糸井 |
今の、絵を描きながら
戦略を考えていったというのは、
手描きからパワーポイントに
落としていく過程で
発見もあっただろうし……
大もうけでしたね、それは。
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原田 |
複雑なことも、
絵に描いて渡して説明したら
わかりますからね。
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糸井 |
原田さんが
「絵に見えるんです」
という言い方は、
正確な完成品としての
絵で見えるというわけでは
ないんでしょうけど、
なんだかわかるなぁ。
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原田 |
うちの社員にもよく言うんですけど、
ビジネスでは、
市場調査も大切ですが
市場調査をして分析して、
それだけで戦略を決めるなんて
やめたほうがいいんです。
そんなもので戦略が成功するなら、
どこの会社だってうまくいっているから。
ビジネスも、麻雀で言えばモウパイ。
ひらめきが大切なんだ、
と私は考えていますからね。
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糸井 |
そうでしょうけど……
そう言っちゃっていいんですか?
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原田 |
三十三年間にわたり、
素晴らしい実績を積んだ社員に、
さらに成長するためには
スピードが大事だという意味で
あえて言っています。
やっぱり、経営戦略はひらめきなんです。
市場調査や分析は
ひらめいたものの検証に過ぎない。
今まで、どんなにリサーチしても、
テストマーケティングをやっても、
結果が出た時には
「あぁ、思ったとおりじゃない!」
というのがほとんどで、
驚くような結果は出たことがありません。
そこで驚くような経営者は、
かなり低いレベルです。
調査は、自分たちの
経営戦略の質の高さの検証であって、
実行する時の市場のレベルを
きちんと評価して、
あるべき姿と実態のギャップを
埋めていくためのツールなんです。
戦略の基礎データづくりには
決してならない。
だから経営っていうのは簡単に言うと
「一瞬のひらめきを検証して
仕組みを作って人を説得して動かしていく」
ということですから。
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糸井 |
原田さんは
もともとジャズファンですけど、
ジャズの即興演奏も
何もないところから
出てくるはずがないわけで、
音楽的教養が高まるほど、
アドリブが美しくなるとも言えますよね。
それと、原田さんがおっしゃる
「ひらめき」って似ていますよね。
アメリカ的経営って、
一見、そういう一瞬のものとは
逆のように見えるのですが……。
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原田 |
いや、アメリカ人っていうのは、
とてもクリエイティブです。
日本人のほうが、
マーケットがこうで、
GDPがこうで、
経済指標がどうで、
従って世の中が不景気です……
とか言いがちですけど、そんなもの、
要するに要らないんです。
俺たちのビジネスチャンスは
どこにあるんだ?
そのチャンスをモノにするためには
どうしたらいいのか?
それを裏打ちするためのデータは、
添付資料として、もちろんつけるべきなんです。
ただそれも
「質問が来たらお見せできますよ」
という程度のものです。
チャンスとゴールを明確にする。
経営はこれしかないですよ。
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(つづきます)
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