糸井 |
この、手元にもう一つ画面があるっていうのが
Wii Uの大きな特長だと思っていいんですよね。
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岩田 |
はい。
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糸井 |
この2画面の形っていうのは、
最初から目指したことだったんですか。
それとも、いろいろあって、この形に?
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宮本 |
最初から目指してはいたんですけど、
何回か揺り戻しがあるんですよ。
一度、挫折して、あきらめかけたこともあって。
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糸井 |
へぇー、あきらめることもあるんだ。
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宮本 |
ありますよ(笑)。
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糸井 |
訊いていいのかわからないですけど、
たとえばそれはどういう理由であきらめるんですか。
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宮本 |
ま、いちばん大きいのは、コストですね。
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糸井 |
ああ、そうか、
価格がいくらになってもいいっていうんだったら
ずいぶん簡単なんだね。
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岩田 |
はい。極端にいえば、
テレビゲーム機の価格が10万円でも
ふつうに受け入れていただけるなら、
やれることってもっといっぱいあるわけですよ。
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糸井 |
うんうん。
「空飛ぶテレビゲーム」とかね(笑)。
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岩田 |
「空飛ぶテレビゲーム」とか、
「消えるテレビゲーム」とか(笑)。
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糸井 |
だから、液晶のコストが下がるだけでも、
クリエイティブの部分とは違うところで、
やれることがずいぶん増える。
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岩田 |
そういうことです。
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糸井 |
で、話を戻すと、どうして
この形にたどりついたのかなということです。
ニンテンドーDSのときの2画面からはじまって、
コントローラーをテレビのリモコンのようにして、
それをラケットにしたり、剣にしたりして、
かと思うと、体重計をコントローラーのようにしたりと、
これまでのゲームになかったものを
どんどん出したのが、Wiiというゲーム機でしたよね。
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宮本 |
そうですね。
で、Wiiのつぎのハードを考えたとき、
Wiiでやりきれてなかったのが、
「リビングに置いて、
いつでも家族みんながつかう
ポータルのような存在にしたい」
っていうことだったんですよ。
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糸井 |
ふーん、そうですか‥‥。
いや、Wiiはずいぶんその道を切り拓いたと思いますが。
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岩田 |
はい、かなりその位置に近づいたとは思います。
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糸井 |
でも、もっと、なんですね。
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宮本 |
家に帰ったら、まずWiiを起ち上げる、
というくらいにしたかったんですよ。
でも、やっぱり、『Wii Sports』や『マリオ』を
遊ぶときに電源を入れるという、
これまでどおりのところから、
大きくは変われなかったという現実があって。
Wii自体の電源は入ってるというところまでは行っても、
毎日とりあえずテレビにWiiを映す、
というところまでは行かなかったというか。
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糸井 |
なるほど。
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宮本 |
そういう意味での理想でいえば、
「ほぼ日」のホワイトボードカレンダーのほうが
家族のハブとして活躍してるわけですよ。
リビングとか台所に貼ってあって
帰ってきたら、みんなが見て、みんなが書くっていう。
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糸井 |
あー(笑)。
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岩田 |
そう、Wiiは、
「ほぼ日」のホワイトボードカレンダーみたいに
なってほしかったんですよ、ほんとに。
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糸井 |
なんか、うれしいな(笑)。
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一同 |
(笑)
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宮本 |
めざしてるのはそこで、
Wiiが映ってる画面を、
家族が帰ってきたらいちばんに見る画面に
したかったんです。
でも、いくらWiiに電源が入ってても
テレビ画面に映ってなかったら、
みんながWiiを見るっていう流れにならないので。
それで、やっぱり独自になにか画面を持ちたいね
ということになったんですけど、
そのころって、タブレットとかノートPCが
リビングに入ってなかった時代だったんですよ。
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岩田 |
というか、そもそも、
タブレットが存在していない時代でしたから。
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糸井 |
あーー。
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岩田 |
その議論をしてたのは2008年のことですから。
だから、Wiiの登場から2年後でした。
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宮本 |
そういう時代に、新しい画面を
リビングに持ち込めないかって話してたんですけど
当時は、「それだけで5万円くらいかかるよね」と。
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糸井 |
なるほどね。それでコストの話になるんだね。
そうか‥‥2008年‥‥。
それって、Wiiの人気がピークのころでしょ?
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岩田 |
そうですね。
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糸井 |
まだまだここから伸びるぞっていうときですよね。
そんなときに「ここが足りないぞ」と思って、
つぎのハードを考えてるわけですね。
それは、すごい話だなぁ。
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岩田 |
Wiiはまず、リビングで邪魔にされないことを目指して、
それはとてもうまく受け入れていただけたと思います。
ただ、そこから「リビングの主役」になるためには、
まだやるべきことがあった、という感じです。
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糸井 |
実際にリビングにゲーム機が入ってから
あらためて気づくこと、というのもあったんだろうね。
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岩田 |
それはありましたね。
たとえば、これまでのテレビゲームって、
普及すればするほど、
「自分専用のテレビ」につながれていったんですね。
それは、家庭に置かれるテレビが増えることと
シンクロしていたというのもあって。
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糸井 |
ブラウン管がどんどん安くなって、
家のなかにテレビが分散して、
そこにゲーム機がくっついていったんですね。
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岩田 |
はい。
家のなかのテレビの台数が増える時期と
かつてファミコン、スーパーファミコンが
浸透していった時期は完全に符号しているんです。
ところが、大画面のフラットなテレビが登場したことで、
もう一度、大きなテレビはリビングにひとつ、
という時代へ戻っていくわけです。
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糸井 |
つまり、大画面化っていうのは、
じつはテレビの非パーソナル化でもあるんだ。
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宮本 |
そうなんです。
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糸井 |
それは想定していた流れなんですか。
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岩田 |
2011年7月にすべてのテレビが
地デジに切り替わるというのは言われてましたから、
そのころまでに、家庭のテレビはデジタル化され、
HDテレビという、Wiiを発売した2006年当時は、
まだ特別な人の家にしかなかったものが
一般化するだろうっていうのはわかっていました。
また、「そういう高性能なテレビ一般化したら
その環境におけるテレビゲームの最適な姿というのも
変わるだろうね」という話はしてました。
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糸井 |
はーー。
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宮本 |
ただ、そのトランジションがすごい速かった
っていうのは、想定外でしたね。
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岩田 |
そうですね。
テレビの安くなり方って、すごかったですから。
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糸井 |
なるほどね。
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宮本 |
「えー!?」ていうくらいの速度で、
大きな画面のテレビが安くなっていきましたね。
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糸井 |
で、家庭のテレビは、あっという間に大きくなって
再びリビングの1台に一本化されて。
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岩田 |
はい。
Wiiはその大きなテレビにつながって、
そこにはちょっとしたスペースもできて、
みんなで身体を動かしたり、
わいわい遊ぶことができた。
それは、自分たちで言うのもなんですが、
すばらしいことだったと思います。
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糸井 |
うん。
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岩田 |
と同時に、ちょっと失ったものもあって。
なにかというと、
リビングのテレビは家族の共有物なので、
ほかの人がテレビを見るときにゲームはできないし、
誰かがゲームをやっていると
テレビが見られないわけです。
ということは、
ひとりでじっくり遊ぶタイプのものとは、
じつは相性がよくなかったんですね。
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糸井 |
うーん、それはそうですね。
いま「それはそうですね」なんて軽く言ったけど、
両方のタイプのゲームをつくってる会社としては、
たいへんなジレンマですね、それは。
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宮本 |
そうなんです(笑)。
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岩田 |
だから、たとえば、DSの画面に映せないかとか、
いろんな案を出し合ったんです。
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糸井 |
まだタブレットが存在してない時代に。
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岩田 |
はい(笑)。
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糸井 |
いやぁ、人の会社だから、
おもしろく聞いてられるけど、
たいへんだよなぁ、それは。
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一同 |
(笑)
(つづきます) |