日本料理は命令形であると同時に、
潔癖症気味な料理‥‥、かもしれません。
味と味が混じりあうことを嫌ったりする。
だから一皿、ひと味。
食べ飽きない程度の量の料理が次々、
テーブルに運ばれてくる。
西洋料理は一皿の上のいろんな味が
混じりあうことをたのしむ料理。
さまざまな色の絵の具が、重なりあって混ざり合い
独特の色合いを生む、
油絵のような料理といえば言えなくもない。
隣り合う色どうしが混ざり合わぬよう、
輪郭線を引くことで
キッパリとした色の世界をつくりだす
日本画のような日本料理とはまるで違った世界観。
マグロを食べていくと、シットリとした歯ざわりに
ちょっとアクセントが欲しくなり、
パリパリ揚がったジャガイモや、
ネットリとしたラタトゥイユと一緒に口に運ぶと、
イメージがかわる。
ナイフフォークで切り分けながら食べるというのも、
西洋料理ならではで、
同じマグロを焼いたものも、
小さく舌にのせるように味わうときと、
大きめに切り、顎と奥歯で味わうときでは、
味や食感の印象がまるで違って感じられる。
西洋料理はキッチンの中で調理が終わらぬ料理でもある。
ナイフフォークは小さな調理道具。
料理はテーブルの上で完成品になっていく‥‥、
つまり、調理人は食べ手と協力しながら
料理を完成させることになるわけで、
料理が非凡で驚きに満ちたモノになるのか、
凡庸なただの料理になってしまうのか、
最後の調理人であるお客様にゆだねられている。
よいお客様は、よい調理人。
調理人としての腕のふるいがいのある料理が
実はメインディッシュというコトになるのです。
テーブルを囲むみんなが互いに理解をしあうための
メインディッシュであると同時に、
厨房の調理人とお客様とが理解をしあうための
メインディッシュでもあるとも言える。
さてさて、そろそろコース料理も大団円。
デセール、そして小さなお菓子の時間となります。
また来週といたしましょう。
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