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糸井 |
「いろどり」の話を
システムとしてとらえると、
おそらく、伝わらないでしょう。 |
横石 |
ええ。ほんとうのところは、
伝わりませんね。 |
糸井 |
こんなことを言ってるけど、
僕はビジネス書をものすごく読むんですよ。
読むと「ああ、なるほど」と思うんですが、
そのことにドクドクと血が流れることは少ない。
実際に血が通うまでには時間かかるし、
わかってるつもりで動いていても
ほんとうはわかんなくて、ということの
くり返しです。
でも、「いろどり」も「ほぼ日」も
いわゆる大きな成功は
していないのかもしれません。
実のところは、振り出しでスタート、
というくらいでしょう。 |
横石 |
まさにそうです。
だけど、やっぱり楽しければ
行くんですよね。 |
糸井 |
回り道はするかもしれないけど、
必ず何か、答えは出ると思います。
答えが出ないのは、
きっといちばんいい方法を探すから
なんでしょうね。
うまくいった人たちというのは、
「効率的な方法じゃなかった」
ということを知ってる人ばかりです。 |
横石 |
そうですね。
一生懸命やればいい、ということを
言いますね。 |
糸井 |
どんなテクニックがあるにせよ、
一生懸命やんないとできないでしょうね。
気楽なことばっかりじゃないし、
ある意味で、孤立無援ですから。 |
横石 |
おっしゃるとおりですね、
安全保障はないです(笑)。
ぼくは、葉っぱ一枚のことを
いつも考えているようなところがあります。
葉っぱは、すごくバリエーションがありますから
奥深いし、おもしろいですよ。
人とお話ししていても、
いろんなものを見ても、
次から次へと、浮かんでくる。
例えば「文字の木」と呼ばれる木の葉っぱは
字を書くと裏から透けて見えるんですよ。
これはおもしろい、
いらっしゃいませとか、こんにちはとか、
アレンジしてあげるといいかなぁ、
なんて思ったり。
月桂樹の葉をしおりにして本にはさむと、
開いたときに月桂樹の匂いがぱっと出て
すごく喜ばれるし。 |
糸井 |
いろいろ思いつくねぇ(笑)。
毎日、葉っぱのことばかり考えてるんですね。 |
横石 |
緑の羽根の募金も、
鳥の羽根のかわりに
それぞれの県の木の葉っぱを
胸につけることにしたらどうなるんやろう、
とか、考えます。 |
糸井 |
ああ、なるほど。
緑化ですから、
そのほうが主旨に合っていますもんね。 |
横石 |
糸井さんがいまお茶を飲んでいるコップの下にも、
葉っぱをさっと敷くと、
ひとつの場面になる。
ぼくだけじゃなくて、きっと日本人は、
何かしら自然のものを取り入れるということが
好きなんでしょう。 |
糸井 |
この起源は、そもそもどこなんだろう。
韓国料理のお皿には、
「食べない葉っぱ」はないですよね。 |
横石 |
ないですね。中国料理にもない。
皿に乗るのはほとんどが食べるものだけです。 |
糸井 |
食えないもので、食を飾るもの。
これは、興味がありますねぇ。 |
横石 |
日本のいちばんのよさは、
料理だという人もいます。
京都なんかは特に、紅葉狩りにしても、
すごい文化やね。
日本の料理には、何ていうのかな、
食器にしても、温度にしても、季節感にしても
文化的にいい部分がたくさん
出ているような気がする。
そう言えば、ぼくらは、この冬から、
おせちの折り詰めに入ってる
プラスティックのハランを、
生の、本物のハランの葉に変えるんですよ。
2〜3年ごしでやっと開発ができて、
この年末に、スタートします。 |
糸井 |
あの、おかずとおかずの間に挟まってる、
緑のビニールのぎざぎざした仕切りですね。 |
横石 |
ええ。あのプラスティックのハランは、
折り詰めを開けたときに、
みんな、最初に箸で挟んで引っこ抜きます。
それほど邪魔ものなんよ、あれは。
あれほど嫌がってるのに、
なぜ入れるんでしょうね。 |
糸井 |
あの色がないと、折り詰めが
まっ茶色になるからかな。
ハランの葉はどうやって加工するんですか? |
横石 |
葉をプレスしてから、
金型で切り抜きます。
ちょっと先が痛んでいる葉も使えるんです。
全ての葉が使える。
これは、大きいです。 |
糸井 |
捨てる葉がなくなっていくんですね。 |
横石 |
そういうアイデアが出てくると、
どんな葉っぱ一枚でも出番がある。
人間もそう。ばあちゃんもそう。
どんな状態の中でも
活かせる部分があるということを
大事にしていきたいんです。 |
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糸井 |
横石さんの、そのハランの仕事も、
「あれが邪魔だな」という目線から
話がはじまってるわけですね。 |
横石 |
そう。「あれを変えてやれ」じゃなくて、
「みなさんは、そんなに邪魔ですか」
というところから生まれています。 |
糸井 |
それもなんだか、ふつうとは
順番が違う気がするんです。
ビジネスをやるときは
あれがビジネスチャンスだ、と
普通に考えると思うんですが、
ビジネスチャンスより
みんながプラスティックのハランを
邪魔に思っている姿が前にあるんですね。 |
横石 |
フタをあけたとたんに箸で取る、
捨てるときにゴミの分別が不便、
そういう、ちょっと嫌がってる気持ちが
ハランを取るときの人の顔に出てますから。 |
糸井 |
うん、そうなんですよね。
どっかやっぱり、順番が違うんです。
お互いに、こういうところからできる
ビジネスの話を
これからも、やっていければうれしいです。 |
横石 |
はい、ぜひ、
よろしくお願いします。
(おしまい)
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