わたしたち「ねむくま編集部」は、
寝具メーカーのディーブレスさんといっしょに、
いくつかの寝具をご提供してきました。
それはたとえば
「くまのさかだちまくら」、
「くまもとろけるふとん」、
「くまもさらさら2wayパッド」などなど。
それぞれ、実際に使った方々から
たくさんのご好評の声をいただいています。
そして、冬です。
寒い季節がやってきました。
おおきく信頼しているディーブレスさんに
直球の質問を投げかけてみました。
「冬に向けて、さらにあたたかくしてくれる、
いい寝具はありませんか?」
今回ご紹介するのは、
この問いかけを機にご提供を決めたアイテムです。
名前は、「くまもあこがれる羊のパッド」。
どういうところが、冬にいいの?
くまもあこがれるって、どういうこと?
ディーブレスの増田吉史さんに
お話をうかがいました。
──
もともとは、
「ソフゥール(Sofwool)」という
ブランドの敷き毛布があったんですよね。
増田
はい。
「冬の寝具でおすすめは?」
と聞かれて、すぐにこれだろうと。
──
で、実物を触ってみたら、
これがもう、すばらしくて。
増田
ありがとうございます。
──
「くまもあこがれる羊のパッド」
という名前でご提供することになりました。
あらためて、この敷き毛布の
特徴を聞かせていただけますでしょうか。
増田
はい、もちろんです。
この敷き毛布については、
なんといっても、まず、
素材について知ってほしいです。
──
素材。
羊毛ですよね。
増田
ええ。
羊というのは、
一頭からとれる毛というのが、
どの部位でも、どの年齢のときでも、
「毛の細さ」が同じなんですね。
──
‥‥え?
そうなんですか?
一頭のひつじの毛は、
どこも、いつでも、同じ細さ?
増田
そうそう、
たとえば、細さ22マイクロンの毛の羊やったら、
全身どこでも22マイクロンなんです。
──
はあー。
人間の髪の毛は、赤ちゃんのころは細くて、
成長すると太くなるじゃないですか。
羊は、そうじゃない。
増田
そうじゃない。
何歳でも同じ細さです。
ただし、硬さは違います。
──
あ、部位によって硬さが異なる。
増田
ええ。
背中や手足など太陽光がよく当たる部分は、
硬めの毛がとれて、
紡毛(ぼうもう)という原料になります。
脇腹やあばらなど太陽光があたりにくい部分は、
やわらかい毛がとれて、
それは梳毛(そもう)という原料になります。
──
部位による毛の硬さの違いに合わせて、
種類があるんですね。
増田
紡毛は、硬めの羊毛で、
長短の繊維が混ざり、
繊維の方向もさまざまです。
素朴な風合いになる原料ですね。
梳毛は、やわらかい羊毛で
繊維の長さや向きが
整えられた毛のことです。
なめらかで、コシがあって、
光沢感があります。
ちなみに硬めの毛を使う紡毛は
おもに絨毯(じゅうたん)などに使われます。
ツイード、フランネルなどの生地にも
使われたります。
紡毛が適しているものもあるんですよ。
さわり比べてみると、どっちもウールなのに、
ぜんぜんちゃうと思いません?
──
ちがいますね。
増田
この敷き毛布に使ったのは、
梳毛用のやわらかい部分だけです。
それを、すいて、すいて、すいて‥‥。
洗ったら、こういう状態になります。
(サンプルを触る)
──
やわらかい。
増田
それとですね、
通常の毛布は羊毛の繊維を紡いで毛糸にして、
その毛糸を織ったり編んだりするんですよ。
ところが、この敷き毛布は、糸にしない。
──
糸にしない??
増田
このままなんです。
──
ちょっと混乱しています‥‥
ええと、つまり羊のまま?
増田
そう! 羊のまんま。
まんま、毛布に加工します。
──
羊のまんま‥‥。
本物の羊に触っているような感覚になるのは、
それが理由ですか。
増田
よう言うてくれはりました!
そうなんです、
高品質なやわらかい素材だけを
いったん糸にしないで作ってますから、
これ、もう、
「ほんまの羊にくっついて一緒に寝てる」
くらいの話なんですよ。
──
いったん糸にすると、
ずいぶん変わるんですね。
増田
そうですね、
羊毛を糸にするときには
やわらかい毛に硬い毛を合わせて
製品にすることもありますから。
──
なるほど、これは混ぜものが無い。
素材の質がそのまま肌触りに。
増田
そういうことです。
増田
さらに、
「くまもあこがれる羊のパッド」に使う羊毛は
オーストラリアのなかでもタスマニア島産の
ポロワースウールに指定させてもらってます。
──
ポロワース‥‥。
地域の名前ですか。
増田
ポロワースは、羊の種類です。
──
あ、羊の。
増田
メリノ種のなかのポロワース羊。
そもそもメリノ種は、
ウールのなかでも上質です。
でも、メリノやったらなんでもええやんではなく、
ポロワース羊を指定してます。
──
エリート中のエリートということでしょうか。
増田
ええこと言うてくれます。
で、さらに‥‥。
──
さらに。
増田
そのエリート中のエリートの羊の
お腹側のウールだけを使うことで、
このやわらかい敷き毛布ができるんです。
──
すごい‥‥。
増田
新型コロナウイルス以前は
毎年オーストラリアやニュージーランドに行って、
いい羊を育てている牧場を探してました。
──
牧場は何軒くらいあるんですか?
増田
めちゃめちゃいっぱいあります!
羊のほうが人間より多いんですよ。
──
そのなかからエリートを探すんですね。
増田
ええ。
この敷きパッドの羊毛の細さは、
22マイクロンくらいです。
人の髪の毛の4分の1くらいの細さ。
もっと細いものもありますが、
いろいろ試した結果これがベストバランスです。
──
一頭のポロワース羊からとれる、
日焼けしてないやわらかい部分は
何パーセントくらいですか。
増田
だいたい脇腹あたりの毛なんですけど、
ざっと3割くらいです。
羊1頭から羊毛が4kgくらいとれて、
そのうち1.2kgくらいがやわらかい部分です。
羊1頭から敷き毛布が1枚できると
イメージしてもらったら、
わかりやすいかもしれませんね。
──
よーくわかりました。
ぜいたくな素材を、ありがとうございます。
増田
ウールって
チクチクするイメージがありますよね?
──
はい、あります。
増田
それは顕微鏡で見ると、
羊毛に小さなトゲトゲがあるからです。
──
トゲ‥‥知らなかった。
増田
ウールのニットは
洗うと縮むじゃないですか。
あれはトゲが互いに引っかかって
戻らなくなるからなんです。
──
そうだったんですねぇ。
昔(昭和時代)はウールのセーターって、
首周りがチクチクしてました。
増田
ぼくらが使う羊毛は洗う工程で、
トゲトゲを取り除く加工をしてるんですよ。
だから、チクチクしないウールなんです。
──
これ、ぜんぜんチクチクしないです。
むしろ、ふわふわで気持ちいい。
増田
上質なウールそのままを
敷き毛布にする製法について、
もうすこし詳しくお話しても
よろしいでしょうか。
──
ぜひお願いします。
増田
糸にしてから織ったり編んだりして
生地にするのではなく、
羊毛の原料をそのまま編みこんで生地にする
特殊な製法を、
「スライバーニット製法」と言います。
──
スライバーニット。
増田
この製法によって、
空気を多く含み、
ふんわりとした質感と
ボリューム感が生まれます。
わかりやすいのは、コートのファー部分。
あの部分も、
毛を糸にしないで繊維を編み込んでいます。
──
ああー、はい、わかります。
「ファー」な感じですね。
増田
イメージとしては、ポリエステルの下地に、
羊毛をそのまま植えている感じです。
できあがると毛足が5cmくらいの状態。
(サンプルを触る)
──
すでにいい感じです。
増田
この状態でもとてもやわらかくて、
「気持ちよさそ~」ってなるんですけど、
残念ながらこのままではまだ、
洗うと毛玉になるんです。
毛抜けもしやすい。
なので、毛先を刈りそろえます。
──
ていねいにカットを。
増田
5cmくらいの毛先を切って
3cmくらいにそろえます。
──
3cmがいいんですね。
増田
そうですね、
長いとやわらかいんですが、
申し上げたように
洗いにくくて抜けやすい。
寝るとつぶれやすい、
というデメリットもあります。
とはいえ、短くするほど
触り心地は硬くなります。
この素材でいちばんいいバランスを探して、
たどりついたのが3cmなんです。
──
なるほど~(触りながら)、
絶妙なバランスということがわかります。
本物の羊を触ったことはないですけれど、
イメージとしては
ほんとに羊に触っているみたいで。
増田
スライバーニット製法の技術をもつのは
日本で2、3社だけです。
そのうち、寝具のように面積が大きい生地を
つくることができるのは、
私が知る限り一社だけです。
──
そんな特別なスライバーニット製法ですが、
羊毛をそのまま生地にするということは、
よっぽど素材に自信がないと‥‥。
増田
そうなんです!
──
逆も言えますよね。
タスマニア島のいいウールを手に入れたからこそ、
スライバーニット製法でつくるチャンスだぞと。
増田
そういうことです!
またいいこと言うてくれはりました。
──
最後の質問です。
気になるお手入れについて。
「くまもあこがれる羊のパッド」は、
洗濯できるんですよね。
増田
できます。
洗剤は中性洗剤を使ってください。
ウール用の中性洗剤があるんですよ。
洗濯機は「手洗いコース」や
「毛布洗いコース」などの
弱い水流に設定して、
洗濯ネットに入れて洗ってください。
──
脱水しちゃっていいんですか。
増田
大丈夫です。
干すときは風通しのよいところで
陰干ししてください。
で、半乾きの状態で
ブラッシングすると毛並みが整って、
柔らかい風合いが長持ちします。
──
ブラッシングが大事っていうのも、
生き物のようです。
増田
そうですね(笑)。
ブラッシングのタイミングは、
干したあとの濡れた状態で。
ざっくりした目の粗いブラシがおすすめです。
1回ではとかせないので、
何回もブラシを通します。
そのあとは陰干しを続けて乾燥させます。
濡れた状態でのブラッシングがしんどい場合は、
すこし乾いて毛がしっとりしてる状態で
ブラッシングして、
毛並みをととのえてください。
ブラッシングはめちゃめちゃ時間がかかって、
めっちゃ手間なんですよ。
なんですけど、
たのしんでやってあげてほしいです。
──
きっと愛着がわいて、
たのしみになるんだと思います。
「そのたいへんさがうれしい!」
みたいな。
増田
はい(笑)。
──
「くまもあこがれる羊のパッド」には、
ブラシがセットでついてますしね。
増田
ええ。
お手入れをたのしく、お願いしたいです。
──
ちなみに、洗濯はどれくらいの頻度で?
増田
冬に使って、春にしまう前に1回洗えば
ええと思います。
──
クリーニング店に出してもいいんですよね?
増田
クリーニング店に出す場合は、
ドライクリーニングにしてください。
水を使わないドライクリーニングは
ウール同士がくっつきにくいので、
ブラッシングは不要です。
──
わかりました。
今回もたのしい解説を
ありがとうございました。
ぜいたくな素材と、
スライバーニット製法による
ウールそのままの肌触りで、
冬のねむりをたのしんでいただきたいですね。
眠りのなやみ、
おしえてください。
日ごろ、眠りについて気になっていること、
疑問に思っていること、困っていることはありませんか?
ささいなことでもかまいませんので、ぜひ教えてください。
「ねむくま」編輯部と、顧問の三橋美穂さんが、
いっしょに調べて回答します。
寝グルメじまん、
募集中!
「これをはじめてから調子よく眠れます」
「これを使うと目ざめが快適です」
そんなノウハウやグッズがあったら、ぜひ教えてください。
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