なぜボクと一緒なら安心なの?
と、聞いてみたことがありました。
ボクがまだ小学校に上がったばかりのコトでした。
じぃちゃんはなぁ‥‥、
昔、女の人にもてもてだったんだ。
逢引する適当な場所が今のようには昔はなくて、
そんなときにうなぎ屋はいい場所だった。
1時間半待つというのは、
逢引にとても都合のいい言い訳だから。
だから、一人でうなぎ屋に行きたいって、
ばぁさんにはなかなかお願いできなくて。
シンイチロウと一緒なら、そんな心配がないだろう‥‥、
って許してもらってるというワケさ。
‥‥、と。
子供のときに、その逢引とは一体なにか。
一時間半というのがなぜ都合がいいのか、
まるでわからなかったけれど、
大人になってなるほどそういう使い方を
昔の飲食店がされてたことがあったんだ‥‥、
と、しんみり思った。
ところでおじぃさんは、逢引なしで、
しかもボクを連れて行ってまで
なんで1時間半待って鰻を食べていたのか。
待ってまで食べてくれるモノを作ることができて
調理人は一人前。
待つ時間までたのしいと思える店ってどういうものか。
待ってくれるお客様の気持ちを忘れちゃいけないなぁ‥‥、
と思ってココでぼんやりするんだ。
ぬる燗の日本酒を飲みながら、
いつもおじぃさんはそうも言う。
でもな。
お客様を待たせる価値がある料理を作れたとしても、
絶対待たせちゃいけないのが、
いらっしゃいませというときと、
お勘定をもらってありがとうございますというタイミング。
その両方でお客様を待たせるお店は、
お客様から褒められるどころか叱られる‥‥、とも。
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