糸井 | 白岩さんは、おもにぼくのことを なんの人として知ってらしたんですか? |
白岩 | 知ったというか、ぼくがいちばん最初に 糸井さんの作品に会ったのは 『MOTHER』と『MOTHER2』なんです。 |
糸井 | ああ。はい、はい。 |
白岩 | そのころはぼく、 糸井さんの作品だとは知らなくて、 純粋に、商品として出会ったんです。 そのあとに、広告の勉強をはじめてから きちんとお名前を知って、「ほぼ日」も 読ませていただくようになるんですが、 いちばん最初は『MOTHER』だったんです。 |
糸井 | ああ、そうですか。 |
白岩 | はい。すいません、そういう感じで。 |
糸井 | いえいえ(笑)。 あの、ぼくにとっての 『MOTHER』っていうのは、 ウソついていい場所っていうか、 「考えたまんま書いていい」っていう 特別な場だったんですね。 |
白岩 | 考えたまんま書いていい、というと。 |
糸井 | つまり、ぼくの本職は コピーライターだったもんですから、 仕事の性質上、「考えたままを書いていい」 っていうわけにはいかないんです。 |
白岩 | ああ、そうですね。 企業の発注を受ける立場ですから。 |
糸井 | そうなんです。 もちろん、思ってもないことを いやいや書くわけじゃないんですけど、 「ちょうどいい場所を探して書く」 みたいな感じで取り組むことになるんですね。 ほんとのことだけを言うと通じないし、 考えを徹底的に突き詰めていくと、 なにも書けなくなってしまうから。 |
白岩 | ああ、なるほど、なるほど。 |
糸井 | そういうときに ロールプレイングゲームというものに出会って、 思ったままそこに放り込んでいけるっていうのが とってもうれしかったんですよ。 それは、純粋に自分が思ったことを 表現できるというだけじゃないんです。 たとえば、あの、ぼくは ずいぶん前に、そそのかされて 小説を書いたことがあるんですけど。 |
白岩 | 「そそのかされて」(笑)。 |
糸井 | 「書けますよ」って言われてね(笑)。 なんていうか、こう、 「飛んでみな」って言われたみたいなもんで。 |
白岩 | ああ、やっちゃえと。 |
糸井 | うん。で、一度だけ書いたんですけど、 書いている最中、 まったくたのしくなかったんですね。 |
白岩 | ああ、そうですか。 どうしてでしょうね。 |
糸井 | やっぱり、ああしよう、こうしようって 思いついたときがいちばんたのしいんです。 |
白岩 | あ、ま、それはそうですね。はい。 |
糸井 | で、それを書くとなると、 めんどくさくてしょうがない。 |
白岩 | 作業になるっていうことなんですか? |
糸井 | そうですね。 で、もともと広告の文章って、 小説にくらべればずいぶん短いもので。 しかも、チームでつくるものですから、 「こんなこと思いついたんだよ」っていう種を ほかの人に助けてもらいながら 転がしていけますからね。 |
白岩 | そうですね。 |
糸井 | もともと、ひとりで全部やるっていうのが、 あんまり好きじゃないんでしょうね。 |
白岩 | あー、そうか、そうか。 |
糸井 | ‥‥こんな、ぼくの話をしてていいんですか? |
白岩 | もちろんです(笑)。 |
糸井 | だから、まぁ、『MOTHER』というか、 ロールプレイングゲームって、 すごく平凡な「愛してます」 っていうようなセリフが仮にあったときに、 ぽんとそれを放り込んで 活かせると思ったんですよ。 |
白岩 | 響き方が変わるという意味で? |
糸井 | そうそう。 小説の中で「愛してます」って書くのは すごくたいへんなわけで。 |
白岩 | そうですね、難しいかも。 |
糸井 | 簡単じゃないですよね。 愛してますとしか言いようがないんだ、 みたいなことをまわりからつくりあげて ようやくその平凡なセリフが 言えるか、言えないか。 |
白岩 | うん、うん。 |
糸井 | やっと言えたとしても、その平凡なことばを なぜわざわざ書くのかっていう問いかけが 自分のなかに残ったりして、 もう、めんどくさいんですよ(笑)。 |
白岩 | めんどくさいですね(笑)。 |
糸井 | でもゲームになったら急に、 ひと言、そこにことばを置いておくだけで 気持ちがよくなったりする。 そもそも、いわゆる『ドラクエ』タイプの ロールプレイングゲームって 主人公がひと言もしゃべらないですからね。 |
白岩 | ああ、そうか。そうですね。 だからこそ、ことばに直接性があるというか。 |
糸井 | はい。 |
白岩 | 実際にプレイしていると ことばがすごくストレートに 響いてくるのを感じますし。 |
糸井 | そういうことができることが うれしかったんです。 ただ、量ということでいうと、 ゲームって、主人公はしゃべらないとはいえ、 用意すべきセリフは膨大なので、 そんなに何度もはできなかったんですけど。 だから、自分のなかでは、3本つくって、 やぁ、おもしろかったという感じで。 |
白岩 | 完結している。 |
糸井 | うん、そうですね。 |
(続きます) | |
2009-07-22-WED |