糸井 |
洗浄と複写が終わっては見たものの‥‥。
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高橋 |
もう、地元の友だちとかもできてたんで、
「このあと、どうしよっか?」
みたいなことを、ずっと話してたんです。
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糸井 |
よそでは「お焚き上げ」みたいなことも
やっていたけれども。
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高橋 |
ぼくらは、それは嫌だなって思っていて、
つまり「取っときたかった」んです。
そのためには、「やっぱり展示かな」と。
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糸井 |
うん。
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高橋 |
そうすることの目的やメリット、リスク、
まあ、いろいろ考えたんですけど、
やはり「展示」をして
みんなに見てもらうことで募金を集めよう、
ということにしたんです。
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糸井 |
場所はどうしたんですか、展示の?
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高橋 |
この一連の活動は、結局
『津波、写真、それから』って本になるんですけど、
その本を出してくれた
東京の出版社の「赤々舎」が
当時、ギャラリーを持ってたので、そこで。
相談したら「使っていいよ」っていうので、
無料で、ありがたく。
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糸井 |
よかったねえ。
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高橋 |
あの写真洗浄、手伝ってくれた友だちが
「ちゃんと自分の目で見て、
手で触って、作業させてもらってよかった」
って、みんな言うんです。
ちょっと言葉にしづらいんですけど、
何かが「伝わってる」のが、わかったんです。
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糸井 |
いや、そう思う。
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高橋 |
だから「みんなに見てもらう」こと自体には
絶対に意味があると思えたんです。
でも、たとえば東京で展示して、
東京の人たちに感動しましたって言われても
山元町にとっては
どういうプラスの意味があるんだろう‥‥と。
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糸井 |
だから、お金を集めようと思った?
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高橋 |
そう。ただし、ぼくらに集められる額なんて
たかが知れてると思いました。
何か町の足しになるとか、そんなのは難しい。
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糸井 |
うん。でしょうね。
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高橋 |
そのときに、友だちが言い出したんですが、
山元町の仮設住宅にも
「町内会費」みたいなものが、あるんです。
回覧板を刷るコピー代とか、
みんなで作業したときの、お茶菓子代とか。
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糸井 |
なるほど。そこの足しにしようと。
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高橋 |
そう。
当時、自治会長さんみたいな人のところに
そういう負担が
少しずつ、積み重なっていたんですね。
数万円とかなんですけど、
そこに役立てりゃいいんじゃないかって。
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糸井 |
わかりやすいですね。
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高橋 |
それくらいだったら
ぼくらの集めるような額でも、いけそうで。
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糸井 |
いいねえ、その使い道は。
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高橋 |
展示会場に募金箱を置いときつつ、
1000円のポスターを3種類つくりました。
1000円のうちの3割は
印刷代や運営費などの経費に使うんだけど
残りの7割を寄付に回したんです。
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糸井 |
うん。
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高橋 |
そしたら結局、100万円ちかく集まって。
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糸井 |
おお、すごいね。
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高橋 |
当時、各地の写真洗浄プロジェクトについて
ディスカバリーチャンネルが
ドキュメンタリー番組をつくっていたので
「乗っからしてもらおうぜ!」って
みんなで盛り上がって(笑)、
英語できるやつに企画書を翻訳してもらって
結果、アメリカでも展示ができました。
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糸井 |
海外へ行ったのは、そういう経緯だったんだ。
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高橋 |
はい。で、ロサンゼルスで展示をしていたら
ロサンゼルス・タイムズとか
ニューヨーカー、ニューヨーク・ポストとか
あっちのメディアが、
好意的に取り上げてくれたんですよ。
だんだん話が広まっていって、
各地を転々と展示して回ることになりました。
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糸井 |
同じ写真が、ぐるぐる回ったの?
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高橋 |
いえ、なにしろ量が多かったものですから
別のセットを作れたんです。
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糸井 |
具体的には、どこへ行ったんですか?
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高橋 |
ロサンゼルス、ニューヨーク、
メルボルン、北海道、サンフランシスコ、
もう一回東京、ローマ‥‥。
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糸井 |
それ、いちいち行ってたの?
えらいことだねえ、それ。
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高橋 |
はい。
2011年いっぱいで写真を洗って複写して、
2012年は、そんな感じで行ったりきたり。
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糸井 |
お金はどうしてたんですか?
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高橋 |
いや、そこなんですけど(笑)、
2011年は、平日はカメラマンとしてはたらいて
週末は酒も飲まずに
写真を洗ってばかりいたら、
あんまり、お金を使わなかったんですよ。
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糸井 |
ああ、なるほど。
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高橋 |
そしたら、
気づかないうちに、お金がわりと貯まってて。
なんか、2011年の暮れあたりには
「あれれ? 貯金が150万ぐらいあるけど?」
「どうした、俺?」みたいな(笑)。
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糸井 |
おお(笑)。
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高橋 |
展示の企画が持ち上がったときには
「まあ、100万円なくなるまではがんばろう」
と思って、やりはじめました。
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糸井 |
高橋さん、カメラマンとしては
もう、ふつうに「食えて」たんだと思うけど、
そこで一回「新人」に戻ってますね。
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高橋 |
そうそう、そうなんです!
勉強になったことが、たくさんありました。
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糸井 |
いや、それ、長い目で見たらすごく貴重だよ。
食えてから、もう一回「新人」やるって。
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高橋 |
ほんと、そう思います。
でも、1年間ぐるっと展示をやった結果、
2013年の年明けぐらいには、
残高が「2万円」くらいになってました。
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糸井 |
‥‥ちゃんと減ったんだ(笑)。
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高橋 |
そこで「大丈夫か、俺?」と‥‥(笑)。
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糸井 |
いや、たまってるよ、「心」には。
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高橋 |
そうですかね?
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糸井 |
うん、絶対、たまってると思う。
<つづきます> |