最近、インバウンドの人たちでにぎわいはじめたという
お蕎麦屋さんで聞いた話です。
海外からの観光客。
特に中国からのお客様が
ペットボトルの飲み物を当たり前のように持ち込まれる。
しかもテーブルの上に置いて
ときどきそれらを飲んで喉を潤す。
日本でそれはバッドマナーですから‥‥、
と、たしなめていたのだけれど、
先日、考え方を改めさせられるような
出来事があったのだという。
その日もテーブルの上に
ミネラルウォターのペットボトルを置いた
中国からのお客様がいらっしゃった。
年の頃、60半ばといったところでしょうか。
お子さんなんでしょう‥‥、
英語を流暢に話す若い女性が一緒の二人連れ。
ペットボトルの飲み物はお飲みになりませんように‥‥、
という意味も含めて
「こちらのお水をお飲みください」
と氷をたっぷり入れた水の入ったグラスを出した。
すると申し訳無さそうな顔をして、
「氷の入った水は体に悪いので飲む習慣がないのです」
と、ペットボトルを差し出した。
触ってみて‥‥、
と顔が言っているようで、触ってみると生暖かい。
常温の水を飲むために
ミネラルウォーターのペットボトルを
携行しているというのです。
ならばと代わりに熱いお茶を出すと、
たのんでもいないのに‥‥、と固辞される。
サービスだからというと、
グリーンティーでなく
ほうじ茶かプーアール茶があれば
お金を払って飲むからと言われて、
サービスとは一体なにかを
考えさせられる出来事だった‥‥、と。
日本のお店はサービス過剰なのかもしれない。
そしてそのサービス過剰は
別に飲食店に限ったことではないのでしょうネ。
例えば百貨店の地下食品売り場なんて、
サービス過剰の塊です。
ラップで厳重に包まれた食品を、
ひとつひとつ丁寧にビニール袋に入れて
テープで留めていく。
ものによっては保冷剤を中にいれ、
サイズの大きなビニール袋に再び入れて
紙のショッピングバッグにおさめていく。
馬鹿らしいほどの丁寧さに、
ボクはいつもビニール袋でくるむことも
保冷剤を入れることも必要ありませんからと辞退する。
それでも、本当にいいんですか‥‥、
と心配そうな顔をする。
中には「環境のことをお考えだからですか?」
なんてことを言う人もいて、
そういう人には
「いえ、皆さんのお給料のことを考えて
無駄なことをしないですむよう心がけております」
と応えるようにしている。
言われたほうは呆気にとられて、
あぁ、嫌われたなと思うけれども、
いつもそうすることにしている。
百貨店がうなるほど利益をだしているのであれば、
そんな心配をボクはしない。
なんだったらゴミ捨て用に余分に
ビニール袋をいただけませんか‥‥、
っておねだりするに違いない。
ちょっとでもコストを削減しないと
利益を出すことがむつかしい百貨店が、
なんでいまだにこんなとぼけたことを
し続けているんだろう‥‥、
と不思議で不思議でしょうがない。
今まで当たり前にやっていたことをしなくなることで、
叱られることがあるのでしょう。
かといって値段をあげるわけにはいかず、
それで昔通りがまかり通っているようなコト。
飲食店でもたくさんあります。
冒頭で中国の人が無駄なものはいらないと言った
お水やお茶。
テーブルの上にたっぷり用意されている
紙ナプキンや紙おしぼり。
それって本当に必要なんだろうか‥‥、
って思うようなものが
サービスと称して当たり前のように提供されてる。
割り箸のようなものは料理を食べるのに必要なものだから
用意されれば当然使う。
けれどストローはほとんど使わない。
だってグラスに直接口をあてて飲む飲み物と、
ストロー越しに口の中へ飛び込んでくる飲み物は
まるで味や香りが違う。
だからストローは使いませんと、
そのままお店の人に手渡し、返す。
紙おしぼりも余程指を汚すような食べ物でない限りは、
使わない。
いりません、と手渡すときに
「これはチップのかわりなんだ」と思うことにする。
するとちょっと気持ちが楽になるのです。
小さな応援。
また来週。