横石
自分に自覚があって
こういうビジネスをやろう、と
わかっていたとしても、
実際にできあがるまでには時間がかかります。
「いろどり」は20年以上かかりました。
そのかわり、回り出してからのスピードと大きさは
すごかったです。
一人勝ちしないことによって
早く広がったという一面もありましたが。
糸井
「ほぼ日」のテーマもきっと
そのあたりだと思っているんです。
横石さんは「いろどり」そのものの仕事はきっと
ご自身ですべてをやったほうが儲かっただろうと
おっしゃっていましたね。
横石
うん。
そこはそうなんだけど、
それだとおもしろくない。
糸井
「おばあちゃんが儲かる」って
どんどん言うのもどうかと思うけど(笑)、
でも、ばあさんが儲かる、儲かるって、
なんであんな平気な顔して言えるのか、
改めて気づくことがありましたよ。
横石
あの年代で、あんなに自信を持った顔つきで
テレビでどれだけの人が見るかわかっていて、
「儲かる」という言葉を、なぜ言えるのか。
あの年代の人たちは、普通は言わないですよ。
それを、あっけらかんとパッと言うけんね、
「儲かります」って。
それに、昔はおばあさんに仕事をさせると、
「あんなばあさんにまで仕事させて」
という感覚もありました。
田舎の人は、すごく体裁を言いますから。
糸井
ひねくれた人が見てたりすると、
金の亡者だなんて、思ったりするかもしれない。
横石
そんなことを言う人はいます。
でも、あれだけ自信持って言われると、
かえって気にならなくなるみたいですね。
糸井
うん、それは、大人ならわかることです。
商業主義やビジネスを「金儲けだ」と
手を汚さずに批判していることが、
結局いろんなことにブレーキをかけちゃう。
でね、ぼくの持論なんですが、
ビジネスはいったい何かというと、
「仕事を作ること」なんです。
横石
うん、うん、
そこはぴったりぼくと同じです。
糸井
その仕事がいくらになるか考えるのは、
あとでもかまわないんですよね。
みんながほんとうに悩んでいるのは
仕事を作れないことです。
雨が降ったら仕事にならない仕事を
持ってる人がいるとしたら、
「雨」という条件の仕事が作れるかもしれない。
横石
それぞれの地域が自ら
仕事を作れるようになっていけばいいと、
ほんとうにそう思います。
しかし、そこに発想が行かない。
なぜか、行かないね。
「与えられる」「向こうから仕事をもらう」という
他力的な思考が強いからかもしれません。
糸井
横石さんがどこまでどう計算してるのかは
わからないですが、
後でわかることと前もってわかっていることが
ありませんか?
横石
それは、両方あります。
お金の問題は、
やりながら、すごく考えました。
でも、ああやってみんなが喜ぶ
事業になっていったことについては、
これでよかったんだと思います。
「ここが痛いあそこが痛い」と言っている年寄りと
「別に息子から小遣いもらわんでもいい」と言う
年寄りがいるのとでは、家の中がぜんぜん違うから。
糸井
ぼくは、何かあるごとに
考えていくことが多いから、
自分でもわからないことが
いっぱいあるんだと思います。
でも、昔からよくわかっていたこともある。
ほんとうに、その両方ですね。
効率化などという考えは、
けっこう後からやって来るほうで。
横石
そりゃそうです。
今の社会で、糸井さんのおっしゃった
その部分がいちばん大事なとこやと思います。
わからないことも、わかってることもある。
形を作って形だけの中でやろうとしてることとは、
きっと違うんですよ。
糸井
違いますね。
ところで、効率も後から考えるけど、
そもそも、ルールだって
そうじゃありませんか?
横石
ああ、きっとそうですね。
糸井
例えば、お風呂屋さんの真ん中の番台に座ってる人は
男だったり女だったりしますけども、
あの人は、ルールでは括れない位置にいます。
あの人が男であっても女であっても
みんなはいないことにしてる。
だけど、絶対見てますね、あの人は。
横石
見てますね(笑)。
糸井
そのあたりのことは、うまく文言にできないんです。
ぼくは、そこが仕事の
いちばんおもしろいとこじゃないかと思う。
人間がいきいきとしていられるのは
たぶんルールのない場所なんじゃないかな?
家にいるのがどうして楽しいかというと
家にはルールがないからだと思います。
横石
つまり、何かを取り締まるための
答えはないということやね。
でも、答えがないところに、おもしろみがある。
糸井
人の中に罪の全てが入ってる。
それがわかる人が、一生懸命やると、
きっと「仕事」ができるんですよ。
横石
そうですね。
最初からルール的に動いてしまうと、
おそらくうまくいかないでしょう。
糸井
ルール的なものを
望んでる人はたくさんいます。
それを仕事にしている人も、
自分のアイデンティティを
作ってる人もいる。
だけどそれだと、ばあさん、動かないよね。
横石
動きませんね。
そこは見えない、ほんとに見えないところなんです。
その部分をひじょうによく考えて
やっていこうとしているのが
糸井さんとぼくは同じですね。
(明日につづきます)
2007-08-23-THU