糸井 |
Wiiも、Wii Uも、基本的には、
リビングのいちばん大きなテレビに
つないでもらうのがいちばんいいわけですよね。
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宮本 |
もう最初から、そう考えてつくってます。
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糸井 |
『Wii Sports』とか『マリオ』を
みんなでわいわい遊ぶなら、
ぜったいそのほうがいい。
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宮本 |
はい。
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岩田 |
だから、WiiもWii Uも、
人が集まったときには、
すごく強みが発揮されやすい。
実際、「みんなが集まったときに
Wiiがあるとたのしいよね」っていうのは、
「世の中に受け入れていただけた」
という手ごたえがあったんです。
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糸井 |
そう思います。
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岩田 |
ところが、ひとりでゲームを遊びたいとき、
あるいは家族がテレビを見てるときに
どうすればいいのかっていうことに関しては
きちんとした答えが出せていなかったんです。
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糸井 |
うーーん、悩ましいね。
というか、両方を同時に
フォローしようとしているのが
任天堂らしいなあと思うけど。
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岩田 |
(笑)
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糸井 |
で、その難問の糸口はどのへんに見つかるんですか?
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岩田 |
一度、さんざん話し合って、
あきらめかけていた「もうひとつの画面」を
宮本さんがもう一度、復活させるんです。
「やっぱり、もう1個の画面じゃない?」って
また言いはじめたのが、2009年ごろ?
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宮本 |
そうですね。
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糸井 |
2009年。
それにしたって、前の話だねぇ。
まだタブレットがリビングにないころでしょう?
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岩田 |
はい。まだ世の中にタブレットはなかったです。
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宮本 |
そのころ、
タブレットはまだ出回ってなかったですけど、
ノートPCはリビングでつかわれはじめてたんですよ。
うちの家でも、検索したり、
YouTubeを見たりっていうことが
テレビの番組を見るのと同じくらい、
わりとふつうのことになってきた。
だから、ひょっとしたら
6つくらいしかチャンネルがないテレビよりも
PCで動画を見たり自分で探して見るほうが
おもしろいんじゃないかという感じにもなってきて。
そうこうするうちに、テレビも動画投稿とか、
PC寄りの企画をどんどん取り込みはじめた。
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糸井 |
ああ、はいはい。
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宮本 |
そこで、「ぜんぶがひとつにまとまってるのが
いちばんいいんじゃないかな」と思ったんです。
テレビのチャンネルとYouTubeが切り替えられたらいいし、
PCの中継を大きな画面で見てもいい。
実際、まとまってないと不便だったりするんですね。
たとえば、ノートPCというのは、
みんなでなにかを見るということに向いてない。
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糸井 |
ああ、そうですね。
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岩田 |
まぁ、ケーブルで大画面テレビと
つなげることはできますけど、
わりと手間ですよね、それは。
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宮本 |
そうすると、テレビとインターネットがつながって、
チャンネルがわーっと広がったなかに
ゲームも入っていればいい。
そこまでを含めてリビングでの
大きな構造を考えていくと、
やっぱり、手元にもうひとつの画面が
あるというのは便利なんですよ。
大画面でみんながゲームをしているときに
手元でニュースを見たり、
テレビに関係することを手元でネット検索したり。
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糸井 |
なるほど、なるほど。
必然的にさえ、思えるね。
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宮本 |
で、大画面テレビと、手元の液晶と、
ふたつの画面がリビングにあるとしたら、
「その2画面を活かしたゲームや
おもしろい遊び」を考えるというのは、
もう、ぼくらの本領発揮の部分なんですよ。
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糸井 |
というか、そここそが‥‥。
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宮本 |
そうなんです。
任天堂が本来、力を発揮すべきところはそこでしょ、
っていうことなので。
やるべきことが明確になった。
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糸井 |
つまり、枠組みとか環境さえ、定めてしまえば、
あとは「任せてください!」なんですね。
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宮本 |
はい。ところが枠組みを決めるときに、
「インターネットにつながってない人は
どうするんですか?」みたいな議論をはじめてしまうと、
得意なところまで話が進まないんです。
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糸井 |
条件や局面が変わると、考えがぶれますからね。
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岩田 |
当たり前ですけど、お客さんには、
いろんなタイプの方がいらっしゃるんですね。
で、いろんな視点から商品を見ると、
同じ狙いでつくってるはずの商品が、
この人からはこう見えるけど、
あの人からはこう見えるっていうふうに
姿が変わってしまうわけです。
たとえば、商品が自動車だったら、
こういう人にはこういう車、
こういう人にはこんな車、っていうように
幅広いラインナップで
展開していくことができるんですけど、
任天堂が出すゲーム機はそういうものではない。
だとすると、究極的には、
「どの角度から見ても魅力的」っていうものを
目指すしかないんですけど、
そうやってぜんぶの角度にOKを出そうとすると、
延々と自己つっこみをくり返す、
みたいな状態になるんです。
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糸井 |
うんうんうん。
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宮本 |
そうですね。
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岩田 |
だから、ぶれるというよりは、
いろんな角度からもんで、穴を埋めていく。
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糸井 |
要するに、大きくは、環境の話なんですね。
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宮本 |
そうなんですよね。
今回、任天堂が目指したのは、
リビング全体の娯楽をつくることだったんです。
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糸井 |
ゲームはもちろんつくるんだけど‥‥。
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宮本 |
ゲームはもちろんつくりますけど、
それよりも、みんなが欲しくなる、
リビングがたのしくなるような道具。
それが、WiiとWii Uの目指すところだったんです。
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糸井 |
うん、だいぶ、わかってきました。
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岩田 |
だから、おもしろいのは、ふつうゲーム機って、
携帯型ゲーム機と据置型ゲーム機の
2種類に分かれるんですよ。
でも、Wii Uって、
決して据置型ゲーム機じゃないんです。
というのは、Wii U GamePadを持って歩くと、
電波が届く範囲なら家中どこでも歩き回れるんです。
ある場所に据え置かれていて、
そこに正対しないと遊べないというわけじゃない。
要は、テレビに依存しなくなるので、
いままでの、「テレビゲーム機ってこういうもの」
っていう形を、変えようとしてるんですよね。
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糸井 |
あの、基礎的な質問なんだけど、
手元の液晶でテレビは見られるんですか?
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岩田 |
テレビの放送を受信できるわけではありません。
基本的には、ゲーム機でつくりだしたものを
映すことができるディスプレイです。
でも、インターネットを通じた番組や動画は、
ふつうに見ることができます。
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糸井 |
あー、なるほど。
じゃあ、YouTubeやUstreamも。
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岩田 |
見られます。
海外の映画配信チャンネルとか、
ビデオ・オン・デマンドのサービスを使えば
まさしくテレビのように振る舞います。
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糸井 |
なるほどね。
じゃ、これはもう、ぼくしか訊けないような
ふざけた質問になってしまいますけど‥‥
Wii Uは、iPadと比べて、どうなんですか?
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一同 |
(笑)
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糸井 |
ごめんね、ほんと(笑)。
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岩田 |
iPadという製品はiPad単独だと
ケーブルをつなぐか、あるいは、
テレビの横にApple TVという箱を付けてあげると
テレビに映すこともできるんですが、
大きくは、それ単独を持ち歩いて使うことを
想定してつくられた機械だと思います。
一方、Wii Uは立場が逆で、
テレビの横についている箱があって、
その箱がテレビ画面に信号を送るだけでなく、
コントローラーについた画面に
画像を飛ばすことができる
つまり、iPadとは、主と従の関係が逆なんですね。
iPadから送られた画像がテレビに映るときには、
iPadの中で処理したものが、
テレビに映るという仕組みなんですけど、
Wii Uはまったく逆で、
Wii Uの本体の中で処理されたものが
手元の画面に送られてくるんです。
だから、どっちがいいかというよりも、
もともと得意なことが違うんです。
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糸井 |
ああ、なるほど。よくわかります。
で、Wii Uがたいへん得意なことのひとつは
はっきりしていて、
それが「ゲーム」だということですね。
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岩田 |
それはもう、そうです。
Wii Uは、電池で動かさなければならない
という制約がないので、
ゲームのようにパワーの必要な
画像処理は得意といえますね。
もともと、出身地がゲームというか、
ゲームで遊ぶためにつくられた機械なので。
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宮本 |
しかも、リビングの大きなテレビと
手元のパッドの両方に画が映るというのは、
新しい遊びをつくるうえで
とてもおもしろい環境なんです。
少なくとも、ほかの機械にはない。
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糸井 |
うーん、なんか、任天堂がやってることって、
スポーツのジャンルをひとつ、
まるごと生みだしてるような感じがしますね。
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宮本 |
ああ、そう、新しいジャンルをつくりたい。
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糸井 |
ジャンルであり、
ある種の哲学のようでもあり‥‥。
だから、「遊びとは何か」、「ゲームとは何か」、
というような根本的な問いかけがいつもある。
それがわかると任天堂がやってることの
ほんとうのおもしろさが伝わるんじゃないでしょうか。
(つづきます) |