横石 |
最近すごい思うんは、
みんなの家族の仲がよくなってきたな、
ってことです。
自分の仕事を持って、
自立していくことが原因かなあ。 |
糸井 |
きっと、家族の中に
邪魔な人がいなくなるからでしょうね。 |
横石 |
うん。そうかもね。
家の中でおじいちゃんおばあちゃんの
存在感が強くなるほど仲よくなる。
大きくなった子どもたちが、
昔やったら土日にも帰ってこなかったけど、
いまは、たのしいから
しょっちゅう帰ってきて、
いろんな手伝いをしています。
日曜日なんか、農協におったらもう
孫車(まごしゃ)ばっかりやわ。 |
山田 |
へーーーー! 孫車!
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横石 |
きれいなお姉さんのような
格好したような子がおって、
どこのかいらし子やろなあ、と思てたら、
車の後ろに、ばあちゃんの手伝いして
「いろどり」摘んできたん載せて、
こっち見てニコーッて笑て
「これ! お願いしまーす!」て言いよる。
そんなんが増えてきた。
それでお小遣いもらってスーッと帰る。 |
糸井 |
最高のかたちですね。 |
山田 |
お小遣いをあげるほうも、
うれしいですし。 |
横石 |
おばあちゃんも張り合いになる。
でも逆に、孫かて、おみやげを
買ってくるんよ。
菖蒲さんとこにある人形、見ました?
ああいうものを
「ばあちゃん!」て孫が
買ってきよる。
似とるやろ、って。そっくりや。
似とんなあ。
もう、そらね、両方がうれしいてね。
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糸井 |
おじいちゃんおばあちゃんが協力し合って、
ふたりでいっしょけんめやってる。
それを、子も孫も、うれしいんだね。 |
横石 |
そうです。
だから、土日にぼくらがこのあたりを回っていると、
帰ってこられた息子さんたちにお会いして、
「ほんまにありがとうございます」
と手を合わされるときがあります。
「親がこうやって、
老人ホームや病院に行かずに
ぼくらに小遣いまでくれて、
ほんまに感謝してます」
って、言うてくれます。
ほんま、これは、うれしいです。
ありがたいなと思います。
みなさん、親(おばあちゃんたち)の前では、
ぜったいに、そういうことは言わないですけどね。
こっそり言ってくれる。
じゃ、日も暮れてきたし、
針木のばっちゃんとこ、
あいさつだけ、行きましょうか。 |
菖蒲 |
ありがとう。また来てな。
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山田 |
ありがとうございました!
さようなら。 |
糸井 |
またね!
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横石 |
ばっちゃんおるかなあ。 |
糸井 |
針木さんは、
この町の松坂投手みたいなもんだよね。
お店屋さんをやってるんだけど‥‥
あ、ここ、ここ。
「ただいま! おばあちゃん」
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針木 |
寄ってくれるやろと思てな。
用意しとったんよ。
ゆず食べるかな?
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糸井 |
食べる食べる!
独り占めするよ。
‥‥こちらは、娘さん?
お嫁さん? |
孫嫁 |
孫嫁です。 |
横石 |
ここは、4世代おるからね。 |
ひ孫 |
糸井さん、サインください。
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山田 |
サイン帳ですね。
ベッキーさんのサインもしてありますよ。 |
ひ孫 |
石塚君のサインもあるよ。 |
糸井 |
ほんまや。
こんなの持ってる人いないよ。
おばあちゃんのおかげや!
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横石 |
80超えてキラキラしとるよね、針木のばあさん。
ものすご稼ぐんよ。 |
山田 |
いやぁ、みんな仲いいですね。 |
横石 |
孫娘さんなんか、
市内のバリバリの現代っ子やけど、
そらごっつい「ばあちゃん、ばあちゃん」言うてね、
ありがたがって。
あんなにおばあちゃんを立ててる家なんて
なかなか少ないですよ。 |
糸井 |
なんやかんや言ってね、
人はやっぱり強い人についていきたがるんですよ。
悲しいけれどそうなんですよ。
「この人はいつか作家になるから
信じてついていく」
とか、そういうことは、
実際はあんまりないんですよね。 |
横石 |
ははははははは。 |
山田 |
強くなったおばあちゃんがいることが、
家族も町も仲よくしていくんですね。
ここに来ることができてよかったです。
ありがとうございました。
帰りがけ、
上勝町のゼロ・ウェイストアカデミーに寄って
古くなった浴衣の生地でつくられた
ふんどしを買って、
ごきげんに東京行きの飛行機に乗った糸井重里。
山田真哉の鞄には
菖蒲さんにいただいたハランが、
同行した撮影スタッフの鞄には
山桃の実がおみやげにどっさり入っていました。
美しい水と空気と山と葉っぱに満ちた山郷に住む
笑顔で、強い、稼ぐおばあちゃんたち。
どこを触れても気持ちのいいこの町のなりたちは、
横石さんというひとりの人が
そこに住む人たちといっしょになって、
何年にも渡ってつくりあげたもの。
そのことを、それぞれに
う〜んと深く考えながら
一行は青山に戻ったのでした。
今日で「いろどり」の連載はおしまいです。
みなさんの身近なところでも、
あたらしい「いろどり」が
はじまっていくのかもしませんね。
ご感想をどうぞpostman@1101.comまで
お寄せください。
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