タモリ先生の午後 2008。 「スロー人」のすすめ。


第7回 100年越えてますから。
タモリ オレなんかより、
もっともっとすごいのが、さんまですよ。
糸井 でも、言ってること、だいたい同じですけど。
タモリ いや、低速の回遊魚でしょう、オレは。
だって、
止まると死ぬんですから、あの男の場合。

糸井 たしかに、あのテンションを維持したまま
生きていきたいっていう人は
あんまりいないかもしれませんね(笑)。
タモリ 起きてるあいだ、ずっーとあれですから。
糸井 そうみたいですね。
タモリ 家にも何度か行ったことあるけど、
ゆっくりしてる姿なんて、見たことないし。
糸井 その対談のとき、
ちょっと観察してたら、すごいんですよ。

タバコを指にはさんで、
ライターに
ずーっと火をつけたままの状態でしゃべってて、
で、熱くなってきたから火を消して、
タバコをいったん置いて、
その間、さんまさん自体はずっとしゃべってて、
で、置いたタバコをもう一度くわえて、
ライターに火をつけて、熱くなったら消して‥‥。

タモリ (笑)
糸井 すごいですよね(笑)。
タモリ 寝る3秒前まで喋ってます。
糸井 タモリさん、ちょっと近くないですか?
タモリ まぁ、近いのかもしれないけど、
さすがに、あそこまではね‥‥。
糸井 オレは違う、と。
タモリ うん、違う、違う。

泳ぎまわってはいるんだけど、スピードが違う。
遅いんですよね、オレの場合は。
糸井 湾内回遊とか?
タモリ そうそう、湾内限定(笑)。

ちょっと止まってみたりするけど、
すぐに飽きてどこかに行っちゃう。
糸井 飽きっぽいんですか?
タモリ 飽きっぽいですね。
糸井 でも、タモリさんの番組って、
長寿ってことで
ギネスにも認定されてましたよね、たしか。
タモリ ええ、ギネス更新中です。

すべての番組の放送年数を足してみたら、
1OO年、越えてますから。

糸井 ははぁ‥‥。
ちなみに『タモリ倶楽部』は何年目ですか?
タモリ えーと、『笑っていいとも!』より
1ヶ月はやいだけですから、両方とも26年目か。

『ミュージックステーション』が
短いって言っても、20年は越えてますしね。
糸井 それは、越えるわ‥‥100年。
タモリ 100年も生きてないのに。
糸井 必ずしも、こういう番組をやりたいって
スタートしたわけではないものだって、あるでしょう?
タモリ ええ、そうなんですよ。なんなんでしょうね。
糸井 流れに身をまかせる回遊魚(笑)。
タモリ そう、そう、流れに身を任せる。

横澤(彪・元フジテレビ)さんが
オレのことを
いろいろ書いてる文章のなかで、
「これほど、芸人として
 我のないやつに会ったことない」と。

これは、自分でも、そうかなあと思いました。
糸井 我、ないんですか?
タモリ 年に1〜2本くらい
ドラマに出てた時期があったんですよ。

で、楽屋で台本をめくりながら、
自分の出番のところを
どんどん削ってったっていうんですよ、オレ。
糸井 ここは要らないだろうと。
タモリ それを見て、驚いたって言ってました。

だって、ふつうの芸人だったら
どれだけ出番を増やせるかを考えるのに、
オレは、その逆をやってたらしい。



<つづきます>


2008-01-03-THU