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糸井 |
横石さんとは、昨年、上勝でお会いして以来です。
「いろどり」は、あいかわらず
新聞をはじめ
いろんなメディアで紹介されています。
やっぱり、みんなの関心が集まるんですね。
それはきっと横石さんのところで
葉っぱを採っているおばあちゃんたちが
いきいきしてるからでしょうね。
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横石 |
ええ。みんな、がんばってますよ。 |
糸井 |
光ってますね。 |
横石 |
ほんまに。
80代後半にもなってるのに
家の中心になって
働いてる人もおるから。 |
糸井 |
都会の老人は
「退職後は年金暮らし」
「田舎に移住してのんびり」
なんて言っている世の中です。
ところが、横石さんの上勝は
「田舎」がそもそも元気なものですから
そんな話にもならないでしょうね。 |
横石 |
リタイア後の移住って
いまもまだ、
やってる人がおるみたいやね。 |
糸井 |
「退職金と年金があれば
なんとかやっていけるだろうから」
というところに発想があるんでしょう。
「暮らしていける金があるんだから
儲からなくてもいい」
と、はなから思っている。
だけどね、そうなると
追いつめられるだけなんですよ。
そこにはあんまり、気づかないんです。 |
横石 |
退職後に移住をした人は、
だいたい3年から5年で
もとの場所に帰ってくると聞きます。 |
糸井 |
移住した人が
観光タクシーの運転手になって、
これから住みたい人をさらに案内するという
循環があったりして。 |
横石 |
うーん‥‥何なんでしょうね。
沖縄とか、すごく移住希望者が
多いっていうんだよね。 |
糸井 |
そうらしいですね。 |
横石 |
おそらく「リタイヤ」という発想自体が、
日本人に合わないんだろうなぁ。 |
糸井 |
うん。そうだろうね。 |
横石 |
仕事したいんでしょうね、
みんな。 |
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糸井 |
絶えず何かが入って来るからこそ
毎日が、活力あるものになっていくんでしょう。
持っているものが減っていくだけの日々に、
人間は、耐えにくいですよ。 |
横石 |
ああ、なるほど、そうですね。 |
糸井 |
やっぱり、日銭が入る人は
元気です。
煙草屋をやってるおばあさんは、
金額は関係なく、
300円でも500円でも入れば、
今日という日を生きていけます。
だから、店を開けていさえすれば、
生きていけるんですよ。 |
横石 |
そのことがすごく大事だと
ぼくはほんまに、思っています。
コツコツコツコツいきゃいいんです。
「ヒットをつないでいくんだぞ、
ホームランなんか打てっこないよ、
毎日コツコツいこう」
ぼくは、上勝のおばあちゃんたちに、
いつもそう言っているんです。 |
糸井 |
「毎日」の強さが
おばあちゃんたちを引っ張っていく。
先行投資するのもいい、
未来のビジョンを描くのもいい。
だけど、それは「日銭」とは別に
やらなきゃだめですね。 |
横石 |
うん。日銭ってすごいです。
ほんまにすごい。
1日3000円でもコツコツいけば、
たいしたもんですよ、ほんまに。 |
糸井 |
このところ、若い人でも
「田舎暮らし」に憧れる人は多いです。
例えば、石垣島に移動して、
釣りして魚食って暮らせればいいなぁ、なんて
思うかもしれないけど、
簡単なものじゃない。
もしかしたらそのうち
子どもが生まれちゃうかもしれないし、
ミルクは海では釣れないもんね。 |
横石 |
いつでもそこに
生活が待っていますからね。 |
糸井 |
日本の生活のリアリティがある、ということが、
ビジネスモデルやライフプランを考えるときに
わからなくなっているのかもしれない。
だけど、もうすぐみんなが、
地に足をつけて「わかる!」というときが
来るような気がするんです。
(対談は明日につづきます) |