糸井 |
でも、話を聞いてると、
みんな楽しそうにやってるのがいいよね。
目を三角にしてやるんじゃなくてさ。
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高橋 |
そうですねえ、それは。
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糸井 |
いまぼくが、熱心におもしろがってる
ミグノンって
動物愛護の団体があるんだけど、
そこには、取材が来たときに対応する、
「小難しいこと言わない、
ただ、かわいい子」がいるんです。
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高橋 |
へえ。
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糸井 |
「よくわかんないんですけど」って言いつつも
「何でやってるんですか?」
と聞かれたら
「何だか楽しくって」って答えるんです。
ようするに
「何だかわからないけど
楽しくて来てるボランティアがいる団体」
って、いいじゃないですか。
「ワタクシ、この活動ひとすじ30年で」
とか
「動物とはなんぞや」とか言わなくたって、
もっと「伝わる」と思うんですよ。
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高橋 |
うん、そうでしょうね。
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糸井 |
「何だかわかんないけど
楽しいから、通って来てるんです」って
言われたら
「あ、わたしも行ってみようかなあ」って
スッと思えるじゃないですか。
たぶん、そういう「軽さ」みたいなことが
大事だったりするんですよ。
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高橋 |
たしかに、ぼくらの活動を伝える場合でも
なんとなく「正しそう」に
見えちゃうような、
カタい文章は、やめうようと言ってました。
論文じゃないんだからっつって。
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糸井 |
そこに「論文」を出しても、意味ないよね。
難しくうんぬん言ってるヒマがあったら、
手を動かす必要があるし、
「よかったら寄ってってよ」って声かけるほうが
よっぽど前に進むと思う。
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高橋 |
「誰でもできるから、来てよ」って。
地元の友だちも
「みんな、楽しくやってくれたらいいな」って
言っていますね。
だって、しんどい顔してやられるよりも、ねえ。
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糸井 |
それは嫌だよね、地元の人だって。
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高橋 |
ぼくも、震災後に
はじめて、東北へ入ったときに知り合った
あの酔っ払いのおじさんたちが
受け入れてくれなかったら、
部屋に閉じ篭って、ニュース番組を見て
「うーん」とか唸ってただけだと思います。
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糸井 |
震災の年の11月に
気仙沼の事務所ができあがったとき、
まわりの人たちに
「餅まき、やってくださいよ」って言われたの。
でもそれって、どうなんだろうと。
つまり、手伝いに来たよって言ってるやつらが
自分とこの事務所ができたからって、
まわりで「大工さんが足りない」ってときにね。
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高橋 |
ええ、ええ。
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糸井 |
でも、地元の人たちに
「やんなきゃだめ」と言われてやったんです。
そしたら、
だんなさんを亡くした酒屋の奥さんなんかも
「餅まき、良かったです」って
一升瓶を、持ってきてくれたりしたんです。
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高橋 |
うれしいですね。
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糸井 |
こっちでよけいな心配してドキドキして
何にもしないより、
あるていど思うようにやって、
怒られたら怒られたで、その時だって思って。
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高橋 |
もし自分だったら、もし友だちだったら
どう思うだろうってことかなあ。
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糸井 |
そうそう、そうだよね。
でも、高橋さんが他で稼いでなかったら
この活動自体が
成り立たなかったってことがよくわかるのは、
単純に「往復する」だけで
何万円もかかるじゃないですか、新幹線代で。
寝袋にくるまって野宿するんでもなければ、
宿代だって必要になってくるわけだし。
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高橋 |
ええ。
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糸井 |
逆に言えば、
ただ「行ったり来たりする」だけのことに
これから先も、
もっともっと大きな意味が出てくると思う。
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高橋 |
そう思います。
ぼくらも、写真の返却作業だって
まだまだ続けていかなきゃならないし‥‥。
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糸井 |
返却できるんだ、ちゃんと?
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高橋 |
できます。
写真が75万枚くらいあるんですが
いま、34万枚くらいは返却できているんです。
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糸井 |
いや、それは素晴らしい。
でもそれ、具体的にはどうやってるの?
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高橋 |
写真は、どのエリアで拾ったかというので
分類して保管されているので、
それぞれのエリアの仮設住宅に持っていって
「写真、探しません?」
みたいなことを、ずっとやってますね。
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糸井 |
「洗浄・複写」の続きが「返却」なんだ。
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高橋 |
ぼく自身は、返却の作業には
そこまで携わってはいないんですけど、
来週も行ってきます。
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糸井 |
誰がやってるんですか?
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高橋 |
洗浄部隊の隊長をやっていた「溝口くん」という
とても頭のいい元京大生が
「思い出サルベージ」という団体の代表になって、
引き継いでやってくれてます。
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糸井 |
東北に住んでる人?
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高橋 |
もともとは京都です。
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糸井 |
お金はどうしてんの?
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高橋 |
いまは、
赤い羽根の財団から助成金をいただいて、それで。
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糸井 |
へぇー‥‥。
でも「金しか出せないけど」って人がいないと
成り立たない活動ってたくさんあるから、
そういう人にも、もっと元気になってほしいね。
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高橋 |
そうなんですよね。
で、現場では、
溝口くんみたいな若くて気力体力のある若者が
明るく朗らかにがんばる、と。
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糸井 |
うん、うん。
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高橋 |
‥‥若いやつら、本当にがんばるんですよ。
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糸井 |
それは、いいねえ。
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高橋 |
見てると、明るい気持ちになってきますよ。
大学生だったりとか
ぼくよりも、10歳くらい若いやつらが
がんばってやってる姿を見ると。
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糸井 |
うれしいね。
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高橋 |
復興とか、先は短くはないかもしれないけど、
やつらの姿を見てると、明るいなあって。 |
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<つづきます> |