「書く」って、なんだろう?
鉛筆と紙があればできる
とてもシンプルな行為でありながら、
誰かに思いを伝えたり、考えをまとめたり、
いま起きていることを未来へ残したり…
「書く」には、いろんな力がありそうです。
ほぼ日手帳2019では、
「書く」という行為にあらためて注目して、
書くことのたのしさや不思議さを
考えたり、おもしろがったりしてみようと思います。
この特集では、仕事やプライベートで
書く・描くことをしている十人のみなさんに
愛用の「書く道具」を見せてもらいながら
話を聞いたインタビューをお届けします。
十人十色の「書く」を、おたのしみください。

書くってなんだ?

vol.1
糸井重里

「書きなぐるときと、丁寧に書いておくときとで、
違った味わいの文字になって表れるんです。」

まずは、糸井重里へのインタビューからスタート。
2018年を「手帳を使う人」として過ごした糸井は、
ほぼ日手帳に何を書いているのでしょうか。

プロフィール糸井重里(いといしげさと)

ほぼ日刊イトイ新聞主宰。
1948年生まれ。
コピーライターとして数々の広告を手がける他、
作詞家、ゲーム制作など多岐にわたり活動。
1998年に『ほぼ日刊イトイ新聞』を創刊。
以降、「ほぼ日」での活動に全力を注ぐ。

ーー
糸井さんは2018年から
「本気でほぼ日手帳を使う人」になったと
おっしゃっていましたよね。
糸井
どんなに眠くても書くんだよね。
今年は書いていない日がないんです。
これ、人生初じゃないかな。
ーー
毎日、どんなことを
書いているのでしょうか。
糸井
思いついたことを書くのが多いかな。
ぼくはひとりで考え事をするときに、
手帳をそばに置いておくんです。
すらすら書いているというよりは、
書くことを途中で止めて考えることもあるし、
端折って書くこともあります。
間違っていてもいいから、
書いて文字にして残すことが大切なんです。
ーー
それほど手帳が続くようになったのには、
なにか理由があるのでしょうか。
糸井
長く続けられるのかなと思っていたけれど、
やってみたらさ、ちゃんと続くんだよ。
ことし、「ほぼ日手帳」に毎日書くようになったのは、
万年筆を使いはじめたおかげなんですよね。
ーー
キャップレス万年筆を使うようになったのは、
古賀さん(ライターの古賀史健さん)に
教えてもらったことがきっかけでしたよね。
糸井
そう、古賀さんのブログで知ったんだよ。
このペンを使うようになって1年ぐらいかな。
手で書くことのおもしろさを、
思い出させてくれた気がするんです。
今まではどの筆記用具でも、
思いどおりの字が書けていない気がしていたけれど、
このペンは書いた字がイヤじゃない。
自然に文字が流れ出ていく感覚が、
自分に合っていたんだろうね。
急いで書きなぐるときと、
丁寧に書いておこうと思うときとで、
それぞれ違った味わいの文字になって表れるんです。
じつは、「ほぼ日」オリジナルデザインのものと、
PILOTの純正のものをあわせると、
5本ぐらい同じペンを持ってるからね(笑)。
手帳のバタフライストッパーって穴が2つあるから、
そこに1本ずつ差しているときもあるし。
ーー
5本ですか、相当気に入ったんですね。
「ほぼ日手帳」の使い方そのものに、
大きな変化はないのでしょうか。
糸井
手帳を続けようと思ったきっかけのもうひとつが、
「ほぼ日5年手帳」かもしれません。
いつも持ち歩く「ほぼ日手帳」に書いたことを
家に置きっぱなしの「5年手帳」にも書き写していて、
「抑え」みたいな役割になっているんです。
食べた物だとか、誰と会っただとか、
そういう簡単なことを書いておくだけで
あとで思い出せることがあるんだよね。
過去に手帳に書いたことを見るのは、
昔の写真を眺めるのに似ていておもしろい。
ブイヨンと散歩していた頃の写真を見て、
「あ、ここは根津美術館の裏のところだな」とか、
写真を見れば、いろんなことが思い出せるから。
ことしから「5年手帳」を使いはじめてみて、
来年になって見返すたのしみができました。
ーー
「5年手帳」を使っていると、
2年目以降の振り返りがたのしみですよね。
糸井さんは、自分で思いついたこと以外に、
なにかメモをすることもありますか?
糸井
人が話していた内容を書くこともあるし、
友達にいいことがあって書くこともあるかな。
そうすると、じぶんや他人の日常に親しみが増して、
もっと付き合いたくなるんだよね。
あと、じぶんでは珍しいことなんだけど、
印象に残った本の抜き書きもしました。
森博嗣さんの『集中力はいらない』という本を
えらく気に入って、その一節を手帳に写しちゃった。
ーー
インタビューやミーティングの際にも、
糸井さんの「ほぼ日手帳」の中を
じっくり見せていただく機会って
あまりなかったように思います。
糸井
基本的には見せないつもりで書いてるからね。
誰かに見せるとわかっていたら、
たぶん、書く内容も文字も違っただろうな。
今、パラパラ読み返してみても、
「モノレールは結局、不便だった」
とか書いてあるぐらいだしね。
人に見せないのは、なんでだろうなあ。
じぶんでも整理できていないんだけど。
ーー
これから書こうかなって考えているものって、
なにかありますか。
糸井
じつはさ、今日からうちに犬が来るんだよ。
ブイヨンと同じ顔をした女の子で、
まだ、生まれて100何日なんだよ。
「ブイコ」っていう名前はもう決めたの。
そわそわしちゃって、昨日も全然寝られなくてさ。
これからweeksに飼育日記をつけて、
記録帳にしようかなって思うんだよね。
(愛犬のブイコが糸井家にやってきた
2018年8月20日に取材をおこないました)
ーー
今日、帰ったらブイコちゃんがいるんですね!
嬉しいニュースの日に、ありがとうございます。
ブイコちゃんの成長記録、たのしみです。

(連載はつづきます。次回は佐藤卓さんが登場します)

photos:eric

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