の中にあり」というか、 自分がそのアイディア以上のことをやって、 乗り越えていくことが楽しいんですね。 |
宮本 | そうですね。 まぁ、釣れないとイヤですけどねぇ。 |
糸井 | うん(笑)。 |
宮本 | 釣れないとイヤですけど、 でも、隣の人が1匹釣ったら、 それでもう、OKですよね。 「あ、釣れんねや」っていうことを 見せられるだけで、ずっと遊べる。 |
岩田 | そうですね。 |
糸井 | だから、ちっちゃい魚が、なんの苦労もなく、 ただただ、どんどん釣れるのと、 隣の人だけ釣れて自分だけが釣れてないのと、 どっちがいいかって言ったら‥‥。 |
宮本 | 隣の人だけ釣れて自分が釣れてないほうが、 遊びとしてはおもしろいかもしれない。 |
糸井 | そうなんですよ。 だから、ストレスって、 遊びのなかでは歓迎すべきもの。 |
岩田 | はい。 |
糸井 | そういう意味では、ずっと話してきましたけど、 正直、『ピクミン3』という遊びには いまぼく、かなり誘われてますね。 |
宮本 | あ、うれしい。 ぜひ、遊んでください。 |
糸井 | たぶん、遊ぶと思います。これは。 ぼく、最初の『ピクミン』は だいぶ遊びましたから。 |
岩田 | ちなみに、最初の『ピクミン』って、 すごくストイックなゲームで、 ゲームのなかの日付けで30日以内に ミッションをクリアーしなければ いけなかったんですよ。 だから、上手じゃないとクリアーできなかった。 今回の『ピクミン3』は、 厳しい日にちの制限はありません。 何日かかってもかまいません。 だから、ゆっくり段取りをしながら進めれば、 まぁ、ほぼ、最後までクリアーできます。 |
糸井 | なるほど。 |
岩田 | でも、世の中には、ぜんぶのミッションを すごく少ない日数でクリアーする人もいる。 それを聞いて、めらめらと燃えるタイプの人は もっともっと日付けを短縮することに チャレンジしたくなるんですよ。 だから、初心者にも、突き詰めたい人にも、 ちょうどいいストレスが用意されているんです。 |
糸井 | それ、最高じゃないですか。 |
宮本 | シリーズの流れでいうと、 1作目の『ピクミン』を遊びやすく、 遊び続けられるようにしたのが 『ピクミン2』なんです。 で、『ピクミン3』は 最初の『ピクミン』の原点にもどって、 徹底的に自分に挑戦できる遊びにしてみました。 |
岩田 | だから、宮本さんは、 アクション要素のあるゲームの 上手な人と上手じゃない人の差が これほどまでに広がってしまった世の中に、 「これなら誰でもできるんじゃないの?」 っていうものとして 『ピクミン3』を投げ込もうとしてるんです。 それがどういうふうに受け入れられるのか、 私はとてもたのしみで、わくわくしてます。 |
糸井 | 宮本さん、自信作ですね。 |
宮本 | そうですね。 いろんな快感がいっぱいあるゲームなので 自分の好みに合わせて、 いろんな人に遊んでもらいたいですね。 |
糸井 | いや、だいぶ誘われました。 今日はどうもありがとうございました。 |
宮本 | ありがとうございました。 |
岩田 | ありがとうございました。 |
(『ピクミン3』の鼎談は今回で終わりです。 最後までお読みいただき、 ありがとうございました。) |