Symposium ボーダーシャツを語ろう。[轟木節子さん篇]

  • 轟木節子さん(スタイリスト)
  • 江藤 公昭さん(「PAPIER LABO.」ディレクター)
  • 尾崎 雄飛さん(「SUN/kakke(サンカッケー)」デザイナー)
title:

File 03 見た目はがっしり、でも着心地がいいボーダー。

date:

2013/02/28 THU

content:
「着て気持ちいい」ということが大切。
轟木 ボーダーシャツを着ていて、
「ここ、こうだったらいいのになぁ」と
思うときってありますか?
黒田 あ、あります。
轟木 どういうところでしょう?
黒田 ぼくが着ているのは厚手の生地でつくられていて、
そのしっかりとした感じが好きなんですけど、
何年も着ていると、ちょっとごわごわしてきて、
洗ったあとがパリッパリになるんです。
そうなると、ちょっと痛くて‥‥。
轟木 ああ、それ、すごくよくわかります。
若いときはごわごわの洗いざらしが
かっこいいくらいに思ってました。
黒田 だんだん、服に求めるものが変わってきますよね。
今は「着て気持ちいい」ということが、
とても大切です。
轟木 うんうん、
わたしも「気持ちいい、心地がいい」がすごく大事。
たとえば、はじめてカシミア着たときは
ほんとうに感動しました。
「おおっ」っとなる感じ。
違いを肌で直接感じると、もう手放せなくなる。
小鳥 すごくおいしいもの食べて、その味を知っちゃってからは、
ほかのものを食べられなくなる、
みたいな感覚に近いのかな?
轟木 そうですね。
できれば、よりよい方を選びたい。
黒田 カシミアのように
最初から気持ちいい素材もあると思うんですけど、
「これは着ていくうちによくなっていくぞ」って
思えるものもありますよね。
何回か洗濯することで服が馴染んで
着心地がよくなっていくだろうなってことが
新品の状態で予感できる素材ってあるじゃないですか。
轟木 「洗っていくとよくなるぞ」という感じ‥‥。
黒田 そうそう。
着心地のよさを目指したんだなっていうのが
わかるといいな、と思います。
‥‥簡単にはできないとも思いますが(笑)。
「そういうことを考えてつくられたんだな」
っていうのがあると、うれしいです。
轟木 着心地がいいボーダーシャツ、
目指したいですね。
やっぱり、肌がよろこぶものは
着た瞬間に気持ちがふわっと浮き上がって、
その日のスタートをいい気分で迎えられると思うんです。
ふだんからよく着るものこそ、着心地を大切にしたい。
黒田 うん。
そしてね、着心地がいいものは、着ちゃいます。
無意識にヘビーローテーションしてますね。
ほぼ日 なるほど。
轟木さんのボーダーシャツは、
「着心地がいい」ということが
キーワードのひとつになりそうですね。
小鳥 あの、最近流行ってるのか、
体のラインが出るような
薄い生地の服があるじゃないですか。
ぼくはあれが苦手で‥‥。
轟木 わたしも、生地は厚いほうが好き。
小鳥 今着ている六甲ボーダーのほかに、
「アニエス ベー」のボーダーも
持っているんですけど、
やっぱり厚めなんですよ。
黒田 「アニエス ベー」のボーダーは
「セントジェームス」に比べると、ちょっと薄いかも?
轟木 たぶん、「セントジェームス」は
太い糸で編んでるから厚くて、
「アニエス ベー」のは糸は細いんだけど、
ものすごく編み目がつまってる印象ですね。
小鳥 そうなんだ。
あと、厚さがあると伸びにくい気がする。
服が伸びてよれよれっとしてると、
あんまりかっこよくないと思うんです。
轟木 うんうん、やっぱり
ユニフォームっぽい、がっしりした感じがあって
それができるだけ長く続くほうがいいですよね。
黒田 轟木さんはユニフォームっぽいほうが
好きなんだね。
轟木 はい、タフな感じがあって、男っぽくていい。
好みです。
そういう見た目なのに、着心地がいい素材で
ボーダーシャツをつくれたら、最高ですね。
ポップ? それともシック?
小鳥 もうひとつ、言ってもいいですか?
轟木 どうぞどうぞ。
小鳥 色づかいがかわいいボーダーシャツがあったら、
うれしいな。
轟木 あー、そうか。
小鳥さんはポップな色が
好きですもんね。
六甲ボーダーも
よく見ればトリコロールになってる。
今日上に着ていらっしゃったブルゾンも
明るいブルーでしたよね。
小鳥 あ、これですね。
ちょっと着てみましょうか。
(上着を着ながら)
‥‥みなさんに見られながら服を着るって、
なんか恥ずかしい。
轟木 (笑)
あ、襟と手首のリブに
オレンジのラインが入ってるんだ。
ボーダーといえば、ボーダーですね。
黒田 胸元のアップリケもかわいらしいですね。
小鳥 台湾の古道具屋さんみたいなところで買って、
自分でつけたんです。
ビーチにヤシの木と、赤いヨットかな?
台湾の人の憧れがつまってて、いいなと。
黒田 ちょっと、天国っぽい感じがしますね。
「六甲」とか、アップリケとか、
小鳥さんは、なにかワンポイントあるものが
お好きなんですね。
小鳥 そうかもしれません。
チャーミングなポイントというか、
そういうものには弱いかもしれない(笑)。
轟木 黒田さんと小鳥さんって、すごく対照的ですよね。
小鳥さんの上着は明るいブルーのブルゾン
黒田さんの上着は真っ黒のトレンチコート。
黒田 ぼくはほとんどモノクロの世界ですね。
轟木 ポップとシック。
この対照具合は、見ていておもしろいです。
ほぼ日 轟木さんは、どちら寄りなんでしょう?
轟木 わたしは両方好きなので、今回のボーダーは、
どちらの気分も満たせるようにできたら
いいなあと思います。

(つづきます)

轟木 節子(とどろき・せつこ)

スタイリスト。
1972年、熊本生まれ。
ファッション誌、カルチャー誌、広告などで幅広く活躍。
シンプルな中にスパイスの効いた、
独自の空気感が漂うスタイリングが人気。
ナチュラル志向なライフスタイルも注目されている。
モデル・女優の今宿麻美さんのフォトエッセイ
『HEART BALANCE』(双葉社刊)で
フォトグラファーとしてもデビュー。
日々のスタイリングのヒントがつまった
『毎日のナチュラルおしゃれ
 着こなし手帖』
が発売中。

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黒田 益朗(くろだ・ますお)

グラフィックデザイナー。
カタログ、CDジャケット、ビジュアルブックなどの
グラフィックデザインや店舗サインなどを手掛ける。
kuroda design主宰。
そのシンプルなデザインのなかには、
黒田さんのこだわりがふんだんにこめられている。
轟木さんとは、家族ぐるみのお付き合い。

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川島 小鳥(かわしま・ことり)

写真家。1980年東京生まれ。
早稲田大学第一文学部仏文科卒業後、
沼田元氣氏に師事。
2006年、ひとりの少女を4年間撮り続けた作品で
第10回新風舎平間至写真賞大賞受賞、
2007年写真集『BABY BABY』 を発売。
2010年『未来ちゃん』で
第42回講談社出版文化賞写真賞を受賞。
被写体の心の揺らぎを捉えるセンスの正体は
物腰がやわらかく、とてもさわやかな男性。
シンポジウムの話の中に出てくる『明星』は、
小鳥さんの台湾の写真に、
画家の箕浦建太郎さんがイラストを書いた作品。
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