#12 向こうから近寄ってくる写真とは?

講師

菅原 「あややさんのような写真は
 ぼくには撮れないな。
 こういう人っているんです」

司会

シェフ 「近づかれるほうは、怖いですけどねえ」
山下 「はい、とっても怖いです!」
モギ 「じぶんの写真を
 見てくださっているというので
 途中参加いたしました。
 恐縮であります!」
シェフ 「無遠慮? 遠慮? 撮る撮られるの距離」からの
続きだと思ってお読みくださいませ。
むやみに近づく「無遠慮カメラマン」あややの写真と、
なかなか近づけない「遠慮カメラマン」モギの写真を
くらべながら、お話ししてきました。


▲撮影:あやや


▲撮影:モギ
山下 あややのは一眼レフ、
モギのはGRというカメラのちがいとともに、
あやちゃんは「近づく才能」があると。
そういう人はうらやましいねっていう
お話しでしたね。
シェフ で、ぼくら、モギの写真は
「遠慮か、びびりがあって、
 近づけてないんじゃないか」
と仮説を立てていたんですが
そうではなくて、
広い範囲をくまなく写す
GRというカメラの特性であると。
たしかによーく見てみると、
モギの写真は「ビビってる」わけでは
ないような気がしてきました。


▲撮影:モギ
菅原 ビビッてはいないです。
シェフ 糸井さんが、すごく心を許している感じがする。
山下 よく、モギに「俺を撮れ!」って
言ったりしてますよ。
これもいいですね。


▲撮影:モギ
山下 これは避難訓練をしてたときに、
うしろから「茂木、俺だ!」っていうから
振り向いたら糸井さんだったんですね。
菅原 (笑)
シェフ これ、モギちゃんが糸井さんに
尊敬とか遠い距離を思っている以上に、
糸井さんからはモギちゃんへの距離が近いんだよね。
被写体の側からの距離が写ってるんじゃないかな。
って、僕が分析してどうする。
菅原 いや、その通り。
だから彼女の写真は「遠く」ないんです。
広角だから、いろんなものが写ってるけど、
遠くはないと思う。
山下 主題が写っていれば遠くはないんですね。
菅原 ちょっとこれはね、
深い話になっちゃうかもしれないんですけど、
距離の問題でいうなら、
あややさんの写真とモギさんの写真、
一見あややさんのほうが近いです。
モギさんのほうが一見遠いです。
けれど、むしろさかさまなんです。
ええ〜!
菅原 じつはモギさんの写真のほうが、近いです。
なんて言えばいいんだろうな、
そこが写真の面白いところで、
あややさんのは、
普段の素直なこの人たちの
表情みたいなものが写っている。
だからそれはそれでいい写真です。
山下 いい写真。
菅原 だけど、モギさんのは、
そこには「もの」としては写っていない、
糸井さんの茂木さんに対する感じとか、
茂木さんが糸井さんに対する感じみたいなものが
写っている気がしますよね。
シェフ 確かにあややのは、
そういう「やりとり」というか
気持ちの交換がないままの、
ゲリラ撮影なんですよね。
菅原 そうなんですね。
表面が写っているんです。
山下 ある意味、暴力的(笑)。
菅原 そうですね。
シェフ あやちゃんの写真は、
撮る人の面白さなんですね。
撮られる人はもうなすがままで、
でも茂木さんのほうには、
関係が写っているんですね。
菅原 だからあややさんの写真は
「うまいな〜」って思うし、
実際にすごくいい写真です。
きっと本人も、
おもしろくなってきているはずですから、
もっといっぱい撮ればいいのに。
それにしても、もぎさんの写真いいですよ。
モギ (入ってきて聞いていた)
あら。どうしましょう。
恐縮でございます!
シェフ 弊社にはあややタイプの写真を
撮る人はいなかったんで、
びっくりしたんですよ。
山下 (笑)
菅原 あ、わかる。それも。
シェフ なんか異質な写真を見た感じ。
菅原 それはわかります。
シェフ 「うっそ、あやちゃんが
 カメラ持つと、こうなっちゃうんだ」って。
取材に行ってカメラもたせると
たいへんなことになっちゃうんだけど(笑)、
これはこれで生かしたらいいなあと。
菅原 そうそう。
山下 あややさんっていうのは、
ふだんから人と話すときの距離感が、
一歩近いですね。
菅原 なるほど。
シェフ 僕なんか、いつもおなかを
触られているもん。セクハラだ。
モギ (笑)そういえば、思いだしたんですけど、
糸井さんは私に写されるときに、ちゃんと
「モギが撮りやすいように」って、
ちょっと表情を変えてくださったりもするんですよ。
菅原 ああ、なるほど。
そういうムードもわかりますね。




▲撮影:モギ
シェフ こういう顔って、
一番糸井さんっぽい糸井さんだねえ。
僕らが知っている、ふだんの糸井さんが
全部出ているね、これ。
僕が撮ってもこうなんないんだよ、だから。
菅原 僕が好きなのはそういうことなんです。
それが写真だと、僕は思っているので。
そういうことが写っている写真は
やはりいい写真ですね。
どちらもいい写真なんですが、
もしもこれらの写真が、
雑誌にでも使われたとしたら、
それが使われる場所によっても、
かなり違う印象になるのでしょうね。
シェフ なるほど。
山下 なるほど。
シェフ どうもありがとうございました。
次回はまた別のテーマでまいりましょう。
(次回につづきます!)
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2008-05-01-THU