カカオ100%。
まじっ気なしのチョコレートを手に入れて、
それをそっと口に含んでみたのです。
香りはあくまでチョコのそれ。
焦げたような、奥行きのある香ばしさが
舌の上でユックリ花を開くようにたちあがってくる。
あぁ、チョコレートだ。
甘味と苦味がやってくるに違いない、
と舌が身構えた瞬間、鋭い酸味が舌をつねります。
今まで感じたことのない酸っぱさに
唾液が噴き出すようにも感じ、
一体、舌の上にあるのはナニモノ? と、
その正体を考えしたたかうろたえるほど。
ただ鼻から抜ける香りはずっとチョコレート。
だから口の中にあるのは、
なにものでもないチョコレートであるはずで、
舌は必死にそれがチョコであるであろう証拠を
探りはじめるのです。
するといろんな味がしてくる。
酸味の中にも鋭いトゲトゲした酸味があるかと思えば、
おだやかに持続するやさしい酸味もあったりする。
いつも何の気なしに使っている「酸っぱい」という言葉も、
実はいろんな意味があるんだなぁ‥‥、と
「味わう」というコトがたのしくなってくるのです。
するとビックリ。
酸味の陰から苦味が顔をのぞかせる。
苦味を感じて、やっとこれはチョコかもしれない、
と思って気持ちがホッとする。
ホッとすると、今度は頭がいろんな味をさがしてフル回転。
エスプレッソコーヒーを飲んだときに感じる香ばしさ。
軽い塩味が、その香ばしさをふくよかにして、
焦げた渋味が最初の酸味に
クッキリとした輪郭を与えてくれる。
|