糸井 | しかし、O.J.シンプソンのような事件が 混じってくると、 弁護士が強い場合は強いのかなあ、なんて 思っちゃったりするんですが。 |
周防 | でもね、O.J.シンプソンはそもそも、 検察の有罪立証がひどかったんです。 |
糸井 | あ、そうなんですか。 |
周防 | えっとですね、とても参考になる本があって、 四宮啓さんという弁護士の方が書かれた 『O.J.シンプソンはなぜ無罪になったか』 という本、 陪審員制というものの理解を助けてくれる、 いい本です。 四宮さんは端的に、 「無罪は金で買えます」って言うんですが、 それはどういうことかというと、 アメリカでは、お金を払わないと まともな弁護士が雇えないんですよ。 だから貧しい人たちの裁判には冤罪が多いんです。 |
糸井 | そうなんですか。 |
周防 | きちんと弁護さえしてくれれば 無罪になる事件がいっぱいあるんです。 でも、お金のない人たちは まともな弁護士を雇えないから 有罪になっている。 金があったら彼らは無罪になるから、 そういう意味で「無罪は金で買える」んです。 悪いやつが大枚はたいて 優秀な弁護士いっぱい雇えば 無罪が買えるんだよという話ではないです。 そういう誤解がちょっとあることと、 それに加えてO.J.シンプソンの事件は、 人種問題にすり替えられてますが、 そうではなくて、実際の検察官の 有罪立証が、失敗してるんです。 |
糸井 | ひどかった? |
周防 | はい。これはほんとうに ひどいことをやっているんですね。 ところが民事では、 O.J.シンプソンは負けた。 簡単に言うと、刑事裁判は100%有罪、 つまり、柔道で言えば 検察が一本勝ちできなければ無罪ですが、 民事には判定勝ちがある。 |
糸井 | つまり検察の大ミスというところが 突かれたわけだ。 |
周防 | 大ミスですね。 アメリカの場合は陪審員制で 検察官控訴がありませんから、 一審で無罪になったら確定。 だから彼は無罪なんです。 |
糸井 | なるほど。そうか、それが聞けてよかった。 でも、「金で買える」が 誤解されて伝わる背景が、 やっぱりあるような気もするんですよ。 ルールという道具を 上手に使いこなす悪い人、という 知恵者グループみたいなものが 世の中の上澄みにいるでしょう。 犯罪すれすれのところを行こうとして、 捕まってしまった人もいます。 |
周防 | ええ。 |
糸井 | そういう人たちの天下になることは いやだなって気持ちが みんなの中には、あります。 つまり、悪くて頭のいいやつの 言うとおりになっちゃうのはいやだ、 という庶民感情が、 どこかのところで 「うー、裁け!」と、 リンチを望んでいるのかもしれません。 |
周防 | ありますね。 |
糸井 | なんだかね、そういった 二層構造になってるような気がするんですよ。 |
周防 | うん、うん。 |
糸井 | 優秀な弁護士っていうのと 尊敬できるすばらしい弁護士っていうのとは また違うでしょうし、 ややこしいですね、そのへんは。 |
周防 | これだけいろんなルールがあるとね。 (つづきます!) |
2007-02-19-MON |