Symposium ボーダーシャツを語ろう。[轟木節子さん篇]

  • 轟木節子さん(スタイリスト)
  • 江藤 公昭さん(「PAPIER LABO.」ディレクター)
  • 尾崎 雄飛さん(「SUN/kakke(サンカッケー)」デザイナー)
title:

File 02 ボーダーは「コスプレ」である。

date:

2013/02/27 WED

content:
ピカソが着ていると急にほしくなる。
黒田 轟木さんが今着てるボーダーって、
映画監督のジャン=リュック・ゴダールが、
似たのを着てなかったっけ?
轟木 そうなんです!
これはゴダールの私物をイメージして
つくられたボーダーシャツなんですよ。
この本に出てます。
小鳥 ほんとだ、おんなじだ!
轟木 今はもうこの1枚だけしかないんですけど、
2枚もっていました。17、18年前です。
小鳥 2枚も!
それほどお気に入りなんですね。
黒田 ゴダールはけっこうボーダー着てますよね。
やっぱりなんか、かっこいいなあ。
轟木 かっこいいですよね。
さっき、ここに来る前に小鳥さんと、
「ボーダーって、プチ コスプレだよね」
という話になって。
ほぼ日 コスプレ?
轟木 なんかこう、ボーダーって、
自分がすてきだなと憧れる人が
着ているとかっこよくて、
おなじものを着たくなるんじゃないかと。
黒田 たとえば?
轟木 ポートレートや映画の中で
俳優さんがボーダーをすてきに着こなしていると、
真似をして着たくなりませんか?
わたしは
『男の子はみなパトリックという名である』という
映画を観て、ボーダーを好きになった。
小鳥 うんうん。
轟木 ボーダーって、ユニフォームっぽいというか、
アノニマス(匿名)な感じがありますよね。
どこにでもあるというか。
黒田 そうだね。
轟木 たとえば、ピカソが着ているのを見ると
急にほしくなる、みたいなところが
あると思うんです。
ほぼ日 あー、なるほど!
轟木 人知れず「ピカソのコスプレとして着る」というような。
ほぼ日 ああ、ああ。
いま、すごーく納得しました。
黒田 ということは、今日の轟木さんは、
ゴダールのコスプレをしているわけだ。
轟木 そうそう。
眼鏡もゴダールがかけていそうなものを
選んでますね。
黒田 それはすごい。徹底してる。
ほぼ日 そういう、ボーダーコスプレの対象になる人、
どんな人がいますかね?
轟木 『なまいきシャルロット』の
シャルロット・ゲンズブールとか。

photo: Interfoto / AFLO

黒田 『気狂いピエロ』のアンナ・カリーナとか。
轟木 かなりラインが細めの、
赤白ボーダーのワンピースを着ていて、
すごくかわいいんですよね。

photo: Everett Collection / AFLO

黒田 『勝手にしやがれ』のジーン・セバーグとかね。

photo: Photofast / AFLO

轟木 ブリジット・バルドー、ジェーン・バーキン、
ダイアン・キートン‥‥
ジャン=ポール・ゴルチエとピエール・エ・ジルも!
名前をあげるだけで、わくわくします。
小鳥 アンディ・ウォーホールとか、
アーティストも多いですね。
黒田 考えてみると、小鳥さんは台湾の小学生たちを見て、
そのコスプレをしているわけですよね。
小鳥 ああ、たしかにそうですね。
ということは、その前は、
楳図かずお先生のコスプレだったわけか(笑)。
轟木 実は、さっきお話しした
とんがり時代に着ていた「アニエス ベー」の
ピンクとグリーンの太幅ボーダーは、
『エルム街の悪夢』のフレディの
コスプレとして着ていました。
ほぼ日 それはまた、なんて個性的なコスプレ!
黒田 小鳥さんが着ているボーダーは
台湾の小学校の体操服だとおっしゃってましたが、
どうやって手にいれたんですか?
小鳥 写真を撮ったのは2~3年前なんですけど、
そのときはどこに売ってるかわからず、
そのまま帰国したんですよ。
で、先月この地域に再び行く機会があったので、
このTシャツがほしいことを台湾の友だちに伝えて、
売っている場所を教えてもらいました。
黒田 2~3年のあいだ、ずっと憧れてたわけですか。
小鳥 はい、もう、この六甲ボーダーがほしくてほしくて。
この写真集を出版したときに行った展覧会のグッズとして
六甲ボーダーをイメージした
Tシャツをつくったほどなんです。
(とつぜん、六甲ボーダーを脱ぎだす)
それが、これなんですけど‥‥。
ほぼ日 下に仕込んできてくださったんですね(笑)。
たしかに、六甲ボーダーの雰囲気がありますね。
轟木 「六甲」が「明星」になってる!
小鳥 そうです(笑)。
『明星』は、画家の箕浦建太郎さんと
一緒につくった作品なんですけど、
彼にあの体操服の写真をいくつか見せて、
そのイメージを書いてもらったんです。
それをTシャツにしました。
黒田 六甲ボーダーを、着たくてしかたなかったんですね。
小鳥 今回、轟木さんがボーダーシャツをつくると聞いたとき、
「この体操服をつくって」とお願いしました。
轟木 そうそう!
どうしようかと思っていたら‥‥
小鳥 それより先に、本物が手に入っちゃった(笑)。
黒田 いずれ、小鳥さんのコスプレとして、
六甲ボーダーを着る人が出てくるかもね(笑)。
轟木 黒田さんのコスプレでボーダーを着る人とか(笑)
黒田 そんな人はいないと思うけど(笑)
でも、そういうたのしさがある
アイテムだということは、言えそうですね。

(つづきます)

轟木 節子(とどろき・せつこ)

スタイリスト。
1972年、熊本生まれ。
ファッション誌、カルチャー誌、広告などで幅広く活躍。
シンプルな中にスパイスの効いた、
独自の空気感が漂うスタイリングが人気。
ナチュラル志向なライフスタイルも注目されている。
モデル・女優の今宿麻美さんのフォトエッセイ
『HEART BALANCE』(双葉社刊)で
フォトグラファーとしてもデビュー。
日々のスタイリングのヒントがつまった
『毎日のナチュラルおしゃれ
 着こなし手帖』
が発売中。

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黒田 益朗(くろだ・ますお)

グラフィックデザイナー。
カタログ、CDジャケット、ビジュアルブックなどの
グラフィックデザインや店舗サインなどを手掛ける。
kuroda design主宰。
そのシンプルなデザインのなかには、
黒田さんのこだわりがふんだんにこめられている。
轟木さんとは、家族ぐるみのお付き合い。

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川島 小鳥(かわしま・ことり)

写真家。1980年東京生まれ。
早稲田大学第一文学部仏文科卒業後、
沼田元氣氏に師事。
2006年、ひとりの少女を4年間撮り続けた作品で
第10回新風舎平間至写真賞大賞受賞、
2007年写真集『BABY BABY』 を発売。
2010年『未来ちゃん』で
第42回講談社出版文化賞写真賞を受賞。
被写体の心の揺らぎを捉えるセンスの正体は
物腰がやわらかく、とてもさわやかな男性。
シンポジウムの話の中に出てくる『明星』は、
小鳥さんの台湾の写真に、
画家の箕浦建太郎さんがイラストを書いた作品。
Amazonでの購入はこちら。

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