乗組員やえの疑問

東京スカイツリー、水はどうするの?

スカイツリーおじさんの解説

日常において水はいたるところで使われています。
飲用、炊事、トイレ、風呂、洗濯、火災時の消火
などなど。
お風呂、洗濯はともかくとしても、
いくら634mもある東京スカイツリーだからって
水を使わないわけにはいきません。
地上450mの第二展望台にもトイレはありますし、
地上350mの第一展望台にはレストランもあります。

そうした高さにある蛇口やトイレなどからも
水が出ることは、当たり前といえば当たり前。
でも、どうやってそんな高さまで
水を運ぶのかというと、答えはシンプルで、
飲料用水槽と消火用貯水槽合わせて18基のタンクを
地下から地上400mを超える高さまでの各所に配置し、
各タンクから下の階へと水を送るのでした。

タンクは容量が5〜34トンで、
腐食せず、廃棄時にはサーマルリサイクルの可能な
FRP(繊維強化樹脂)製です。
また、高い耐震性を備えており、
万一配管に異常が生じても水漏れを防止する
遮断弁も付いています。

ふたつの展望台までの揚水(汲み上げ)は、
高さ方向4段階に設置した最新のポンプ設備で、
一気に大量の水を汲み上げることができます。
とはいえ、山小屋と同じく高所の水は貴重です。
いやいや、高所でなくても水は貴重な資源ですし、
大切に使ってほしいです。

もう一方の「排水」、東京スカイツリーで、
たとえばトイレを流すとどうなるでしょう?
排水管を流れ落ちる排水には加速度が生じます。
色々なもの(お食事中の方、ごめんなさい)が
すごいスピードで落ちていくわけです。
そのスピードは秒速10m以上。
このスピードのままで流れると、
排水管内の空気が押し出され、真空状態になります。
そうなると、
本来は便器にたまって「ふた」の役割をしている
水まで引き込まれてしまい、
結果、悪臭が漂ってしまいます。

この悪臭が生じる現象は、
空室期間が長かったマンションなどで
「なんか部屋が臭い!?」と感じることがあるのと
同じ理屈でして、
「水のふた(水密)が切れた」ことが原因。
通常のトイレや台所の流しには
便器や流しの上下に折れ曲がった配管部分に
常に水をためておくことで、
流したものの臭気や、中に含まれている菌などの
逆流を塞いでいるのです。
ところが長く使用しないでいると、
その水のふた(水密)がなくなり、
いやな臭いが漂ってしまうのです。
東京スカイツリーの場合、
排水管内が真空状態になることでこの現象が
引き起こされる恐れがあるということです。

そこで、東京スカイツリーでは
排水管に「折り曲げ部(減速継手といいます)」を
設けて排水の落下速度を緩和することで
配水管内が真空状態になるのを防ぎ、
悪臭の発生を防止しています。
速度の緩和について、道路と車で喩えると、
道路(配水管)が直線コースだと車(排水)は
ぐんぐんスピードを増してしまいますが、
道路(配水管)を直角の蛇行コースにすると
車(排水)のスピードはカーブのところで落ちる、
という、ごく単純な仕組み。
この減速継手によって落下スピードは半減します。
この方法は、
東京スカイツリーならではのものではなく、
超高層ビルにおいて広く使われている方法です。

日本ではどこでも蛇口をひねれば水が出ます。
東京スカイツリーでも
上述のような工夫をすることでそうなっています。
日本人1人は1日に300リットルの水を使い、
お風呂の習慣(必要)のないモンゴルだと
1人で1日数リットル以下の使用量だそうです。
でも、世界の水問題は深刻ですし、
水男爵(面白いですけどほんとにWater Baron)
と呼ばれる民営水道事業社3社が
世界の水道市場の8割を占め、
複雑な問題が生じている状況もあります。

このように水はローカルかつグローバルな問題ですが、
まずは、日々の節水と水を汚さないことを
大事にしていきたいですね。

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2011-08-09-TUE