ボクも沢山失敗しました。
特に母と一緒に旅行をしたときの、数々の失敗話は
今となってはたのしい思い出。
しかも、失敗のたびに
いろんなコトを学んで賢くなっていく。
なにより負けず嫌いの母のコト。
失敗を失敗にしない押しの強さと笑顔で、
お店の人と仲良くなるキッカケにしたりするのです。
さて、先週の「おいしい店とのつきあい方。」は
イタリアンレストランに失礼なお客様が最近増えたと、
シェフから相談された話で終えました。
実はそのシェフが「失礼だ」と憤慨するのと同じコトを、
ボクらは昔、イタリアで、した。
場所はフィレンツェ。
東京でいつもお世話になっていたイタリアンレストランの
シェフに教えてもらったお店で、
注文すべきモノを手帳に書いてもらって
それを見せながら注文をする。
生ハムをまずたのんで一緒にワインをスポン。
薄切りにした生のズッキーニをチーズとオリーブオイル、
それからバルサミコで味わう野菜のカルパッチョ。
産地が近いからこそのおいしさだよね、といいながら、
出てくる焼きたてフォカッチャを食べると
先が続かないよ‥‥、と注意しつつも手が伸びる。
白いんげんの煮込みに
カラスミをすりおろしてもらってハフっ。
ジャガイモニョッキをチーズソースでからめたところに、
胡椒をたっぷりふりかけたもの。
メインディッシュに、フィレンツェ名物の
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナを
たのもうとしたら、
お前たちは本当に食べることができるんだろうな‥‥、
と念を押される。
果たしてやってきたステーキは、
両手を広げたくらいのサイズで、
骨を挟んでサーロインとヒレを同時に味わえる
アメリカ的にはTボーンと呼ばれる逸品。
炭で焼かれた表面ががっしりとして、中はレア。
脂の風味がおいしくて、
明日の朝は寝坊して朝ご飯をスキップしましょ
といいながら、ペロリとキレイに食べ上げた。
甘いモノはどうしましょうか‥‥、
と言われてさすがにお腹はパンパンで、
食後のコーヒーだけにしておきますとお願いをした。
エスプレッソでよろしいですか?
と、そういうサービス係に母。
「カプチーノをいただけないかしら」とニッコリいいます。
さて、ウェイター。
カプチーノのご用意はいたしかねますといい、
エスプレッソが苦手ならば
ハーブティーなどのご用意もございますが‥‥、と。
あら、不思議。イタリアのレストランなのに
カプチーノもできないの?
エスプレッソはあるんでしょう?
ミルクがなくてできないの?
本場のカプチーノってどんなモノなのか、
ワタシ、ぜひ飲んでみたいの。
お願いします‥‥、と。
そういう度にサービス係の顔は曇って、
困ったなぁ‥‥、って空気が漂う。
ちなみに失礼なお客様が増えてきたというシェフが、
嘆く理由が、食事の後にカプチーノだとか
ラテだとかをたのむ人が増えてきた、というコトでした。
そのとき、母は一歩もひかず、
カプチーノを飲ませてくれないんだったら、席を立たない。
帰らないってぐらいの勢いで、呪文のように
「カプチーノ」って言葉をずっと繰り返す。
カプチーノなんてたのむ奴はどこのどいつだ!
と、厨房の奥からシェフがとうとう飛び出してきて、
ひと騒動。
イタリア料理の最後になんでカプチーノって失礼なのか。
そしてこの夜、母は果たしてカプチーノを飲めたや否や。
来週、お話いたします。
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