原田 |
日本には二七兆円の外食産業が存在している。
われわれは大きな太平洋の中で、
ちっちゃなプールで泳いでいるようなものです。
いかにチャンスがあるかですよね。
人間は朝昼晩三食食べなさい、
と教育を受けましたが、今後の世の中は
二四時間のライフスタイルに多様化していく……
すると人間は、朝昼晩の三回と
決められたものではなく、
いつでも食べるスタイルに変わっていきます。
それはもう見えてるんですから、
そのトレンドを
われわれは作っていかなければならない。
そう考えています。
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糸井 |
お金持ちでも、
料亭、料亭、マック、自宅……
みたいな食べかたをする時代じゃないですか。
忙しさや目的に合わせて食事を選ぶ。
そこは、おもしろいなぁと思います。
料亭の人とマックの人とが分けられていない。
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原田 |
若い時から
よく上司に教わったことのひとつに
「人間はダンヒルのライターも百円ライターも、
かっこよく使えるようにならなきゃダメだ」
ということがあります。
食事も、そうでしょう。
私も、業務の効率上、
運転手つきの車に乗って
仕事をしなきゃいけないぐらい
忙しい時には、それを使います。
タクシーも、使います。
ただし、個人では電車も乗ります。
昔はよく、牛丼屋で朝飯を食べていました(笑)。
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糸井 |
原田さん、マクドナルドが
五九円まで値下げした時代のことを
どう思いますか?
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原田 |
五九円は失敗だった、
という認知が社内にあったのですが、
私は「失敗ではなかった」と言っています。
なぜかと言うと……どんな商品も、
まずは商品力や技術で市場を作りますが、
その次にはかならず価格競争に入りますよね。
その次に、付加価値の戦争になってきます。
携帯電話もそうでしょう。
機能で市場を作り、価格競争で、
タダで配る時代を経て、今はサービス戦争。
パソコンも、
価格競争の後はソリューションの戦争です。
ですから、
ハンバーガーという新しい食のスタイルで
市場を作った後の価格競争で、
マクドナルドが一気に価格戦争の戦い方の
ルールのリーダーシップを取ったことは、
正しかったんだと私は考えています。
価格戦争の次の戦い方に
投資をしなかったから
失敗しなかっただけだと思うんです。
もちろん
「価格政策が一貫しなかったから信頼を失った」
というのは反省点ですけどね。
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糸井 |
なるほどなぁ。
今までうかがってきたことを、
いちばん簡単に言うと、
ものすごく敏感なひとりのお客さんというのは、
極端に言うと
経営者になれるってことですよね?
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原田 |
そういうことです。
すばらしい経営者はみんな感性が高いですよ。
そうじゃないとこう、
一生懸命勉強しちゃうだけで……
全体像をどうパッととらえるかだと思います。
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(つづきます)
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