まちづくりサークル「気楽会(きらくかい)」の
気仙沼の魅力的な人々に出会う
「ひとめぐりツアー」をご紹介します。
気楽会は、地元の20〜30代が中心となって、
「気仙沼を楽しむ」
「気仙沼を楽しくする」活動を行うため、
2006年に結成された会です。
震災前は南気仙沼駅に「観光案内課」を設置し、
はじめて気仙沼を訪れる観光客への
案内を行なったり、
気仙沼ホルモン全店マップの
制作を手がけたりしてきました。
気楽会が震災後に企画した活動で
気仙沼の街を半日かけてゆっくりと歩き、
街の景色を肌で感じながら、
気仙沼人と出会い、会話をしていくものです。
私はこれまで、通算3回参加しました。
はじめは、昨年の9月。
被災した街を案内する、
手探り状態で始まったこのツアーが
「トライアル」と題して行った、
第ゼロ回開催の時、
ほぼ日の乗組員数名と一緒に参加しました。
そのころ、まだ街には、
津波で押し流された家屋や船が
いたるところにあり、
気仙沼のみなさんが震災の話を教えてくれるその声も、
がむしゃらに日々をやり過ごしてきた様子が
強く感じられたように思います。
みなさんが、被災後の気仙沼を
はじめて車ではなく歩きで眺めた時、
自分の頭のはるか上の高さを、
津波で流された家々が通過していったということや、
電気も、水も出ない環境で、
ガソリンもなく、
同じ場所を歩いていたのだということが、
頭の中をめぐりました。
今年5月のツアーでは、
震災からの1年を経て、
数々の問題にぶつかりながらも、
できることを始めようとしている皆さんの姿を、
見せていただきました。
前回のツアーよりも、
一段とパワーアップしているように感じられるほど、
いつでも前を向いているその姿勢に、
逆にこちらが励まされてしまう。というのは、
ツアーに参加されていた方の感想でもあります。
そして、ツアーの回を重ねるごとに、
街のいろいろな建物が撤去され、
「何もない場所」が増えてきたということも感じます。
何もなくなった街を見て、
元の姿や、被害の様子を想像するのは
とても難しいことです。
一方で、津波で粉々になった建物や家具は、
細かく分類されながら、
一つの場所に集められています。
交通量の多い道路から
少し離れた場所にある集積所の前に立つと、
その量に圧倒されます。まるで、ひとつの団地、
あるいは大型ショッピングモールのような大きさで、
大きな塊となって積み上げられているのです。
そんな光景は、気仙沼だけでなく、
被害を受けた沿岸部の
どの街にもあります。
街が片付いてきた、と言われれば
それは間違いではないのですが、
大きな山を形作っているひとつひとつは、
家や学校、勤務先として建っていたものであり、
生活に使われていたものであり、
だれかの所有物でもありました。
それらはすべて、街の一部であったのだ思うと、
ただただ「街を失ってしまったのだ」
という喪失感に打ちのめされます。
津波がきても、
もう二度とこういうことが起きないように、
今、そこに住んでいた人たちは
一生懸命知恵を絞っています。私は、震災当日東京にいました。
その時のことを知らない私にとって、
このツアーに参加して、
積み上げられた街、
被災を受けた店舗、避難したビル、
目の前で家族が流されていった場所、
そういうところで、その当事者たちから聞く言葉は、
とても貴重なものです。
何も知らなかったからこそ、
こうした言葉や、残された写真によって、
震災時の事、それから今までの出来事を
自分のなかにどうにか留めておきたい
という気持ちがあります。被害の規模の大きさを数で表すのは難しいのですが、
「気仙沼で出会う人は、
誰しもが大切な人や物を失っている」という感覚が、
この街の受けた被害の大きさだと私は思います。
それでもなお、この街の人が外から来た人たちに
「元気で明るい」と言われるのは、
いったいなぜなんでしょう。
気楽会のツアーでも、
まさに「元気で明るい」
たくさんの魅力的な気仙沼人と、
出会うことができます。気仙沼に住むようになって思い当たるのは、
この街が根っからの海の街、
港町だからではないかということです。
海の近くに住む人達は、
海に出ていく男たちはもちろん、
男たちの不在の家を守る女たちもまた、
力強く、しっかりと、元気でいなければなりません。
そういった気質に加え、
この街が大きな港町であるがゆえ、
外からの人に対する懐が大きいところがあると思います。
特にその交通の便の悪さから「陸の孤島」
とも揶揄される気仙沼ですが、
その分、外から来てくれる人々への
ウェルカムモードはかなり強力です。
がっしりと肩を捕まれ、
「よく、来たごだ!」と言われて、
ウンウン頷かれたりします。
はじめて会ったのに、
「食わいん!」
と言ってお魚や貝をくれたり、
「上がってがいん!」
とドヤドヤと背中を押され、手をひかれ、
気づけばその人の家の茶の間で
ご飯をたべているような時もあります。
この街は、来てくれる人にはこれでもかというほどの
もてなしをする(されている)気がします。
そんなふうに大歓迎されることって、
なかなか無いと思います。
私ははじめての経験でした。
もし、みなさんが気仙沼に訪れるなら、
帰り際、ちょっと寂しくなるくらいが、
気仙沼の良さを味わえた、
いい旅だったといえるのではないでしょうか。
「たくさんの知り合いができれば、
その地域に何度も通いたくなる」
というのが、このツアーのコンセプトでもあります。
私も、気仙沼に来るようになって、
たくさんの方とお会いしました。
そして、結局この街に住むことになりました。
それから、外から気仙沼に訪れる方々とも、
たくさん友達になりました。
どうぞまた来てくださいね。
これからいらっしゃる方も、待ってますので、
どうぞ来てください。
という気持ちで、私は気仙沼にいます。
さて、気楽会のツアーの受付については、
気楽会のブログからご確認ください。ちなみに気楽会の代表は、
ほぼ日にもたびたび登場している
コヤマ菓子店の小山裕隆さんです。
私も、今度はみなさんをお迎えする気仙沼人として、
このツアーに参加していると思います。