おひさしぶりです、サカキシンイチロウでございます。

レストランにかかわりをもつすべての人が、
シアワセになるような環境作りを
ずっと仕事にしておりました。
お客様にレストランをたのしんでいただくために
しなくてはいけないコトや、
現場で働く人たちが笑顔で働き続けるコトができる環境。
経営する人たちが、たえず愛情を注ぎ続けて
報われる会社作りのさまざまなコト。
このレストランはステキだね。
この会社ってたのしいネと、
一人でも多くの人に言ってもらえるような努力を
一緒にさせていただく仕事。
30年近くもただ一筋に。

人気を独り占めするほど自分のレストランを有名にして、
会社を大きく立派にし、
ベンツに乗ってロレックスを腕に巻く。
そんな成功を一人でも多くの人たちと
共有できればいい‥‥、とそう思いながら30年も。

ところが5年ほど前からのコトでしょうか?
レストランを経営する人。
レストランで働く人の気持ちが大きく変わりはじめた。
会社を大きくすることだけが
シアワセになる方法じゃない。
有名なスターシェフになるコトだけが
人生の目標ではないワケで、
例えば腕時計に縛られず、
自転車の距離で生活することを
シアワセと感じる人がどんどん増えてきた。
経済的な成功が、
すなわちシアワセのすべてではない時代の中で、
ずっとボクが提供してた、
シアワセのプログラムは
時代にそぐわぬモノになっていったのです。

夢、憧れを持ち続けつつ、
けれど目の前にあるモノを受け容れ、
それを心底たのしむ生活。
ボクにとってもその考えはとてもステキで居心地がよく、
それでほぼ30年の仕事の幕を
一旦引くことになりました。

そして今。
不機嫌なコトがどんどん増えて膨らんでいく
レストランを取り巻く現状の中。
いろんなコトに負けぬよう、
今まで以上にたのしくて、
今まで以上にゴキゲンなレストランとのつき合い方を、
レストランにかかわりを持つ
すべての人と分かち合いたい。
そう思いながら、新たなボクをがんばろうと、
仕事を再開したところです。

おいしくたのしい生活の、
ほんの小さなヒントを、おすそ分け。
次回より、連載を再開させていただきます。
どうぞよろしくおねがいいたします。




2010-10-07-THU
 
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN