寿司は一貫、30gから40gでできている。
シャリはたいてい20g。
そこに10gから20gのネタがのっかって寿司になる。
銀座あたりでは小さめの寿司を握るお店もあるけれど、
それでもせいぜい1割、2割減る程度。
口の中に入れたときの心地よさとか充実感は、
この大きさと重さでなくてはと
長い歴史で決まったのでしょう。
ランチタイムには限ってはシャリが大きめが一般的。
一人前のおきまりは8貫、あるいは10貫です。
つまり重さで240gから400g。
これにたいてい汁がつく。
味噌汁にしても吸い物にしてもお椀1杯、ほぼ200g。
小さめの寿司を8貫食べて、汁を飲んだら440g。
腹は満ちます。
大きめのシャリの寿司を10貫、汁まで飲んで200g。
満腹になるに十分。
これが寿司屋のランチタイムの仕組みです。
回転寿司に「1人前」はありません。
すべてが「ひと皿」単位で決まる。
高級ネタのような例外を別とすれば、回転寿司の皿には
寿司が2貫のっかり、その重量は60gというのが多い。
自然に食べれば女性で6皿、
男性で7皿から8皿でお腹は満ちる。
ただ、ひと皿100円を売り物にしている
チェーンの平均客単価が1000円ちょっと。
つまりほとんどの人は
回転寿司で満腹「以上」をたのしんでいる。
眼の前を料理が流れてくるたのしさ。
寿司だけでなく「別腹」をくすぐる
ケーキやデザートなんかも回ってきたりするというのが
いいのでしょうネ。
ただぼんやりしていると
お客様がとるお皿の数は減っていく。
やってきてくれるお客様全員が
ひと皿、食べることをためらうと売上高の1割が減ります。
逆にひと皿余分に食べてくれれば売上高は8%ほど上がる。
つまり、「ひと皿の攻防」が
回転寿司業界の死活問題であったりする。
ここで思い出すのが普通の寿司屋のランチの商品。
寿司240gに200gの「汁」をつけることで
満腹を作り出しているという工夫。
この工夫を逆手に取れば、お客様はひと皿余分に皿をとる。
回転寿司では水を出さない。
かわりにお茶。
しかも茶葉や粉茶がカウンターの上に置かれて、
それを入れた湯呑にお湯を注いで作る。
お湯は寿司が回ってくるベルトの下の蛇口から出る。
そのお湯の熱いこと、熱いこと。
そもそも寿司屋のお茶は熱い。
けれどそんな寿司屋のお茶もぬるいと感じるほどに
お湯は熱くてすぐには飲めない。
ふうふうしながら飲んだとしても、
口を潤す程度の量で、
絶対ゴクゴクは飲めないようになっている。
例えば今の時期。
外は暑いです。
汗をかいてお店に入って、
グラスにお水が入って出てきたといたしましょう。
ゴクゴク飲みます。
飲んで下手したらお替りまでもしたくなる。
小さなグラス1杯分の水は
4貫分の寿司に匹敵する量です。
2皿減ります。
大変です。
ベルトの下の蛇口から出てくるお湯が
熱湯である理由は他にもあるでしょう。
例えば、生水が流れていたら
衛生基準を保つことがむつかしくなる。
あるいは昔から、魚の脂を洗い流して
口の中をさっぱりさせるために熱くしているんだ‥‥、
と言われてもいる。
でももっと脂で口がペタペタになる
焼肉屋さんのお茶は決して熱くない。
そう考えれば、食べてくれればくれるほど
売り上げが上がる店にとって水分は敵。
けれど食べ放題もお店にとっては、
水分をいかに味方につけるかが成否を決める。
オーダーバイキングの焼肉における水分‥‥、
それはなに?
来週、答えを出しましょう。
2018-08-09-THU