新春スペシャル大放談!  タモリ先生の午後 2009 「惜しい」の発見。



糸井 スポーツ新聞をですね。
タモリ ええ。
糸井 テレビ欄の側からめくっていって
2枚めの下のあたりに。
タモリ はい。
糸井 何というかこう‥‥エッチなんだけど
エッチでもないみたいな、
「安全なスケベ広告」があります。
タモリ ありますね。
糸井 ちょっとおしりの大きめな
「30歳〜40歳ぐらいの奥さん」が
下着姿で、
こっちを振り向いてる‥‥みたいな。
タモリ よく知ってます。
糸井 あれを「いい」と思うのは、
なかなか、むつかしいと思うんですが‥‥。
タモリ いいですよオレは。
糸井 どこかで「いい」と思ってる自分もいて。
タモリ オレはいい。
糸井 ‥‥あれも「惜しい」じゃないですか。

で、その「惜しい」の美学というのは、
写真を撮ってる人、
広告記事を書いている人‥‥
そこに関わる
関係者全員に共有されているわけです。
タモリ もちろんですよね。
糸井 みんなが「このあたりだよね」って
わかってつくってるんですよ。
タモリ そうです。

「惜しい」の中身については、
何も言わなくていいんです。わかってるから。
糸井 このアングル「惜しい」すかね? ‥‥などとは。
タモリ そんなこといちいち確認しません。
われわれのあいだでは。
糸井 われわれ?
タモリ いや‥‥つまりですよ、現場では、
「このポーズは惜しい」
「このブラは惜しくない」
などと、
全員がすぐに判断できるわけです。
糸井 現場では(笑)。
タモリ ま‥‥惜しいのなかでも、
「かなり惜しい部類」に入りますけどね。
あの手の広告は。
糸井 その「品」を注文しようとまで思いますか。
タモリさんは。
タモリ ええ、それがほんとに「惜しい」のなら。
糸井 ‥‥。
タモリ 注文するだけじゃ飽き足らずに、
そのうち、
自分でつくりはじめるかもしれませんね。
糸井 タモリさんみずから。
タモリ オレの追求する「惜しいエロ」を。
糸井 その、いわば「数値化できない美学」を
わかち合えてるってことが、
ぼくは、すばらしいなと思うんですよね。
タモリ そうですね。
糸井 あの‥‥ゲイ雑誌の編集部につとめてる
ゲイじゃない編集者が
完全にわかってるんですよ、これがまた。
タモリ いいとか、悪いとかについて?
糸井 つまり「数値化できない美学」ついて。
タモリ へぇー‥‥。
糸井 あちら特有のポーズがあるんです。
タモリ ああ‥‥そうですか(笑)。
糸井 ちょっといま、やってみましょうか。

(乗組員に向かい)
‥‥写真、撮ってもいいからな。

(こちらを振り返りながら)
こういうポーズが、わりと多い。
タモリ ああ‥‥そうですか(笑)。
糸井 特別に実演させていただきました。
タモリ 貴重なものを、どうも(笑)。
糸井 で、あちらの人どうしが会ったときの
あいさつのしかたが、また‥‥。
タモリ ああ、特徴的ですよね。
糸井 両腕を下のほうにぐーっと伸ばして、
てのひらを‥‥。
タモリ 振る。
糸井 そう!
タモリ (両腕を下のほうにぐーっと伸ばし、
 てのひらを小刻みに振りながら)
ごーぶーさーたーあっ!
糸井 そう!
タモリ みんな、こうやってますよね。
KABA.ちゃんはじめ。
糸井 あの‥‥それじゃあタモリ先生、
ちょっとまた別のことで。
タモリ ええ、どうぞ。
糸井 一般に「男好きのする」という言葉が
あると思うのですが。
タモリ ありますね。
糸井 その言葉にあらわされる女性が
まわりの女性から嫌われがちになるのは、
どうしてなんでしょう。
タモリ 女性というのは、
自分の彼氏が取られそうだと思うと、
本能的にキバをむくんです。
糸井 なるほど‥‥。でも、その一方で
「男好きのする自分」というジャンルを
狙いにいってる女性って
明らかに、いっぱいいるじゃないですか。
タモリ います、います。
糸井 「わたしは、そこで生きるんだ」と
思ってる女性、いっぱいいますよね。
タモリ 彼女たちは、本能的に、
自分は「このジャンルでいけるだろう」と
思ってるんでしょうね。
糸井 ここなら勝負できると。
タモリ 3歳ぐらいから狙ってますよね。
糸井 え、幼稚園の年少ぐらいで?
タモリ ええ、はやい人で。
糸井 「はやい人で」(笑)。

<つづきます>

2009-01-05-MON



(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN