「高さ」は古くから人間の憧れだったらしく、
古代エジプトでは、神である太陽に近づくために
ピラミッドの高さを求めたと言われます。
中世ヨーロッパでは、権力者がその権威を誇る象徴
として高い建物がつくられました。
現代では、タワーは国や街のランドマークとして
捉えられています。
現在、世界で一番高い建築物は
ドバイの「ブルジュ・ハリファ」で、高さ828m。
なんと驚くことに、現在、中東諸国では
高さ1000mオーバーのタワービルが
複数、計画されています。
中には、高さ2400m(!)の「ドバイ・シティ・タワー」
というプロジェクトも建設予定だとか。
ちなみに、
SF映画の名作「ブレードランナー」に出てくる
タイレル社の本社屋(?)「タイレル・ピラミッド」は
設定上、高さ1マイル=約1.6km、600〜900階建てで、
映画中に高速エレベーターのシーンも出てきます。
高さだけを見れば、
「ブレードランナー」公開の1982年当時の
SF=Science Fictionが
現実になりつつあるということでしょうか。
これまたSF(すこし不思議○c藤子不二雄)ですね。
いったい、タワーをどこまで高くつくれるのかは
確かに気になるところですが、
現実的には以下の問題があります。
社会的制約条件として、
コスト、工期、敷地条件、環境条件があります。
コストと工期は経済的問題として当然なもの。
高さに見合った十分な広さの敷地であるかどうかは
高いタワーを実現する上で、
構造設計上も施工上も極めて重要なものです。
タワーの縦と幅の比率は抑えた方が有利ですから
高さ数千mのタワーを建設する場合、
その高さの1/3程度の幅を確保できる
長さ四方の敷地が望まれます。
となると、1Km四方以上の敷地が必要となりますが
日本の都会ではなかなか難しそうです。
また、周辺環境に対する影響も、
タワーが高ければ高いほど考慮しなければなりません。
つまり、その必要性が問われます。
一方で、技術的制約条件としてはどうでしょうか。
〈重力〉
広い敷地があり、
基礎部分の面積を自由に確保できるのであれば、
数千mのタワーであっても
それを支持することは可能と思われます。
〈地震〉
少なくとも歴史的に把握できている地震に関しては
かなりな精度でシミュレーションが可能で、
耐震性を確保する方法はあると考えられます。
ただし、完全に予測できない自然現象に対して
どこまで安全性を担保するかは、
今後も難しい問題であり続けます。
〈風〉
1000mを超えるタワーになれば
地震に比べて風の力が支配的なると予想されます。
調査の実施や過去の記録に基づき、確率統計的に
風荷重を想定して設計を行うことができます。
ただ、直近の問題ではなさそうですが、
今後の地球環境の変動が
風にどのような影響を及ぼすのかは未知数です。
〈施工〉
施工に関しても、タワーが高くなるほど難度が増し
揚重や精度確保は重要となります。
また、設計も含め、その地の気候も大きく影響します。
でも、コストや工期の問題を度外視すれば
方法はあるでしょうし、
施工ロボット等を含め、先端技術を動員すれば
施工することは可能のように思われます。
と、技術的には、
すでに1000mオーバーのタワー計画があるように、
かなりいけそう。
となると、タワーの高さの限界は
与えられた条件次第、といえます。
いささか乱暴ですが、誰も住めないような場所に、
コストと時間に糸目をつけず、
エネルギーの無駄に目をつむり、とにかくつくる!
というのであれば、
高さ1万mのタワーも夢ではないのかもしれません。
高さは、古来より人の憧れでしょうが、
一方で「バベルの塔」の伝もあります。
「タワーはどこまで高くつくれるの?」の問いは
「人はどこまで高さを求めるの?」という問いへと
結局は行き着くようです。 |