#40家の古いカメラ、どうしましょう。その2 レンズの大トロ部分

講師

菅原一剛 「フイルムカメラ、もっと使えばいいのに」

今回の部員

シェフ 「ううむ、なかなか、
 手をつけないですー」
山下 「もったいないんですけどねえ」
シェフ 古いフイルムカメラを、
今の時代に使うとき
どう考えたらいいんだろう、
ということについて、
菅原さんに教わっております。
「こう考えたらいいじゃない」と
おっしゃるんですが、
どう考えたらいいんでしょう。
菅原一剛

たまたま中に入ってるのはフイルムだ。
そう考えたらいいんですよ。

山下 ああ(笑)。
菅原一剛 でも、撮るのは一緒だから、撮って、
前も話したことあるかもしれないけど、
現像所に出して、
「CDに焼いてください」って。
そうすればパソコンでみられますよ。
シェフ そうですね、一気にね。
菅原一剛 さっきのE-P1で撮った写真がいいなと思うのは、
フイルムライクということだと思うんです。
シェフ あ、そうかもしれません。
菅原一剛 テレシネってわかりますか。
山下 テレシネ?
菅原一剛 映像の世界で、今でもコマーシャルは
けっこう、フイルムで撮ってるんです。
山下 あ、いまだに。
菅原一剛 いまだに。で、だいぶちょっとそれも
変わりつつあるけど、
やっぱりフイルムが主流なんです。
それはトーンが広いから。
テレビドラマなんか見てると、
途中でコマーシャルが入ると
トーンが変わるじゃないですか。
あれがフイルムとビデオの
大きな違いなんです。
テレシネっていうのは、
フイルムで撮ったものをデジタルに変換して、
そこで色を決めていくわけ。
もうちょっと黄色くとか青くみたいな、
それがテレシネという作業。
その感じというのは、ビデオでもないし、
フイルムでもないし、いい感じなんですよ。
その感じが、フイルムをCDに
焼いてもらったときに出るんです。
武井さん、あれ好きだよね、あの感じ。
シェフ はい、好きです。
プラハに住んでるshinoさんっていう
作家のかたを紹介するコンテンツがあったんですが、
そのなかに、「もとはフイルム」の写真が入ってます。
もう、明らかにいいんですよ。



菅原一剛 いいんですよね。
シェフ もうざらつきも含めて、
なんだか奥行きが全然違うんですよね。
菅原一剛 武井さんもさ、面倒くさいぐらい
うるさい人だから‥‥
シェフ いや、そんなことないですよ。
僕は面倒くさくないです(笑)。
山下 うるさい人(笑)。
菅原一剛 ね、うるさいよねえ。
なんかわかってんだか
わかってないんだか知らないけどさ(笑)、
うるさいよねぇ(笑)。
シェフ 全然そんなことないです。
何もわかってないし、
面倒くさくないです(笑)。
菅原一剛 とはいえ昔からこういう
コンタックスとかで写真撮ってるじゃない。
じゅうぶん「うるさい人」ですよ。
ポジで撮った時代も覚えてるでしょう。
シェフ はい、仕事で、
ポジフイルム使ってました。
すごくたいへんでしたけれど。
菅原一剛 ね。音と一緒で、そういう記憶って消えないから、
デジタルカメラだけだと物足りないはずなんだよ。
だから、たまに本当に面倒くさがらないで、
フイルムカメラで撮ったらいいのに。
シェフ そうですねえ。
菅原一剛 すぐ見れなくてもいいじゃない。
シェフ えと、そこじゃないんですよ。
もう一つ、自分の「ケチ」な部分が入るんです。
だってフイルム1本800円近くして、
現像代、CD-R書き込み代、足すと
いくらかかるかなーなんて考えちゃって、
「1シャッター、いくら? え?!」
みたいに思うんですよね。
山下 でも、なんかその感じも、
いいんじゃないですか。
シェフ 一球入魂?
山下 一球入魂感がね。
菅原さんの主宰している
「東京観光写真倶楽部」で
フイルムカメラをもって、
みなさんで築地に
行かれたりしてたじゃないですか。
あれがすごいうらやましくて。
シェフ 本当?
菅原一剛

来てくださいよ(笑)。

山下 僕、勝手にやってたんです、
だから1人で。
菅原一剛 (笑)
シェフ 勝手にやってたんだ(笑)。
山下 フイルムを買ってきてやったりとか、
CDに焼くと面白いよというのもやったし。
菅原一剛 あれいいでしょう?
山下 面白いですね。
菅原一剛 あれ好きなんだよね。
シェフ たしかに、コンタックスの一眼レフに
50ミリ1.4の単焦点レンズをつけるのが
いちばん好きです。
すがたかたちも、写りも。
でもその状態は
デジタルカメラでそのまま再現できない。
そのまま行くんだったら最高なんですけど。
菅原一剛 多分、近い将来、
それに近いものができてくると思うよ。
シェフ ほんとですか!
山下 いまは、どうしてるの、武井さんは。
シェフ その50ミリ1.4の単焦点レンズを
E-P1っていう、
マイクロフォーサーズという規格のカメラに
アダプタを介してつけてます。
焦点距離が倍になっちゃうけど。
菅原一剛 うん、そうですね。
山下 焦点距離が倍?
シェフ 35ミリのレンズをつけると
70ミリの画角になっちゃうんです。
つまり、センサーがちっちゃい。
レンズから受け取る情報が、
ざっくり言うと半分になっちゃうんです。
ただ、逆にいうと、レンズの、
いちばんおいしい部分、
大トロの部分だけを写すというか‥‥。
菅原一剛 大トロ(笑)。
山下 大トロを、レンズの大トロを(笑)。
食い物に変換していくと
納得しやすいんですねえ(笑)。
シェフ というふうに勝手に思ってるんですけど。
菅原一剛 さすがよく知ってる(笑)。
シェフ いや、でも、正直言って僕、
大トロは好きじゃなくて
赤身が好きなんですけど(笑)。
山下 知らないよ(笑)。
菅原一剛 でも、本当なんですよ。
レンズって丸いでしょう?
山下 きれいですね。
シェフ きれいでしょ。
菅原一剛 丸いんです。
レンズは丸いのに写真は四角いんです。
山下 あ、はい、はい、はい!
菅原一剛 つまり、そもそも、
丸のなかの四角を切り取って
使っているわけですよ。
山下 はい、大トロを
切り抜いてるわけですね。
菅原一剛 そうです。だから、もともと、
この丸い中のおいしいところを
切って使ってるんですけど、
マイクロフォーサーズは、
よりおいしい真ん中ってことになるね(笑)。
シェフ そうですよね!
山下 なるほどー。
レンズは丸いんですよね。
菅原一剛 そしてこの世界は、
決して四角いわけじゃなくて、
もともとは丸いんだものね。
シェフ そう、自分が見てる世界、
実は丸いですよね。
山下 目玉も丸いし!
菅原一剛

うん、丸いんです。
地球も丸いし、
見えるものって実は丸いんですよね。
印象って丸いでしょ?
印象は四角くないよね。

山下 ないですね。
映画のフレーミングみたいに
こういうふうに(手で四角をつくる)
ならないですよね
菅原一剛 わりと今のデジタルカメラは
四角くカッチリ写そうとするじゃないですか。
そうじゃなくて、もっとなんかこう、
丸い感じのイメージを
みんな、写したいんですよ、きっと。
そんな気分のなかで、このE-P1が出て、
すごく売れたんですね。
オリンパスって、デジタルカメラ創成期の頃から
ずっと作ってるから、
画像エンジンが非常にこなれてるというか、
すごくうまいなあと思いました。
  (つづきます)
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2009-12-25-FRI