糸井 |
経営者は、論理を超えて説得できる
詩人であるべきなんでしょうね。
そうじゃないと、
論理以上のことをできないから。
|
原田 |
そうですね……
自慢するわけではないですけど、
学校の時、ぼくは作文や詩や絵を、
毎日書いて校長先生のところへ
持っていったの。
緑の小箱というのがあって
毎日入れていました。
すると校長先生が赤字を入れてくれて、
原田くん、よかったね、
ここのところはこう書くと、
もっとすばらしい文章になるよと
毎日やり続けてくれて……。
もう、あの校長先生には、
今でも感謝しています。
それからオヤジの存在も大きかったと思う。
勉強しろとは絶対に言わないの。
勉強しなかったらトラックに乗せて
山の上に連れていかれて……
「勉強しないのに、なんで学校行くんだ?
ここで石をいっぱい積んでいろ」
夜中まで積まされましたが、
昔のオヤジの教育の勇気ってすごいですよ。
私は自分の子どもに
そういう教育をする勇気はない。
野球ばっかりやっていて
遊んで家に帰ってきたら、
勉強部屋に何にもないのよ。本もない!
庭を見たら、ぜんぶ捨ててあるんだよね。
これもオヤジがやったんです。
私自身の子育てで言うと、
子どもが三歳の時にわがままばかり言うので、
おしりをピンと叩いて、
押し入れに放りこんで、
バチンと閉めたんです。
「ギャー!」と泣くんですが
そのうちピタッと泣きやんだんです……
何しているんだろう?
聞き耳をたてても何も聞こえない。
ショック死してしまったのか?
心配になって、そーっとフスマを開けたら、
子どもは目の前に座っていて、
フスマの間で、目と目が合ったんです。
その時、オヤジの顔が浮かんできました。
「……あのオヤジは
フスマを開けなかった。勇気あったな」と。
俺は子どもに負けて、
徹底してはできなかった。
|
糸井 |
お父さんのほうが、信じきっていたんですね。
|
原田 |
あそこまで強烈に、徹底して、
子どもを叱って教育するっていうのは、
勇気がいることです。
自分に自信と情熱がないと……
だから私は、子どもに自信がなかったなぁ。
目が合った瞬間「負けた!」と思いました。
今でもね、子どもに負けるんですよ。
「お金がない」とか
言われたりすると……(笑)。
|
糸井 |
まぁ、「負けたい」と
顔に描いてあるんでしょうね。
|
原田 |
一回、オヤジに、三歳のとき、
ワカメのおつゆがキライだと言って、
ダーンと、ひっくりかえしたんです。
その時のことは、まだ、
よーく覚えていますよ。
オヤジは何も言わずに、
私の足をパーンと掴んで、
紐で天井に吊るした。
それで逆さになったんです。
その時、庭の水道の蛇口から、
水がポタンポタンと落ちているのが
見えたんです。
それを見て涙が出たんですよ。
小学校一年生のときに、
作文で「しかられた」という題で
その時のことを作文に綿々と書きました。
「水道の蛇口からお水が
ポタンポタンと逆さに落ちるのを見て、
涙が出ました」と。
それがよかったんでしょうね。
作文がどっかに入選しちゃって。
ガリ版刷りで、学校中、配られたんですよ。
おやじ、真っ青になって(笑)。
|
糸井 |
その話と、図にした経営方針と、
きっとどっかで、つながっているんですね。
|
原田 |
わかんないですけどね。
まぁ、何でもいいから、
いろいろ経験したほうがいいですよね。
何でも、経験っていうのは、
いいことですもんね。失敗もね。
|
糸井 |
ほんとにありがとうございました。
おもしろかった!
|
|
(原田さんにうかがった話は、
ここまでになります。
ご愛読いただき、
どうもありがとうございました)
|