周防 | でも、それは法律だけの世界ではなくて、 サッカーだって 例えばオフサイドというルールを作ったおかげで、 今度はオフサイドトラップなんて、 あえて相手を犯罪者に仕立て上げる作戦が 出てきちゃったりして。 それズルくないか?って とりあえず思いますよね。 |
糸井 | 思います、思います。 |
周防 | 「これはしちゃいけないことです」と、 みんなしないでいるのに、 あえてさせる(笑)。 そうやって自分たちを有利にする作戦がある。 |
糸井 | 大の男が試合中に「イテテテ」つって ヨッチヨッチひっくり返るじゃないですか。 あれも、その芝居はもしや‥‥? って、思っちゃう。 |
周防 | はい(笑)。 |
糸井 | スポーツの中にそういう要素が混じりこむのは、 「だからいいんだ」という気持ちもあるんですよ。 「演劇とスポーツは根っこは同じだな、 おもしろいな」 という、怪しさの部分について、 とても魅力はあるんだけどね。 不思議、不思議ですよね。 |
周防 | スポーツでも、 いろんなズルをするやつがいるから、 ズルできないようなルールを作ってきた歴史がある。 でも、そのルールを使って 新たなズルの作戦になっていくんです。 |
糸井 | うん。 それは‥‥いいんですか? |
周防 | ねぇ。 |
糸井 | なんだか、シンプルなもののほうが 見たい気はちょっとしませんか? |
周防 | するんですけど、 どうも人間というのは、なかなかで、 相手よりどうやったら上に行けるかを 考えるのが好きなんですね、きっと。 |
糸井 | ずっと、そのことの競争ですね。 あのね、魚を飼ったことがある人って、 必ず水の問題で悩むんですよ。 |
周防 | 水の? |
糸井 | そう。 大がかりな水槽を買って魚を飼うと、 必ず水の問題で悩むんです。 魚が弱ったり いろんなことが起こってくると、 それぞれの問題にみごとに対処する薬や機械が いっぱい売ってるから、それを買うんです。 こういうカビが出たらこうなんですよ、とかね? その薬を正しい分量、入れる。 そうすると、バランスが壊れるんですよ。 1個の薬を使うと必ず‥‥ |
周防 | どんどん使う? |
糸井 | そう。どこまでも行くんですよ。 取り返しのつかないところに行くまで、 あっという間ですね。 水槽の作り方というのは、 「何もしない」対「ちょっとでも使う」です。 ちょっとでも使うというのはつまり、 |
周防 | うん、全部使うことですね。 |
糸井 | そう。 全部使っちゃったときには、 魚は全部死んでるでしょうね。 ルールが増えることは、そのくらい、 生きものに対する影響が大きい。 そういう経験をすると、 「それがあったからって 問題がないんだったら、 そのまま見逃してしまえよ」 という発想になります。 自然治癒力への期待が ひじょうに、その、高まります。 |
周防 | ‥‥それに直接結びつくかわかんないですけど、 ゴルフってスポーツを支えるのは、 マナーですよね。 ルールとマナー‥‥ ほんとうは、僕たち、 マナーでいけると最高なんですよ。 |
糸井 | うん。マナーが、しかも 魅力だったりしたら最高ですよね。 |
周防 | うん。でもね、 残念ながらマナーでは やっていけない。 |
糸井 | いけないですね。 |
周防 | ルールは薬かもしれないです。 マナーで、つまり自然治癒力で、 生きていければいいのに。 だって、「人殺しちゃいけない」を ルールにしなきゃいけないんですよ。 |
糸井 | それ、おかしいですよね。 |
周防 | マナーで殺さないでよ、って 思うんだけど、 「人殺しちゃいけない」を ルールにするわけです。 だから、殺しちゃったことに 故意があったのか過失なのか ほんとうに事故なのか、 故意がなければ死刑にはできない、みたいに なっていくでしょ? いろいろ細分化していくわけです。 |
糸井 | そう、そうです。 それはドストエフスキーの小説の中にもある 「そんなことしません」という、 そのセリフに勝るものはないと思うんだけど、 そういうことでやりたいです。 そういうことでやりたいって気持ちは 当然あるんですけど、 ルールとマナーの利害が相反した場合には、 ルール側のほうに説得力はあるんです。 |
周防 | ルール側ですね。 法廷で、そんな倫理観やマナーなんて、ねぇ。 裁判で大事なのは 具体的な証拠しかないんですよ、本来は。 |
糸井 | 一方で、法律というのは、 守ってくれるもの、という側面があると思うんです。 ルール一般に対して 僕は嫌いだって言い張ってますけど、 そう言い張れる自分というのは いろんな裁量をその都度下せるから言えるわけです。 人がただこの厳しい世間で生きていくために 法律は盾の役割もずいぶんしてる。 そこに対する尊敬はあります。 (つづきます!) |
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2007-02-20-TUE |