「書く」って、なんだろう?
鉛筆と紙があればできる
とてもシンプルな行為でありながら、
誰かに思いを伝えたり、考えをまとめたり、
いま起きていることを未来へ残したり…
「書く」には、いろんな力がありそうです。
ほぼ日手帳2019では、
「書く」という行為にあらためて注目して、
書くことのたのしさや不思議さを
考えたり、おもしろがったりしてみようと思います。
この特集では、仕事やプライベートで
書く・描くことをしている十人のみなさんに
愛用の「書く道具」を見せてもらいながら
話を聞いたインタビューをお届けします。
十人十色の「書く」を、おたのしみください。

書くってなんだ?

vol.9
秀島史香

「思いついたその瞬間に書いておかないと、
『ここぞ!』というときにスカっスカって
弾切れになっちゃうんですよね。」

ラジオDJの秀島史香さんは、
思いついたことを頭に留めておくように、
手の届くところにある紙にメモをしています。
ラジオ生放送中の台本や普段使っている手帳、
レシートやチケットの裏にも、とにかくメモ。
日曜の早朝から生放送をしている
Fm yokohama『SHONAN by the Sea』の
スタジオからお届けします。

プロフィール秀島史香(ひでしま ふみか)

ラジオDJ、ナレーター。
1975年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。
慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。
FM局のDJ、TVやCMのナレーション、
絵本の読み聞かせ、通訳や字幕翻訳、執筆活動などで活躍。
現在、Fm yokohama​「SHONAN by the Sea」
JFN系各局『Pleaseテルミー!
マニアックさん、いらっしゃ~い!』
などに出演中。
著書『いい空気を一瞬でつくる
誰とでも会話がはずむ42の法則』
(朝日新聞出版)が販売中。

書くことをテーマに、糸井重里と話した対談はこちら。
「わたしの言葉で書く、しゃべる。」

ーー
秀島さん、おはようございます。
ラジオ生放送の休憩中にお時間をいただき、
ありがとうございます。
今日は秀島さんの主戦場である
スタジオでの取材ということで、
ラジオ番組の台本に書いていることや、
秀島さんが普段書かれているメモについて
教えていただけますか。
秀島
おはようございます!
早朝にお越しいただいて、ありがとうございます。
放送中に書きつけているメモは、
目に入った紙の裏とかに
ふと思ったことをジャカジャカ書いています。
放送中はメモが散乱しているので、
わちゃわちゃしていますね。
ーー
ラジオのDJをひとりでしていると、
思いついたことがすぐに
ラジオの中で活きてきますよね。
秀島
生放送は瞬発力が大事ですから。
すぐに書いておかないと
絶対に忘れてしまうんです。
情報ってどんどん頭に入ってきちゃうんで、
メモという行為に移すことで
なんとか頭に留めておくようにしたいんです。
思いついたその瞬間に書いておかないと、
「ここぞ!」というときにスカっスカって
弾切れになっちゃうんですよね。
ーー
いつでも使えるように、
トークの弾を充填しておくんですね。
秀島
まとまったトークだけじゃなく、
フレーズのレベルでも書き込んでいます。
「さっき、ああ言えたらよかったのに!」
ということをササッと書くんですよ。
たとえば生放送で話している最中に
「朝ごはんのお箸を持つ手が止まりそう」
みたいなフレーズが思い浮かんだとしますよね。
いつか使えないかなと思いながら
殴り書きのように急いでメモするんです。
ーー
ちょうどいいタイミングを狙って
ズバッと言いたくなりますね。
秀島さんがメモについて
心がけていることは何かありますか。
秀島
すぐに思いつくこととしては、
消せるペンを使うことでしょうかね。
ラジオには進行表があるんですが、
生放送ではどんどん情報が変わっていきます。
メモを書いたはいいけれど、
間違った情報を書いたままにしておくと
読み間違れば放送事故になってしまいますよね。
進行表はスペースが限られているし、
上からジャジャジャって消そうとしても
さらに読みづらくなって
自分にトラップをかけてしまうことになります。
そう考えると、消すしか選択肢がありません。
つねに瞬間で判断しないといけないので、
消せるボールペンはなくてはならない存在ですね。
1秒を争う生放送の現場なので、
「消せる」というのは私にとっては革命的です。
本当に「ありがとうございます!」という感じ。
ーー
消せることに感謝ですね。
秀島さんがお持ちのペンをよく見ると、
ボールペンに名入れしたものをお使いなんですね。
秀島
ボールペンに名入れのサービスがあって、
同じペンを何本も持っているんです。
ちょっとお恥ずかしい話ですが、
私、よく物をなくしちゃうんですよね。
先日も収録現場で忘れ物をしたら、
「これ、秀島さんのですよね」って
スタッフさんが届けてくださったんです。
ーー
ああ、名前があってよかった!
秀島
私はフリクションを使っていますが、
このペンは、何本持っていてもいいです。
ネットの通販でも簡単に
名入れの注文ができるんですよね。
忘れ物をするから名前を入れるなんて、
こどもみたいな理由で恥ずかしいんですけど、
名入れのおかげで助かってますよ。
テープで「秀島史香」って書くと
会社の備品みたいになっちゃいますが、
自然な感じで入れてもらえるんで愛用しています。
フリクションの3色タイプのボールペンは、
カバンにいつでも2本と替え芯を入れていて、
自宅にも5本くらいストックしてあります。
ーー
よっぽどお気に入りなんですね。
同じペンをたくさん持っておくのは、
先ほどおっしゃっていたように、
物をなくしやすいからでしょうか。
秀島
放送中はいろんな資料が机に広がっているので、
「あれ、ペンはどこ?」みたいになるんです。
すぐにペンが見つからなくても、
同じペンを持ってさえいれば、
ペンケースからすぐに取り出せますから。
ちなみに、メモをするときには
いつも青ばかりを使っています。
『半分、青い。』じゃなくて、
私の場合は『全部、青い。』ですね(笑)。
印刷物がだいたい黒字なせいもあって、
同じ色でメモをしても
パッと見たときに目立たないんですよね。
情報を直すために書き込むことが多いので、
目立たせることが第一です。
ーー
秀島さんは「ほぼ日手帳」も
長く使っていただいていると伺いました。
手帳には、どんなことを書いていますか。
秀島
10年ぐらい前にロフトで見つけてからずっと
「ほぼ日手帳」とお付き合いしてます。
ちょっと手帳を読み返してみると、
何を書いているか意味不明なこともたくさんで、
自分でもわからなかったりしますね(笑)。
ーー
たしかにメモを見ただけでは、
どういう意味で書かれたのか、
思い出せないものもあるでしょうね。
秀島
いつも急いで書いているせいもあって、
私の手帳に書いてあることは、
他の人にはきっと読めないでしょうね。
パッと開いたページを見てみると‥‥、
「イデオロギー=思想」って書いてありますね。
うーん、これを書いたときには
どんなことを思っていたんだろう(笑)。
きっと何かを考えていたんでしょうけど、
今はちょっとわからないなあ。
ーー
手帳にメモをするタイミングは、
どんなときなのでしょうか。
秀島
ふだんの生活を送っていて気になったことだとか、
思いついたことがあったときにメモしますね。
毎週レギュラーで生放送をやっていると、
季節がちょっとずつ移り変わっていくことに
敏感になっていくんですよ。
たとえば夏の終わりに書いたメモが、
「ビーサンがワゴンセールで300円になっていた」
「花火が安くなっていた」みたいな感じです。
ーー
季節に合った旬な話題は、
ラジオ番組の冒頭の挨拶にも
役立ちそうですよね。
秀島
おかげさまで、すごく役に立ってますね。
ラジオのオープニングトークでは、
放送までの一週間に、自分が何を話したいか、
見て、聞いて、ネタを溜めて話すんです。
でも、どんなに準備をしても
実際はスタジオに来てみないと
その日の状況はわからないんですよね。
その日に大雨かもしれないし、
突然何か大きなニュースがあるかもしれません。
役に立たないことも多々ありますけど、
それでもやっぱり、メモを溜めておいたおかげで
いつか役立つことがあるんですよね。
ラジオだけじゃなくて、普段の会話でも。
さりげなく強力な助っ人です。
ーー
「書いておいて助かった」という経験が
仕事に活かされているだけに説得力があります。
秀島さん、生放送の合間にご協力いただき、
ありがとうございました!

(今回で「『書く』ってなんだ?」の
全10回の連載はおしまいです。
またいつか、第二弾をおたのしみに!)

photos:eric

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