「みんな、『いい写真』を撮ろうと しすぎなんじゃないかな」 |
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「なにが『いい』のかが わかってない気がします、わたし」 |
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「同感ですー」 | |
「ぜんぜんわかりません!」 | |
「言われてみると、わからないかも。 なにが『いい写真』なんだろね」 |
すごーく暗く撮れちゃった写真があるんです。 この写真なんですけど‥‥ |
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これが、どうしたの? とってもいいと思いますよ。 |
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ちがうんです、こんなに暗くなかったのに すごく暗く撮れちゃったんです。 |
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そういうことか。 | |
それはカメラがまんなかの 白い光源を感知して それをきれいに撮ろうとしたんでしょう。 そのぶん、まわりが暗くなっちゃったんですね。 明るく撮りたかったら、 液晶画面を見ながら 「露出補正」をすればいいわけだけど、 でもね、冨田さん。 |
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はい。 | |
結果オーライでいいと思うんですよ。 これ、明るいよりも、 もしかしたら、いいかもしれない。 写真的かもしれないです。 |
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ほんとですか? | |
うん。 | |
本人的には「うーん?」と 思ってるかもしれないけど。 |
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いや、ビックリしたんです。 撮った後に、何でこんなに 暗くなってんのと思って。 |
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自分がいいと思う写真と、 他人がいいと思う写真は 一緒になんないもんですかねえ。 |
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どうなんですかねえ。 ぼくもわからないです。 |
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えっ、写真家はそれを 分かってるのかと思ってました。 だって展覧会を やったりするじゃないですか。 「いい写真」を出すんですよね。 |
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いや、でも‥‥うーん? やっぱり、自分でも、 分かってないんじゃないですかねえ。 というか自分のことになると、 とりわけ、わからないものかもしれないです。 |
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そうでしたか。 そういえばこのあいだ、 アニー・リーボヴィッツの ドキュメント映画を観たんです。 巨匠と言われる彼女ですら、 写真集に掲載する写真を選ぶにあたっては 編集者の意見をかなり聞いてました。 部屋中に写真集用の写真を並べて貼って、 やっぱり悩むんだなあと思って。 |
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ふーん! | |
アニー・リーボヴィッツって、 ジョン・レノンの写真を撮った人ですよね。 |
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オノ・ヨーコさんに裸で抱きついてる。 | |
そうそう(検索して)、 この写真撮った人です。 |
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不思議なものでね、 いいなあ、いい写真だなって 自分で撮ったので思える写真ていうのは、 自分が撮った気がしない写真、 だったりするんですよ。 |
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ああー! | |
そこには「自分」がいないの。 写真だけがあって、 別に誰が撮ったっていいっていうか、 別にオレが撮ってないっていうか、 そのくらいに感じる写真。 うまく言えないんですけど。 |
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なんとなくですが、わかります。 | |
「俺が、俺が」って撮った写真って、 撮った時に「いいじゃん」って思っても、 しばらくして見ると何かつまんないなあと思ったり。 ところが、それを人に、 これ、いいじゃんと言われたりして、 あ、やっぱいいのかなあと、 しょっちゅう、わからなくなってます。 でも、「いい写真は、自分で撮った気がしない写真」、 これはほんとにそうだと思います。 冨田さんが「ゆがむ」とか「暗い」と 言うんだけれど、 ぼくは、いいと思うんですよ。 写真、うまいと思いますよ。 |
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やったー。 | |
やったー。 | |
撮る時の視点がはっきりしているんですよね。 この写真もおもしろいですよね。 |
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この写真、スタイルのいい猫だなあと思って 撮ってるんだと思うんですが。 |
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その通りです。 何頭身なの? っていうくらいのスタイル。 |
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広角レンズで近づいたときならではのゆがみが 「足の長さ」を誇張することになって、 いい効果を生んだんですね。 |
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あっ、これは吉本隆明さんじゃ? | |
そうでーす。 打ち合わせにうかがったとき、 お見送りしてくださったの。 とってもいい笑顔で見送ってくださったので 一枚、撮らせていただいたんです。 |
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いいお顔ですー! | |
こっちまでうれしくなっちゃう笑顔だよね。 | |
足に貼ってあるカイロがまた! | |
すばらしいですよ。 | |
わぁ、ありがとうございまーす。 | |
冨田さんは、「わからない」ままでいいですから、 撮りたいと思ったものを 素直に撮っていきましょうよ。 僕もわかんないし、 自分のことは分かんなくていいんじゃないですか。 「ほぼ日」のみんなみたいに、 いいとか面白いとか言ってくれる人がいたりすると、 いいですよね。 普通はなかなか言ってもらえないものね。 |
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みんな、下手だ下手だとか言いながらも 楽しそうですよね、撮るのが。 |
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やっぱり楽しくないとね。 そういう意味では写真にセオリーは、 ないと思うんですよ。 こういうふうにしなければいけないとか、 こういうときはこういうタイミングで、 とかっていうのもないし。 楽しければいいんじゃないかな。 その気分が写ったら、 多分きっといい写真なんだと思う。 可愛いーって思ったときの 可愛さが写ったらいいんであってね。 可愛いーと思わないで撮っても、 そういう写真にならないです。 |
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(つづきます!) |