今年のクリスマス。
みなさんは、誰と過ごされたでしょうか。
そしてどこで、何をお召し上がりになったのか?

ボクがこの原稿を書いているのが12月の中旬のコト。
この段階で、まだボクの24日、25日のスケジュール表は
ブランクのまま。
だからおそらく、家で特別な友人たちと
一緒に料理をつくって、
たのしく過ごすことになったのだろうと思います。
街中が一年で一番夢見がちで、
ほんわかとしたシアワセな空気に満たされているこの季節。
かつてはとびきりのレストランで、
贅沢な時間を過ごす人が多かった。
ボクもそんな一人だったし、
レストランに予約を入れることすら難しかった。
有名なレストランのクリスマスイブは7時スタート、
9時スタートと一晩2部の入れ替え制。
クリスマス前の数日間は、
驚くような値段の特別メニューしか
ご用意ございませんって、お店も珍しくはなかったのです。
あぁ、なつかしい。

そうした「クリスマス=とびきりのデートのチャンス」
といったバブルな時代の前の時代。
高度経済成長なんて名前のついた十数年は、
クリスマスといえば会社の仲間で集まって飲めや歌えや。
忘年会ならぬ、忘年パーティーでみんな浮かれて大騒ぎ。
楽しみ方は変わっても、ずっとクリスマスは
外食産業にとって一年で最大の
かきいれどきであり続けてた。

ところが最近。
そういうお祭り騒ぎをみなくなった。
ボク自身、ここ数年、
クリスマスは自分の家でたのしむことが多くなってる。


不景気だねぇ‥‥、という人がいる。
たしかに街の景気はパッとしない。
けれど、こういう考え方もできるんですよ‥‥、
と静かなクリスマスをむかえてぼやくお店の人たちに、
そっということにしています。

プロの手助けがなくても、
自分たちでクリスマスという特別な日をたのしめる人が、
それだけ増えたと思えば
ステキなことじゃないですか? って。

飲食店とは人の生活になくてはならない場所である。
人は食べなくては生きていけない。
そういう大切なコトに関与している外食産業は、
すべての人にとってなくてはならない産業なんだ。
すべての人に必要な産業に自分たちは従事していると、
それを誇りに一生懸命、
飲食店の人たちは日々がんばっている。
たしかにそうで、たしかにそういう努力は尊い。
けれどその一方で、必要なんだと思い込むことで、
誇りがいつしか奢りになってしまうコトもある。
それはすごく哀しいコトだと思うんです‥‥、と。

飲食店は必要悪。
もし、すべての人が
おいしい料理を作ることができたとしたら。
窮屈なレストランより、
居心地がいい家でのびのび食事ができたら。
毎日おかぁさんの機嫌がよくて、
気をつかいながらサービスをしてもらわなくちゃいけない
レストランに、もう行かなくてすむよね! って。
そんな生活をみんなができたら、
飲食店っていらなくなっちゃう。
でもそれって、なんてステキな日本でしょう‥‥、と。

怪訝な顔をする飲食店の人たちにボクはこうも伝えます。
コンサルタントが必要悪なのと同じです。
日本中の飲食店の経営が、
上手くいっているならコンサルタントなんて必要はない。
ボクみたいな人間が、こうして仕事ができてるコトは、
申し訳ないって思いますもの。
社長だってある意味、必要悪かもしれませんよ。
会社にすべての人が自立して、
自分の仕事がただしくできれば、
社長の仕事なんてなくなっちゃう。
それとおんなじ‥‥、って、そう言うと、
たいていの人はそうだねぇって笑ってくれる。

だから家族や仲間が年に一度、
シアワセな気持ちになりたいと思うときに、
かつてのように忙しくないというコトを、
よろこぶココロの余裕を持ちましょう。
そして、それでも「なくなってしまうと寂しいねぇ」って、
お客様から言ってもらえるためには
何をしなくちゃいけないか、考える日にしましょうよ‥‥、
って。

さてかくいうワタクシ。
これからクリスマスというハレの日に、
不義理を働いたオキニイリのお店に
ご挨拶をこまめにする日々がスタートします。
何軒かのお店には、挨拶かたがたお店に出向いて、
とびきりの食事をゴチソウになる。
いけぬお店には電話をかけます。
今年もいろいろお世話になりました。
年末年始はお休みですか?
年始はいつからお店をお開けになるのでしょう。
普段はできない話ができる。
いつもは予約のあてがなければできない電話も、
今の時期なら気軽にそういう会話ができる。
そして最後に「よいお年を」とそえて年末のご挨拶。

まだまだ年末年始に
いろんな外食の機会があろうかと思います。
特に宴会。
あるいはパーティー。
それらをたのしむヒントをひとつ。

宴会は腹ペコで。
パーティーは小腹を満たして行きましょう‥‥、
って僕は思います。
みんなで騒いでお腹いっぱいになることが宴会の目的。
だから「腹ペコ」で行くことがマナー。
でもパーティーは会話や社交を楽しむ場所で、
だから腹ペコだと食べることに一生懸命になっちゃうから。
ちょっとした気遣いが
大人らしさを演出してくれると思います。

「よいお年を」とそえて年末のご挨拶。


2013-12-26-THU



© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN