7ルールを使う恐ろしさ。


周防 でも、それは法律だけの世界ではなくて、
サッカーだって
例えばオフサイドというルールを作ったおかげで、
今度はオフサイドトラップなんて、
あえて相手を犯罪者に仕立て上げる作戦が
出てきちゃったりして。
それズルくないか?って
とりあえず思いますよね。
糸井 思います、思います。
周防 「これはしちゃいけないことです」と、
みんなしないでいるのに、
あえてさせる(笑)。
そうやって自分たちを有利にする作戦がある。
糸井 大の男が試合中に「イテテテ」つって
ヨッチヨッチひっくり返るじゃないですか。
あれも、その芝居はもしや‥‥?
って、思っちゃう。
周防 はい(笑)。
糸井 スポーツの中にそういう要素が混じりこむのは、
「だからいいんだ」という気持ちもあるんですよ。
「演劇とスポーツは根っこは同じだな、
 おもしろいな」
という、怪しさの部分について、
とても魅力はあるんだけどね。
不思議、不思議ですよね。
周防 スポーツでも、
いろんなズルをするやつがいるから、
ズルできないようなルールを作ってきた歴史がある。
でも、そのルールを使って
新たなズルの作戦になっていくんです。
糸井 うん。
それは‥‥いいんですか?
周防 ねぇ。
糸井 なんだか、シンプルなもののほうが
見たい気はちょっとしませんか?
周防 するんですけど、
どうも人間というのは、なかなかで、
相手よりどうやったら上に行けるかを
考えるのが好きなんですね、きっと。
糸井 ずっと、そのことの競争ですね。
あのね、魚を飼ったことがある人って、
必ず水の問題で悩むんですよ。
周防 水の?
糸井 そう。
大がかりな水槽を買って魚を飼うと、
必ず水の問題で悩むんです。
魚が弱ったり
いろんなことが起こってくると、
それぞれの問題にみごとに対処する薬や機械が
いっぱい売ってるから、それを買うんです。
こういうカビが出たらこうなんですよ、とかね?
その薬を正しい分量、入れる。
そうすると、バランスが壊れるんですよ。
1個の薬を使うと必ず‥‥
周防 どんどん使う?
糸井 そう。どこまでも行くんですよ。
取り返しのつかないところに行くまで、
あっという間ですね。
水槽の作り方というのは、
「何もしない」対「ちょっとでも使う」です。
ちょっとでも使うというのはつまり、
周防 うん、全部使うことですね。
糸井 そう。
全部使っちゃったときには、
魚は全部死んでるでしょうね。
ルールが増えることは、そのくらい、
生きものに対する影響が大きい。
そういう経験をすると、
「それがあったからって
 問題がないんだったら、
 そのまま見逃してしまえよ」
という発想になります。
自然治癒力への期待が
ひじょうに、その、高まります。
周防 ‥‥それに直接結びつくかわかんないですけど、
ゴルフってスポーツを支えるのは、
マナーですよね。
ルールとマナー‥‥
ほんとうは、僕たち、
マナーでいけると最高なんですよ。
糸井 うん。マナーが、しかも
魅力だったりしたら最高ですよね。
周防 うん。でもね、
残念ながらマナーでは
やっていけない。
糸井 いけないですね。
周防 ルールは薬かもしれないです。
マナーで、つまり自然治癒力で、
生きていければいいのに。
だって、「人殺しちゃいけない」を
ルールにしなきゃいけないんですよ。
糸井 それ、おかしいですよね。
周防 マナーで殺さないでよ、って
思うんだけど、
「人殺しちゃいけない」を
ルールにするわけです。
だから、殺しちゃったことに
故意があったのか過失なのか
ほんとうに事故なのか、
故意がなければ死刑にはできない、みたいに
なっていくでしょ?
いろいろ細分化していくわけです。
糸井 そう、そうです。
それはドストエフスキーの小説の中にもある
「そんなことしません」という、
そのセリフに勝るものはないと思うんだけど、
そういうことでやりたいです。
そういうことでやりたいって気持ちは
当然あるんですけど、
ルールとマナーの利害が相反した場合には、
ルール側のほうに説得力はあるんです。
周防 ルール側ですね。
法廷で、そんな倫理観やマナーなんて、ねぇ。

裁判で大事なのは
具体的な証拠しかないんですよ、本来は。
糸井 一方で、法律というのは、
守ってくれるもの、という側面があると思うんです。
ルール一般に対して
僕は嫌いだって言い張ってますけど、
そう言い張れる自分というのは
いろんな裁量をその都度下せるから言えるわけです。
人がただこの厳しい世間で生きていくために
法律は盾の役割もずいぶんしてる。
そこに対する尊敬はあります。



(つづきます!)






『それでもボクはやってない』のマスコミプレス用
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10名様にプレゼントいたします。
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2月19日午前11:00までにpostman@1101.comまで
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        (2007.2.28)


2007-02-20-TUE


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