ストーリー

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届いたときが、いちばん硬い。自分で育てるカシミアです。
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「育てるカシミア」は、自分で着て、洗って育てる、
いままでにないカシミアです。

通常、カシミアのニット製品をつくるときには、
ソーピングと呼ばれる仕上げの工程が必要です。
編み上がったばかりの硬いニットを
何度も洗いにかけることによって、
カシミア特有の風合いとやわらかさを出すのですが、
「育てるカシミア」は、あえてソーピングをしていません。
そのため、お手もとに届いたときが、
いちばん硬い状態です。
着たり、洗ったりしていくうちに、その人ごとのペースで、
だんだんとやわらかくなっていきます。
まるで、ジーンズを糊のついた状態から育てるような感覚。
だから「育てるカシミア」です。

「カシミアの聖地」に棲むヤギのうぶ毛を、そのまま届けます。
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首都ウランバートルから車で16時間、距離にして850km。
そこにひろがる広大な草原地帯は、
モンゴルでもっとも寒さが厳しい場所です。
この地に棲むヤギたちは、冬のあいだ、
ほかのどこよりも、細くて長いうぶ毛を身にまといます。
そのためここでは、最高級のカシミアが採れるのです。
(うぶ毛が細くて長いほど、良質なカシミアになります)
また、周辺150kmに鉱山と畑がないため、
ヤギが食べる草には、農薬など人工物の影響がありません。
「育てるカシミア」は、そんな「カシミアの聖地」で採れる
100%オーガニックの原毛だけでつくられます。

毛が生え変わる夏がくる前に、うぶ毛を梳きとり、
汚れと余分な脂分を落とすために
一度だけ洗ったら、あとは何もしません。(※)
色を染めることもしていません。
ヤギたちにもらったうぶ毛をそのまま、
「生のカシミア」の状態で、みなさんに届けます。

※紡績のときに静電気防止剤と、
編むときに摩擦をへらすため、少量のオイルは使います。

専用のレシピが実現した、「生のカシミア」。
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最高品質の原毛にできるだけ手を加えず、
「生のカシミア」としてお届けするのが、
「育てるカシミア」の特長ですが、
これを実現するのは、そう簡単ではありませんでした。
カシミアにかぎらず、ソーピングしないニットは、
匂いと脂分がつよく、また、たいへん硬くて、
とても着ていることができないのです。

そこで、このプロジェクトのパートナーである、
モンゴルのスノーフィールズ社のみなさんが、
研究を重ね、専用のレシピを開発してくださいました。
・原毛を洗う方法や手順を見直し、アップデートすること。
・厳選された原毛から、さらにやわらかい部分を選りわけ、
それだけを使って糸をつくること。

・糸の撚り数を従来より減らすこと。
これらの工夫により、ソーピングしなくても着られる、
「生のカシミア」をつくることができました。

セーター1着でヤギ6、7頭ぶん。あたたかさも格別です。
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「ふんわり、やわらかい」という
カシミアの一般的なイメージに反して、
「育てるカシミア」の編み地は、
肉厚で、しっかりと目がつまっています。
まるでフィッシャーマンズ・ニットや、
オイルド・セーターのよう。
それもそのはず、セーター1着あたり、
なんとヤギ6、7頭ぶんのうぶ毛を使っています。
もちろん、あたたかさも格別です。
「ぜいたくにもほどがある!」なんて、
怒っちゃう人もいるかもしれませんが、
でも、ここまでぜいたくなら、自然と、
ちゃんと育てて、長く愛用したくなりますよね。

「50年は着られますね」と、大橋歩さんは言いました。
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「育てるカシミア」の開発に際して、わたしたちは、
大橋歩さんにアドバイザーをお願いしました。
このいままでにないカシミアをつくり上げるには、
「いい洋服」を知り尽くしている、
大橋さんの眼力が必要だと思ったのです。
最終的なサンプルが完成したとき、この製品について、
大橋さんはこう語ってくださいました。

いまみたいに、あまりにいろんなスタイルがあると、
「ずっと、だいじに着たい服」がほしくなると思うんです。
わたしみたいに長いこと服を見ているとわかるんですけど、
いつの時代もかわらず、ずっと着られるのは、
結局、素材がよくて、昔からあるかたちのものなんですね。
そういう意味では、カシミアのセーターって、
やっぱり冬の最高の衣類だと思うんです。
それが、これだけ地厚で、しっかり編んであって、
こういうベーシックなかたちだったら、
50年は着られると思います。
もしわたしが25歳で買ったら、
75歳になったいままで着るだろうと思うし、
もしかしたら、そのあとも息子とか娘とかが、
たのしんでくれるかもしれない。
ほんとうに、それくらいのものだろうと思うのね。
これはもう、買ってくださったみなさんにとって、
すごくだいじな、「幸せの1枚」になるんじゃないかしら。
よかったですね、いいのができて。

「育てるカシミア」のブランド名「50(サンカンタン)」は
ここから、うまれました。

この大橋さんのインタビューは、代官山T-SITEにあるカフェ
「Anjin(アンジン)」で行われました。
貴重な雑誌のバックナンバーなど、豊富なライブラリーも
閲覧できる、とてもすてきな空間です。

Anjin
東京都渋谷区猿楽町17-5
代官山 蔦屋書店2号館2F
03-3770-1900
OPEN:AM9:00 - AM2:00
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