おいしい店とのつきあい方。

085 飲食店の新たな姿。その5
期待はずれの10日間?

ちょっと前の話になります。
今年のゴールデンウィークの話。
例外ずくめの連休でした。
4月27日の土曜日からはじまって、
5月6日までの10日間。

飲食店の人にとっては悩ましい10日間でした。
いつものゴールデンウィークならば
忙しさのピークは前半の29日と
後半の3日、4日、5日の2か所。
そこに狙いを定めて人員配置をすればいい。
ところが今年は10日も続く。
例年のデータや経験が
まるで役に立たない日々だったのです。

売り上げ計画をたてるにも、
人員配置の計画作りをするのも、
前年の例を参考にするからこそ精度があがる。
それが、どこのお店も、
今年の計画はあってないようなものでした。
とりあえず、10日間、
いつお客様が来てもいいようにと
アルバイトもパートもかき集められるだけかき集め、
臨戦態勢をびっちりとった店が多かった。

結果はどうでしたか?
と日本各地の飲食店の人に聞いてみました。
ほとんどの人が、前半は忙しかったけれど、
後半は普通の週末くらいの忙しさの日が
ダラダラ続いたような感じだったんですよ‥‥、と話す。
つまり、期待はずれの10日間、
というのが一般的な状況でした。

具体的に説明すればゴールデンウィークスタートの
27日、28日はほどほどの忙しさ。
そしてどの年のゴールデンウィークも同じで、
29日はお客様が湧いて出るがごとき勢いで忙しかった。
ゴールデンウィークの初日2日は連休準備で
家の用事をする人や、
帰省のために移動する人たちが増えるから
外食に心が向かなくなるのはしょうがないこと。
それら連休をたのしむ準備ができて
気持ちが一段落するのが29日で、
その日は確実に忙しいのです。

30日から2日までの3日間は仕事で連休も一休み。
その間に営業の体制を立て直して
ゴールデンウィークの後半へと突入するのが例年なのに、
今年はそれがカレンダー上、「休めない」。
そこでみんな苦しんだのだけど、
「休めない」のではなく
「休まない」だけなんじゃないかと考えた人たちがいる。

だってそもそもゴールデンウィークというのは
仕事を休む日々であって、
飲食店は休んじゃないけないという規則が
あるわけじゃない。
公共の交通機関のような会社は
確かに休むわけにはいかないだろうけど、
飲食店は私企業です。
休みたいときに休んでもよい。
ならば連休の間、
どうせ忙しいのか忙しくないのかわからない
5月1日や2日に休みをとればいいんじゃないかと、
実際、休みをとった会社がある。
それも1社や2社じゃなく、
日本各地の少なからぬ飲食店が
連休中に休みを取るという決断をした。

スゴいことだと思いました。
ずっと飲食店で働くということは、
人が遊ぶときに遊べないということなんだと思われていた。
しかも書き入れ時のゴールデンウィークです。
休みがとれるなんて夢のまた夢だった。
その夢がかなったのですから、
働く人たちのモティベーションはあがりました。

売り上げはどうなったんですか?と聞くと、
スタッフが喜んだばかりでなく
実は後半の売り上げが
いつものゴールデンウィーク並によかったんです‥‥、
という会社がほとんどだった。

いつ行ってもあいている店は、
ワザワザ行く必要のないお店。
そう思われてもしょうがなく、
あえて連休途中で休んだお店には、
後半にお客様が集まった、
というコトだったのでしょう。
なによりお客様から
「こんな稼ぎ時に休みをとる会社ってやさしい会社」、
「従業員思いの会社で働けてよかったネ」
‥‥、と褒めてもらえることさえあったというのです。

風向きが変わったのかもしれません。
かつて、連休の合間や年末年始に
まとめて休みをとるとお客様から、
「儲かってるからそういうことができるんだよね‥‥、
ならもっと安くすればいいのに」
なんて批判を受けることが多くて、
お店の人たちはビクビクしてた。
いつもの一生懸命の努力が
こういうときに認めてもらえるようになったとすれば
すばらしいこと。
日本の飲食店もそろそろ無理せずできることで
お客様を喜ばす努力をしてもいい時代。
なによりまず、お客様の好意を信じる力を
持たなきゃと思ったりした。
いい勉強でした。

2019-06-20-THU