片手で食べることを前提に作り出された
サイズと重さのハンバーガーを売る
お店であったはずのマクドナルドに、
なぜ食べづらいビッグマックが導入されたのか‥‥?
お腹いっぱいになるためには
ハンバーガーやチーズバーガーでは小さすぎるから、
大きなサイズの商品を作る必要があった、
というのが理由のひとつ。
ただお腹をいっぱいにするだけであれば、
ハンバーガーやチーズバーガーを
2個、3個とまとめて買って食べてもらえばいい。
しかもその食べ方ならば、
そのときどきのお腹の空き具合にあわせて
食べる量を加減することができるから、
ビッグサイズの商品をひとつ作るより合理的。
何しろ、人ひとりひとりの胃袋の大きさは違う。
お腹いっぱいを感じる水準も異なっていて、
どんな飲食店も「1人前の量」の定義に苦労する。
だから、そのときの空腹具合に合わせたり、
そのときに求めるお腹の状態に合わせて
自由自在に量を選ぶことができる
マクドナルドのスタイルは
とても良いスタイルであったはずです。
にもかかわらずビッグマックを作って売った。
理由はライバルの戦略にありました。
業界2位のバーガーキング。
同じく3位のウェンディーズ。
どちらもマクドナルドに対抗するために、
同じような戦略をとった。
マクドナルドのハンバーガーは「おやつ」と同じ。
「食事」をしたければ
うちのお店のハンバーガーを選ぶべきです。
‥‥、とそんなメッセージ。
どちらも大きく、主力商品は300g近く。
大人の晩ご飯としても十分なボリュームですと
マクドナルドとの差別化をアピールすることで
人気を獲得した。
さてこのライバルにどう対処するか。
コンセプトとシステムに忠実であろうとすれば、
ライバルのことは無視して
ハンバーガーやチーズバーガーを売り続けること。
同じサイズのモノを作り続けることは効率のよい仕事です。
しかも小さくて分厚くないパテは、
早く焼き上がるというコトでもある。
何を注文しようか迷わなくてすみ、注文をとるのも簡単。
しかも食事は1日3回、
でもおやつならば一日何度でも食べることができる。
だから、食事を売るよりおやつを売るビジネスモデルは
ライバルのそれよりずっとすぐれている。
そう50年以上前のマクドナルドが思ったら、
今のマクドナルドはなかったでしょう。
彼らはそのときこう思ったのです。
おやつよりも食事の代金は確実に多い。
つまり客単価が高くなる。
なによりライバルに、
自分たちが対応できていない消費者のニーズを
奪われてしまうことは勿体ない。
それはとても悔しいことだから
お腹いっぱいを目指した商品を次々作ろう。
ビッグマックにクォーターパウンダー、ダブルバーガー。
パテの量を増やしただけでなく、
高級ラインのアーチデラックス、
あるいはサブウェイの人気に乗じた
サンドイッチスタイルのマックDLTと、
「食事に適した商品」を次々開発。
そして導入。
けれどそれらのほとんどは、
他のチェーンの主力商品の魅力に敵わず
短命商品になってしまう。
先日、ひさしぶりにマクドナルドの
チーズバーガーを食べてみました。
おいしいかったなぁ‥‥。
手のひらにすっぽり隠れる大きさにフッカリとしたバンズ。
薄いながらも肉の旨味や風味を存分に感じさせてくれるパテ。
たっぷりのケチャップソースにピクルスと
必要なものはすべてあるけど、余計なものは何もない。
店が増えるに従ってメニューは増える。
メニューを増やせば多くのお客様の
多様なニーズに対応できるようになるから店が増える。
その繰り返し。
季節商品にキャンペーン商品。
どれも上手に出来た商品。
けれど食べ続けてもなおおいしいモノは、
単純で余計な工夫をしないモノ。
飲食店って、正解は最初に出ている商売で、
最初の答えが受け入れられたから人気もでるし大きくもなる。
その「正解」でできる規模でとどめ、
拡大をやめることができればいいんだとわかっていても
そうはならない。
なにより、他のお店が相手にしているお客様や、
自分たちと違った方法で手にしている売上を
ほしくてほしくてしょうがなく、
さまざまなものを独り占めしようとする。
なんだか強欲。
お腹いっぱい以上に食べると
後で苦しくなってしまうように、
必要以上の売上でお腹いっぱいにしてしまう商売って
本当は永続きしないんだよな‥‥、ってしみじみ思った。
お腹いっぱいにしない粋。
お腹いっぱいにならない商売。
さて来週に続きます。
2020-04-02-THU