糸井 |
つまり高橋さんは、2011年に写真を洗い、
2012年には展覧会で各地を回って
貯金をなくして(笑)‥‥。
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高橋 |
はい(笑)。
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糸井 |
2013年につくっていたのが
ここにある『津波、写真、それから』という、
写真と日記が混じったような本。
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高橋 |
展示であちこち回っていると、
いろんな人と自然につながってくというか
交流することになるんですね。
ニューヨークの展示を見てくれた人から
半年後にメールで
「ハリケーンのサンディが来て
写真がけっこう流されちゃったので
洗いかたを教えてくれ」とか。
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糸井 |
へー‥‥。
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高橋 |
で、「俺らは、こんなふうにやったよ」
みたいなことを描いて返信したら、
問い合わせてきた彼女たちも、
写真を集めて、洗って、
失くした人が探しに来られるような場所を
つくったみたいで。
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糸井 |
ノウハウが、海外で役に立ったわけだ。
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高橋 |
そうなんです。
こんなふうにしましたよという
方法や方向性みたいなものを残しておけたら
誰かの役に立つこともあるんだなって
そのとき、思ったんです。
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糸井 |
それで本にしようと。
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高橋 |
インドネシアの大学の先生からも
「こんど東京に行くから、話できないか?」
みたいなメールが来て、
お茶しながらカタコトの英語で話しました。
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糸井 |
うん。
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高橋 |
その人、
「写真を洗うだなんて、お前らえらいね」
みたいなことを言うんです。
「たしかに役に立ったわ」とか答えつつ
「でも、そっちだって
スマトラの地震で津波があったでしょ?
そんとき写真どうしたの?」
って聞いたら
たしかに、いろんなNGOとかNPOとか
たくさんヘルプはあったんだけど
「写真を洗うなんて、
そんなのは、聞いたことないよ」と。
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糸井 |
そうなんだ。
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高橋 |
その意味で「日本人はすげえ」みたいに
言ってたんですけど、
「それは、あったほうがいいものだ」って
みんな強く言ってました。
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糸井 |
あったほうがいい?
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高橋 |
そう、あったほうがいい。
つまり
「写真っていうのは、あったほうがいい」
というのは、みんなが言うんです。
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糸井 |
ああ‥‥。
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高橋 |
本当に、どこの国の人と話していても
そのことは共通してました。
「日本人って、ほんと細かいことやるよね」
っていうのもセットですけど(笑)。
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糸井 |
いや、いま「そうかあ」って思ったんだけど
高橋さん自身が写真家じゃないですか。
だから「写真って、あったほうがいい」って
みんなが言うような仕事をしたのは、
たまたまじゃなく、必然だったんだなあって。
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高橋 |
あ‥‥そうかもしれないです。
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糸井 |
高橋さんの話を聞いてると
「なんか、流れでこうなったんですけどね」
みたいに言うけど、
「写真って、あったほうがいい」
と思ってたから、写真家になったわけで。
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高橋 |
たしかに。
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糸井 |
で、あったほうがいいって思っていたから、
「お焚き上げ」も嫌だったんだ。
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高橋 |
あー‥‥そのとおりです(笑)。
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糸井 |
どうしても捨てられないなあってところに
写真の凄味があるわけだからさ。
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高橋 |
だって嫌ですもん、捨てちゃうの(笑)。
だから、そういう意味でも、
ぼくらがやったことを本にして残しておけばと
思ったんですけど、
やっぱり‥‥批判もいただいたりして。
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糸井 |
あ、そう?
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高橋 |
まあ、他人の写真を展示して本にしてますから、
「売名だろう」とかって‥‥。
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糸井 |
それはね、言う人は言うからしょうがないし、
高橋さんが
ちょっとづつ「言われない人」になるんだよ。
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高橋 |
言われない人?
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糸井 |
つまりさ、このあいだ「ほぼ日」から
谷川俊太郎さんが詩を書いて
松本大洋さんが絵を描いた
『かないくん』って絵本が出たんだけど。
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高橋 |
はい、見ました。
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糸井 |
あれ、谷川さんだってさ、
かつては、そう言われたんだよ、きっと。
詩で食っていけること自体が
批判された時代だって、あるんだから。
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高橋 |
そうなんですか。
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糸井 |
小林秀雄だって何やかやと言われて
「俺は、女房子どもを
食わせていかなきゃならんから」って
宣言してましたよ。
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高橋 |
そうか、そういうものなんですね。
ただ、そうやって批判する人の気持ちも
わからなくはないんです。
展覧会を見に来てもらえばわかりますし、
本を読んでもらってもいいんだけど、
こんなことをしている高橋宗正さんです、
みたいな記事だけだと
被災者を利用してるように見えるかもって‥‥。
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糸井 |
そこに気がついてるだけでいいことですよ。
そんなのは、ぜんぜん。
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高橋 |
そうですかね。
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糸井 |
そうだよ。
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高橋 |
そう言ってもらえると、なんだか。
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糸井 |
ええと、じゃあどうですか最近は?
貯金のほうは(笑)。 |
高橋 |
えっと‥‥ええとですね(笑)、
また、こんど展覧会でスペインにも行くし‥‥
みるみる減りつつありますね。
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糸井 |
でも生きてはいられる‥‥んですよね。
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高橋 |
生きてはいられます。
スヌーピー展のオフィシャルカメラマンを
やらせてもらったりとかして。
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糸井 |
よかったです(笑)これからも見てますね。
今日は、おもしろかったです。
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高橋 |
ほんとですか?
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糸井 |
うん。また、会いましょう。
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高橋 |
ありがとうございます!
<終わります> |